2022-08-30

犯罪に加担する友人に何もしなかった話

親友だったアイちゃん

  

アイちゃんは幼馴染で、小中まで一緒だったが高校で別々になった。しかし私とアイちゃん関係はより濃くなり、高校になっても頻繁に遊んでいた。

  

双子コーデしてプリクラ撮りに行ったり、カラオケオールしたり、フェス行ったり、深夜の公園で話したり。

からアイちゃんと遊ぶなと言われたが、思春期真っ只中の私は全力で反抗してアイちゃんと遊んでいた。

  

高2のある日、地元商業施設ができることになり、そのオープニングスタッフとしてアイちゃん面接を受けに行った。

  

ちなみにアイちゃんは高1で高校を退学していた。

私には「めんどくさかったから」と言っていたが、同じ高校に行った知人からちょっとしたいじめっていうか、友達出来ずに孤立していた」と聞いた。

  

私はアイちゃんが言いたがらないならそれでいいと思い、何も聞かなかった。

  

そして私たちは晴れて同じ店でバイトするようになり、研修期間からなぜか社員に注目されていた。

土日祝は信じられないくらい忙しい職場だったけど、私とアイちゃんの2トップなら任せられる、と私たちバイトリーダー的な立ち位置で、バリバリ働いていた。

  

その頃のアイちゃんは、私のおかげで、褒めてもらえる!私とならどんな場所でもがんばれる!私ちゃんはすごいよ!さすがだよ!

と、私を異様に褒めてくれることが多かった。

  

今考えると、私のいない高校生活では馴染めなかったけど、バイト先で社員スタッフから頼りにされて、アイちゃんのことを認めてくれる場所に戸惑っていたのかもしれない。

  

アイちゃん自身が頑張っていたのは間違いないのに、アイちゃんの中では「私のおかげ」に変換されていたのだろう。

そうしてるうちに、私に頼るアイちゃん形成されていき、いつしか親友なのに、子弟関係っぽい形態に変化していった。

  

そして、18歳の私はその頼られる優越感を気持ちよく感じていた。

  

そんな中、私は大学進学し19歳でバイトは辞めた。

ほぼ同時期にアイちゃんバイトを辞めてキャバ嬢に転生した。

  

私はキャンパスライフを楽しみ始め、アイちゃんも夜の世界に飛び立ち、生活リズムが違うのでやや疎遠になっていたが、それでも月1くらいでは遊んでいた。

  

そんなキャバ嬢アイちゃんから彼氏ができたと報告されたのが20歳の頃。

相手は年下の大学ホストだった。

  

私はカモられてるのかと危惧したが、話を聞くと、アイちゃんではなくホストの方がアイちゃんの客だった。

営業の一環でアイちゃんの店に訪れた彼がアイちゃんに一目ぼれし、猛烈にアタックされたとのこと。なので、アイちゃんはそのホストの店に行ったことはないし、1円も貢いではいなかった。

  

少しは心配したが、年下ホスト大学世間では高学歴と分類される大学だったのもあり、アイちゃん幸せそうだったので暖かく見守ることにした。

  

しかしその2か月後、次は「妊娠たから、結婚しようと思う」と相談された。

相手は、ホスト大学も辞めて働くと言っており、アイちゃんも産む決意は固まっていた。

また、未婚で産む選択肢は考えておらず、それはアイちゃん母子家庭で、お父さんの存在を恋しく思っていたからとのことだった。

  

そして、妊娠発覚後にアイちゃんキャバを辞め、元ホストは、本当に大学ホストも辞めて、昼職に就職した。

  

しかし、高学歴と言われる大学中退してのデキ婚に両親は怒り、結局勘当され、アイちゃん実家で暮らすマスオさんになっていた。

  

それにしても年下のホストは、アイちゃん子どもを愛してくれる、ちゃんとした人だったのだ。

  

そう思っていた。

  

ある日、アイちゃんと暇電していたとき何気なくホストがどんな会社就職したのかと聞くと、

会社名は分からない

WEBサイト運営している会社?みたいなやつ

ホスト時代の先輩の紹介で

とのことだった。

  

その時は、ITベンチャーぽいところなのかなという認識だった。

  

それから数か月し、アイちゃんも働き始めたという話を聞いたので、妊娠中なのに大丈夫なの?と心配すると

つわりは落ち着いたし、楽な仕事でしんどかったら帰ってもいいかめっちゃ楽!」

というので思わず、どんな仕事だよと突っ込むと、夫(元ホスト)の職場アルバイトに行っているという事だった。

  

業務内容は「ひたすらメールを返す仕事」らしく、つまりは「出会い系サクラ」だった。

  

という事は、アイちゃんの夫(元ホスト)は、出会い系詐欺サイト運営する会社社員なのだ

  

いやいやいや、やばくないか

  

アイちゃんは特段そのことに問題意識は持っておらず(というか一緒に働いている)、さらには夫(元ホスト)は既に幹部になっているらしく、稼ぎもちょっとからめっちゃ上がった、と嬉しそうに報告した。

  

いやいやいや、やばくないか

  

私は真面目な人間ではないが、その時に「すごいじゃんー!よかったね!」とは言えない正義感を持っていた。

  

そして「どうにかしないと」という謎の問題を背負い込んだ。

  

私「いや、その会社やばくない?」まずはジャブから

アイちゃん「そうかな?出会い系ってほぼそうみたいだよ~」

  

「話聞く限り、詐欺案件だと思う。」

  

私は、夫(元ホスト)の会社はまともではないこと、辞めさせた方がいい、何なら私が直接話してあげるから、とアイちゃんを説得にかかった。

アイちゃんは「え、、どうしよう」と不安になっていった。

私は「事前に伝えると微妙から、夫(元ホスト)が次家にいる日教えて、行くから」と伝え話を終えた。

  

その時の私の心境は、

犯罪絶対ダメ

アイちゃんが巻き込まれている!

③なんとかしないと!

の3本立てだった。

  

そして、来たる夫(元ホスト)との決戦のため、情報収集をと思い、悩み相談掲示板に片っ端から投稿した。

  

────────────────────────

友人を助けたい!

友人の夫がサクラサイト出会い系)で働いていて、友人もアルバイトに通っている。

友人は妊娠中で数か月後には出産予定。

本人たちはそのことに問題意識をもっておらず、何とか説得したい。

いい方法はありますか?

────────────────────────

  

こんな内容だったと思う。

サクラサイト詐欺にあたることや被害の内容は既にググって把握していた。

  

\みんな、オラに力を貸してくれ!/

  

そんな気分だった。

  

数日たち、掲示板でついたレスはあまりなく、さらにそのほとんどの内容は私が希望していたものでは全くなかった。

  

・説得してどうするんですか?質問者気持ちよくなるだけですか?

収入源を絶てと、まもなく出産する夫婦を説得するんですか?

・人の家庭のことに責任持てないのに、説得するだけって、、

  

・それ、お節介って言うんですよ。

  

もっと柔和な文体だったと思うが、予想外の反応に面食らった。

私の気持ちにみな賛同してくれると思っていた。一緒に解決策を考えてくれると思っていた。

そもそも私のこの感覚が「おせっかい自己満?」根本から問題を考えなくてはならない。

  

回答を見た時は「犯罪を許容するのか」と回答者反社会的倫理観のやつらばかりなのかと憤った。

  

しかし、

説得してどうするの?会社を辞めると収入がなくなるけど、責任とれるの?

という回答を私は持ち合わせていない、何で私が責任を取る話になるのだ、そんなのアイちゃん夫婦でなんとかしろよ、が本音ではあった。

  

が。現実問題会社を辞めさせるよう説得して後は知らないけど、って私の目的アイちゃん問題に巻き込まれいるから救いたい、であって、夫が会社を辞めて解決したとしても、すぐに「金銭面の問題」にぶちあたることを予想できていなかった。

私は社会にも出ていない世間知らずの大学生でしかなかったのだ。

  

アイちゃん高校中退妊娠中。

・夫は、大学中退20歳

アイちゃん母子家庭で、夫の両親には頼れない。

  

この状況で違法方法だけども、今は稼いだお金で安定して生活をしている。

サクラサイト被害者の救済、サイト撲滅という正義感であっても、直接の被害者でもなくただの大学生の私にできることなんて何もない。

  

結果、私は何もしない方がいい

  

それが私の出した答えだった。

  

アイちゃんを助けたいと言いながら、結局は自分の周りの人たちの中に犯罪に関わっている人がいる、という状況をどうにかしたかっただけなのかもしれない。

さらに、その頃はまだサクラ詐欺黎明期くらいだったので、私の調べた限りでは刑事告訴されたり従業員刑事罰が下されるような判例もなかった。

  

21歳でようやく、自分の正しさを押し付けることを人はお節介と呼ぶのだと理解した。

  

タイトル回収をすると「悪いことをしたら注意してあげるのが本当の友達」という風潮があるが、自分の正しさを押し付けるだけになっていないだろうかといつも思う。

当時の私は犯罪に加担する友人に何もしないのが正解だと判断した。

  

後で聞いた話だと、会社場所を数か月単位移転したり、社名を変えたりしている(なのでアイちゃんは夫の会社名を把握していなかった)ということだったので、夫も自分会社がまともな会社でないことは理解しての判断だったのだろう。

  

最後に「何もしなかった」は違うかもしれない。

  

私は、自分の友人が犯罪に加担しているという状況にストレスを感じていた。

なので、「アイちゃん距離を置く」という行動をとった。

  

友人が悪いことをしたら注意するのではなく、距離を置くのがいいのかもしれない。

その結果、私には友達がいないけども。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん