はてなキーワード: 権力チェックとは
今から12年前の2007年2月、「消えた年金」問題というものがあって、30代以上の人間であれば覚えているのではないか。
当時の首相は第一次安倍政権であり、今回の統計不正問題をやらかした厚労省の傘下の社会保険庁の不祥事であった。
あの時も今回の統計不正問題と同じように、野党が国会で自民党や社保庁を厳しく追及していた。
何となく世の中に「自民党にお灸をすえる」という雰囲気が出来上がり、その年の7月参院選で自民党は惨敗して安倍首相は辞任した。
自民党にお灸をすえたところまでは行ったけど、その後の日本の政治がどうなっただろうか。
2年後の2009年9月には政権交代が起こって、史上最悪の民主党政権3年3ヵ月が始まってしまった。
当時のトラウマを覚えている人であれば、今自民党・安倍政権を叩いても事態は更に悪化してしまうのではないかという「恐怖」がある。
統計不正問題は民主主義の根幹を揺るがすという批判があるが、おそらくその通りなのだろう。
しかし「立憲民主党や共産党に政権をとらせてみよう、ダメだったらまた自民党に戻そう」という冒険をする気力は、私を含めて今の国民には無い。
そもそもなぜ野党が統計不正問題で与党や厚労省を叩いている意味がよくわからない。
もし日本が完全な独裁国家であれば、政治の失敗の責任は全て自民党一党にある。
しかし民主主義国家では野党やマスコミの権力チェック機能があるので、裏を返せば野党やマスコミにも政治の失敗の責任があるともいえる。
実際に「野党がだらしない」とか「マスコミが偏っている」などと、民主主義国家では権力分散を基にした健全な批判も行われている。
統計学的には、有権者=国民の半分の6200万人の偏差値は50以下ということになるのだ(投票権のない子供を含むので大雑把に)。
偏差値は正規分布の曲線を描くので、有権者の半分は50以下、半分は50以上である。
偏差値50以下の連中が、投票権という形で政治参加すること、しかもそれが有権者全体の半数を占めていること自体異常ではないか。
毎日通勤電車で東京に本社機能のある大企業のオフィスに働きに行く人間と、休日になるとワンボックスカーで地元のイオンに乗りつける人間が、同じ一票を持っている。
私たちはこれを当たり前だと思っているけど、冷静になると、やっぱりおかしい。
よく政治家が収賄やセクハラで不祥事を起こすと、その政治家自身も当然批判されるけど、「そんな政治家に投票した有権者が悪い」という批判も同じくらい上がる。
私自身も、2005年8月の郵政選挙では自民党に投票し、2009年9月の総選挙では民主党に投票した人間なので、あまり他人のことは言えないのだけど。
有権者が政治家を選んで政治を進めるというのは幻想で、実際に政治・行政を進めるのは官僚であり、政治家の権力チェックを行うのはメディアであり、国民は関係ないのかもしれないんだけど。
クジラックスのマンガの件で過去の例に漏れず「表現の自由」信者がネットであふれかえっていて本当にうんざりしてる。
ああいった事件の後でなおも迷わずに「表現の自由を守れ」と声高々に主張する方々に聞きたいのだが、君たちはその発言が「表現の自由を守るためには、多少の公益や子供の安全を損なう結果になっても仕方ないと思ってます」と言っていると同義だとちゃんと理解しているのだろうか?別にコレについては批判するわけじゃない。権利を守るというのは時としてそういうモノだ。たとえば凶悪事件の犯罪者の人権を過度に守ろうとするとその犯罪被害者の人権を侵害することが多々あるし、音楽や書籍などコンテンツの著作者の権利や利益を過度に守ると、今度は消費者が不利益をこうむることなど多々ある。すべての権利を平等に尊重するのは不可能で、片方の権利を過度に守ろうとするとそれに相対する別の権利を侵害することになるからだ。だからそういう意識があって「表現の自由」を訴えているならいいのだが、どうもネットの書き込みの大半からはこういう葛藤など一切感じられず、純粋に「表現の自由を守ることが絶対正義」と信じて疑わないような連中が多すぎるんじゃないか?と思ってしまう。
たしかに「表現の自由」というのは近代社会の中では守られるべき価値観の上位にあがるものである。なぜなら「表現の自由」は往々にして「権力の監視」「権力からの自由」に密接に関係してくるから、国家の権力の暴走を防ぐには必要不可欠である。ただ「表現の自由」の名の下になんでも表現していいというわけではない。たとえば欧米では「表現の自由」のなかに児童ポルノやレイシズムを煽るような表現には厳しい制限がかかる。児童ポルノコンテンツや欧米人には子供にしか見えないアニメ顔のエロコンテンツは所有しただけで逮捕される国も珍しくないし、ヒトラーの「我が闘争」は発禁扱い。ヘイトスピーチデモも表現の自由には認められない。少なくてもクジラックスのマンガをこれらの国で自主出版でもしたら確実に逮捕事案である。これを「表現の自由なんていって欺瞞じゃないか!」と批判するのはお門違い。だって「表現の自由」は絶対的ではないんだよ。
ここまで書くと「それじゃ殺人やレイプ描写がある小説、ドラマ、映画も規制しろよ」などと反論してくる連中がでてくるだろう。まったく馬鹿げた反論だ。一口に「殺人シーン」といっても、その作品内の背景とかストーリー上の設定などで意味合いがまったく変わってくるからだ。たとえば同じ惨殺シーンでも「羊たちの沈黙」のように主要登場人物の異常性・神秘性を演出するために使われたり、戦争映画のように人間が虫けらのように殺される描写で戦争の凄惨さ、残酷さを演出したり、または復讐ジャンル映画では家族を殺された主人公がどれほど強い動機で相手に復讐していくか演出するなど様々である。小説、ドラマ、映画で殺人やレイプシーンが許容されているのは、人間のコアな部分を演出するには、時には人間の暗黒面をちゃんと見せることも重要だからである。それにこういった作品でもどのように陰惨に殺害されたか、激しくレイプされたかなんて長い尺をつかって表現するコンテンツなんてごく一部だ。(「食人族」とか)
もちろんその殺人シーンやレイプシーンが「ストーリー上それは必要不可欠なのか」「ただの過剰演出ではないか」という疑問は常につきないものだが、今回のマンガの件ではその議論以前の問題である。概要を読むだけであれは「未成年の女の子を大人が騙してレイプする行為を楽しむコンテンツ」以外に何者でもないことが明白だからだ。だからもしあの作品を他の実写映画でたとえるなら女性や女の子をもつ親御さんにとっては「ストーリーなど特になく、哀れな被害者が凶悪殺人魔に追い詰められジワジワと惨殺されていく映像を延々と見せられるだけ」な内容と同義である。君たちが「表現の自由」の名の下に守ろうとしているコンテンツとはそういったモノなのだよ。
ただああいった作品が実際に性犯罪を誘発しているか?という疑問はさすがにわからないとしかいえない。もちろんゼロとはいえないだろうが、それ以上の事は調査する人のバイアスや価値観によってどちらにも転ぶ内容だと思う。これについては結論はでないだろうから議論するのは無駄だと思う。ただああいった作品が自主出版とはいえその気になれば個人で入手できる状態だという事実の一つ一つが日本の性風俗文化を少しずつ形成しているのは間違いない。
児童ポルノや児童買春について絶対的に厳しい価値観の欧米(かといって厳しくすればするほどその禁忌を破ろうとする人間がでてくるのも悩ましい)にとって、先進国でありながら日本の性風俗のゆるさはやはり衝撃的だろう。風俗禁止法というものがありながらソープみたいなサービスが当たり前のように存在し、AKBみたいな大半が子供にしか見ないような女性グループが下着がもろに見えるダンスをしながらテレビで踊っている。これらから彼らが感じることは「法律上では児童ポルノって駄目だけどさ、本音では若い子のほうがいいっしょ?20代30代のおばさんより10代の女の子のほうが興奮するよね」という空気ではないだろうか?欧米の知識人が日本の性風俗文化を軽蔑するのも無理はないと思う。
さてここまで長々と書いても、大半の「表現の自由」信者には俺はただの欺瞞者で権力者側の規制賛成論者にしか見えないのだろう。別にそれはどうでもいい。ただ最後に忠告するのは、これからも「表現の自由」で何やっても許されるのが当然だと思っていたら、最後にしっぺ返しを食らうのは君らだということだ。今回のような事件は単発であって欲しいと願ってはいるが、もし何かの間違いで1年の間に何回も立て続けのように起こったら、それこそ日本の世論の大半は一気に「あんな児童レイプを助長するようなマンガを許すな!国はちゃんと規制しろ!」に傾くだろう。そのときにネット住民や一部の知識人が馬鹿の一つ覚えにように「表現の自由の重要さ」だけを訴えたところで大半の世論からは「ただのロリコンの似非リベラル」のレッテルしか貼られないだろう。そもそも児童ポルノ関係では日本よりはるかに厳しい欧米のほうがちゃんとメディアによる権力チェックができてるんだから、「エロコンテンツの規制を認めたら権力の暴走を招く」論はまったく理屈が通ってないのである。
もし俺の予想するような最悪なシナリオがおきて日本の性風俗に関する規制が厳しくなったとき、おそらく君らは日本人の不寛容さ、無教養を嘆くんだろう。違うから。君たちの救いがたい傲慢さが原因だよ。もし今後も欧米よりもゆるい日本独自の性風俗や表現を守っていきたいと思うなら、むしろ君たちこそが行き過ぎた表現にはちゃんと警告をだして業界内で自浄作用が起こるように注意しなきゃならない。「こりゃ論理的にやばいだろ」ってコンテンツ見つけたら乙武張りに「超えちゃいけないライン考えろ?」って冷や水ぶっかける努力を続けないとならないんだよ。
ま、たぶん無理だろうけどね。