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2020-06-14

anond:20200614185834

さて、後半やるか…。なんかもう嫌になってきちゃうな。ここから先、自閉症はおろか発達障害さえ出てこない代わりに、「男らしさ」がマジックワードとしてメキメキ頭角を現してきます。「男らしさ」の指標論文によって様々であり、その点にrei氏は意識的かどうかは怪しいところですが、少なくとも段落ごとに「男らしさ」の内容が変転していきます。では読みましょう。

そして当然であるがチー牛顔はモテない。

知らんがな。次。

テストステロン値の高い男性は顔の横幅が広くなる傾向にあり、テストステロン値の低い男性は顔の横幅が狭くなる傾向にある。そしてチー牛の元となったイラスト男性も面長であるが、先進国女性全般に「面長の男性らしくない男性を嫌い、横幅の広い男性らしい男性を好む」傾向が確認されている。例えば、米国若い男女を対象としてスピードデート研究を行ったところ、男性の顔つきの男らしさが短期的な関係に対する女性の関心の差異の34%を説明していることが示された。

https://ink.library.smu.edu.sg/cgi/viewcontent.cgi?article=2727&context=soss_research (論文d)

スピードデートっていうのはいわゆる婚活パーティ。この論文dでは、顔つきの男らしさを、テストステロンに影響されると考えられている顔の縦横比で表しているみたいです。多分婚活パーティでの女性の反応と男性の顔の縦横比の関係を調べたんでしょう。で、rei氏は"先進国女性全般に「面長の男性らしくない男性を嫌い、横幅の広い男性らしい男性を好む」傾向が確認されている。”と書いてますが、この主張の出典はどこですか?論文dの先行研究に触れてる部分にもDiscussionにも、国の発展度合いは女性の嗜好と関連性がある、といった記述は見受けられません。関連性が本当はあるのだとしても、米国内の研究だけを例に挙げて、"先進国女性全般に"と言い切るのは流石に通らないです。もっとも、顔の縦の長さや横の長さが女性にとってなんらかの関心を引く要素の一つであることは間違いなさそうです。これはさすがに誰か気づいて指摘してるだろうと思うんですけど、この論文dを出したのは米国大学ではなくてシンガポール大学なんですよね。ざっと見た感じ、アメリカで行われたともアメリカ人を対象にしたとも書かれてません。次の段落に移ります

また顔つきの男らしさは童貞卒業の早さを予測する因子であることが示唆されている。言うまでもない事であるがチー牛顔は遅い。

https://psycnet.apa.org/record/1994-44767-001 (論文e)

論文eの題は"Dominant looking male teenagers copulate earlier.”、和訳すると支配的な見た目の10代の男子はより早く性交する、ですね。このリンククリックしてもらうとわかるんですけど、Abstract(要約)しか書いてません。本文はどこでしょうか?試しにCitation引用)って書いてる下のあたりのリンクを踏んでみましょうか。でもやっぱりAbstractしかありません。実は、論文ってタダで読める訳じゃないんです。検索して出てきた論文を読みたいと思っても、お金を払って電子ジャーナル学術誌を購読しないと読めないことが多々あります大学生や研究者の場合基本的大学が代わりに費用負担しているので割り当てられたメールアドレスを使えば無料で読めます。私も大学アカウントサインインして読みました。大学生や研究者でなくても大学図書館に行ってコピーすれば印刷代はかかりますが、可能でしょう。しかしこのご時世、ほとんどの大学図書館は解放されていませんでした。以上を踏まえると、rei氏は電子ジャーナル個人購読していると考えられます。なんと素晴らしい心がけ!一般企業勤務年収700万の会社員であるrei氏が支払う購読料で出版不況に喘ぐ学術業界はきっと大助かりのことでしょう。みなさんにこの感動を伝えたいあまり、すっかり前置きが長くなってしまいました。では論文eの内容を概説します。

アメリカの7thGrade、8thGradeの男の子日本で言えば中一中二の男子に対して、男子の性行為経験の有無、身体男性成熟度、リーダーっぽい支配的印象の程度、イケメンな印象の程度の四要素間の相関を統計的処理にかけて調べました。その結果、身体男性成熟が進んでいて、支配的な印象を与える、イケメン男子ほど性的活動が活発な傾向があると判明したそうです。

論文eは捉えがたい「男らしさ」を多面的定義づけ、そして「男らしい顔つき」の男子はより早く性交渉する機会があると分析したわけで、なかなか面白いなあと思ったりするんですが、それをrei氏は"顔つきの男らしさは童貞卒業の早さを予測する因子であることが示唆されている”の一行で済ませてるんですよ。まとめ方が雑。情報取りこぼしすぎ。ちなみに論文eによると支配的な顔つきの男子イケメン男子眼鏡をかけていない傾向があったそうですが、この記述から眼鏡をかけているチー牛顔の男子性的経験に乏しい、とまで言えるのかどうかは正直よくわからないです。次の段落に移ります

しかしながら、チー牛顔がここまで忌避されるのは「豊かな先進国から」という事情もある。たまにインターネットでは「所詮この世は弱肉強食強ければ生き弱ければ死ぬ」みたいな事を言う人間がいるが、この世は弱肉強食ではなく適者生存であり、また社会が豊かで平和からこそ、そのように言ってられる面がある。人間戦争災害時など本当に弱肉強食環境下では、所謂「群れ」になる。そして野生動物の群れを見れば分かる通り、群れ内では弱肉強食摂理は働かず、互助相互監視役割分担といった形で群れ内は「平和」な形になる。これは考えれば当然の事であり、本当に厳しい環境下において同じ種で争っている場合ではない。要するに個人主義は社会平和である事を前提とした価値観なのだ

色々トンチンカンなこと書いてるrei氏のこのnoteで、最も意味不明な箇所がここです。何を言いたいのかマジで把握できなくて、読むだけで一時間くらい費やした。ここまで可読性が低いのはいくつか理由が考えられて、まず接続詞おかしい。段落頭、「しかしながら」は逆接の接続詞のはずですね。前の二段落rei氏が言いたかったであろう主張は「女性は男らしい顔を好む」のはず。しかしながら、この段落では突然、「平和社会状況であることが人々の行動に与える影響」の話が出現します。新規情報です。新キャラです。「しかしながら」の前後で予想を裏切るような意味内容の反転は生じていません。もう一つ指摘するとすれば、対立軸不明確な言葉遣いである点。「先進国ときたら「発展途上国」、「弱肉強食ときたら「共存共栄」、「個人主義」ときたら「全体主義」もしくは利己主義の逆という意味で「利他主義」。こうした対義語リードされてあっち行ったりこっち行ったりしながら議論を進めていくのが一般的なリズムな訳です。現代文の定石です。ではもう一度読んでみましょう。

……………。何が書いてあるか、何を主張したいかわかりましたか?私にはわかりません。とりあえず”この世は弱肉強食ではなく適者生存"の部分に着目してみましょう。なにやら進化論じみた雰囲気しますね。弱肉強食適者生存進化論については、科学史哲学史関連の書籍出版している吉川浩満氏のインタビュー記事がとてもわかりやすかったので、ちょっと長いですが紹介させていただきます

https://synodos.jp/science/17264

この記事によると、弱肉強食世界認識モデルに組み込んでしまうのは素人あるあるらしいです。rei氏も度々モテ/非モテ論の文脈位置付けられる文章を書いていましたね。インタビュー記事は続いて「適者生存概念歴史的経緯へとトピックが移ります吉川氏によると、ダーウィニズム進化目的生物序列を認めない立場なのだそうです。そして、絶滅を免れて生き残った生物種のことを適した生物、すなわち適者であると定めましょう、というダーウィニズムの考え方を端的に表すスローガンこそが、「適者生存」なのです。生存する者を適者とみなす適者生存」とは、ダーウィニズムにおける議論の出発点にすぎなかったんですね。これをひっくり返して飲み込んでしまうと、お前は適者でないか生存できないんだ、俺は劣っているか勝負競争に負けるんだ、となってしまます。これはよくない、本当によくないですよ。優生思想ど真ん中、ナチスドイツの大虐殺。そんでもってこれがrei氏の手にかかると非モテから結婚できないんだという同語反復に陥っちゃうわけです。

わかりましたかrei氏は語の意味をまともに調べることすらせず、雰囲気だけで文章を練り練りしてるんですよ。キリがないんで次行きますね。

それは異性選好においても同様であり、34か国の異性愛女性4483人のサンプルを使用して、社会的、生態学的、経済的変数女性の顔の男らしさの好みをどのように予測するかをテストするかを調べた研究では、国の健康指数人間開発指数が高い国でより強くなると報告された。男らしい顔に対する女性の好みは、子孫の生存率が高く、経済状況がより好ましい条件の下でより強いことを示している。

https://www.nature.com/articles/s41598-019-39350-8論文f)

アッ!前段落最後の部分、"要するに個人主義は社会平和である事を前提とした価値観なのだ。”の意味がわかりましたよ。社会危機的状況に陥っているとき生存を目指して仲良く男女協力して生殖に励むけれど、現代平和で裕福な先進国ニッポンにおいて女性利己的に振る舞うために男性的魅力に乏しいチー牛顔の人々は選ばれないのだ、ってことですね?世が世なら俺たちには女があてがわれるはずだった、でも時代がそうさせなかった、とrei氏は言いたかったんですね?うぅ、頭がクラクラしてきた……。いや、確かに人間動物一種だけどさ、何もそこまで野山の猿やジャングルゴリラと同一視するのはやりすぎでないか?なんだよ、"男らしさの好みをどのように予測するかをテストするかを調べた研究”って。日本語になってないじゃん……。

この段落については、他の方からも指摘がありました。

https://note.com/hiroko_yayane/n/n7970f9279b51

 6/17追記リンク先が謎の理由消滅していましたが、新しく書いて頂いたみたいなので貼り直しました。

 

字数が厳しくなってきたので次の段落いきます

そして男らしい顔つきの男性攻撃性、不正行為自己中心的衝動性、欺瞞搾取的行動など「所詮この世は弱肉強食マインドを持つ傾向があることが示唆されている。要は豊かで自由で安定した先進国になるほど優しい男性モテなくなる傾向が存在するのだ。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4388848/  (論文g)

論文gでは、顔の縦横比と攻撃性の関係しか見てません。先進国の話もモテ/非モテの話もしてません。"要は"以下の部分は導けないと思います

それにnoteタイトルは「何故、我々は三色チーズ牛丼顔なのか?」でしたが、なぜか結論は「先進国ほど優しい男性モテなくなる」に着地しているんですね。

話がめちゃくちゃズレていってるんですよ。rei氏もそれに気づいてないんですよ。

でね、ようやく全部読み終わったと思うじゃないですか。まだ喋らせてください、まだあるんですよ。この記事本当にすごくて、本文の下にあるコメント欄を見てみましょう。

修正リンクこちらになります

https://www.nature.com/articles/s41598-017-09939-y#Sec17論文x)

ま〜た何をどう修正したのかよくわからん論文リンクが貼ってありますね。

私が読んだ時には既に修正されていたんですが、他の方のツイートによると、もともとrei氏は、コルチゾール値が高くなってテストステロン値が低下するから発達障害男性は「男らしくない」顔つきになるという論証の根拠として、結論真逆論文を引っ張り出していたみたいです。

https://twitter.com/reefedgeswim/status/1265592680915931136

この論文xは、タイトルの「ASD男児及び女児における顔面形態学的な超男性化傾向と症候学との関連」からわかる通り、一番最初に読んだ論文aの結論ASD男性の顔は両性具有で男らしくない」とは反対のことが書かれています時系列的には論文aの方が先で、論文xは後。そしてDiscussionの中で論文aと相反する結果について考察しています。その考察によれば、論文aの実験2の対象として選ばれたのは二十歳前後の男女であるのに対し、論文xの実験対象は三歳から十二歳の児童であることが重要な違いを生んだ可能性があるそうです。思春期の間に男性は血清中のテストステロン値が女性と比べて爆発的に増加します。この思春期におけるテストステロンがなんらかの働きをしたせいで相反する実験結果が出た可能性がある、というわけです。しかし、これまたややこしいことに、成人の顔の形に関して出生前テストステロンが与える影響の方が出生後のテストステロンが与える影響よりも大きいとする論文もあるそうで、研究者の間でもどちらがどうだと確定的な結論は出ていないっぽい。

文章誤リンクの件に話を戻しましょうか。可能性の話をしますが、数多くの論文渉猟しているrei氏のことですから、貼りたい論文と題が似ているのを間違えて貼っちゃったのかもしれませんね。訂正前の論文タイトルは"Hypermasculinised facial morphology in boys and girls with Autism Spectrum Disorder and its association with symptomatology”で、訂正後の論文は"Enhanced Cortisol Response to Stress in Children in Autism”です。Autismとin、二つも単語が重複してるじゃないですか!論文タイトルは全体の要旨を簡潔に書き表したものですから、その中の重要単語が二つも同じであれば、内容が近い論文だったような…と曖昧記憶が生成されてうっかり取り違えてしまうことがあってもおかしくないでしょう、とでも言うと思ったかちゃん論文読み込んでるやつがこんな凡ミスするわけねえだろ。だいたいさ、何が正しいのか誰もわからない研究フロントラインで色んな科学者が仮説を立てて検証してディスカッションしてるような事柄の、おそらくこうかもしれない、って部分を、論文からパーセント正しいんだとピックアップしてるのありえん不誠実でしょ。今後まだまだ検証余地があるって書いてあることを揺るぎない事実として取り上げちゃってるってこと、わかりますか?

reiさん、あんまり疑いたくないんですけど、本当に論文読んだんですか?

おまけ

rei氏の書く文章noteでもtweetでも、どういう意図なのか全くわからないけど、ほぼ全て漢数字が半角数字に置き換えられてるんですよね。でも恐ろしいことに、このチー牛顔を取り上げたnoteでは、3色チーズ牛丼顔と書いてないんです……。

追記

https://anond.hatelabo.jp/20200614190033

 
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