2022-07-20

バイト日記

 天気がいまいちなせいで昼間からとても眠かったので、眠気のせいでバイトで凡ミスして客からキレられたら嫌だなと思って、昼寝した。低気圧夕方っておかしな客ばかり(しかアラフィフ女性がとても多く、なんか怒りを爆発させるネタを探しに態々出かけて来てるんじゃないかなって感じだ。気に入らない事へキレる反射神経が光速に追い付いてる。)よく来るからなあ。つまんないミスで店じゅう響き渡る金切声で怒鳴られたくはない。

 と、昼寝をしたらすごく生々しい夢を見たのだが、あらすじを文章で表すと、地味に荒唐無稽っぽいだけのつまらない話になる。

 どういうストーリーだったのかというと、レジ仕様がまたマイナーチェンジされて、店員側のタッチパネルが常にインターネットに繋がっている状態になったというものレジ対応一回やるとタッチパネル広告の画面に切り替わり、5秒以上の短い広告動画を見なければいけないというタスクが発生するし、レジ対応最中にも広告ポップアップが画面に出て来て仕事邪魔をするのである

 なんだこの鬱陶しい広告本部の奴らは何を思ってこんな糞みたいなシステムにしたのだろう? と思いながらも21時まではトラブルがなかった。ところがだ。老人とチンピラみたいな若者の二人組がレジに来てアメリカンドッグ二本を注文してきた。それで私は、他に店内に客がいないからと言って横着をして……レジに注文を入力する前に商品を取って来て、それからレジを打とうとした。ところが、レジタッチパネルの「フライヤー」の所に金貸し屋の広告バナーかぶっていて、何をどうしてもフライヤー商品入力が出来ないのである。私は焦りながら試行錯誤をするのだが無理で、その最中客二人組が早くしろこの能無し! のろま! アメリカンドッグが冷めちゃうだろ!! と罵倒してくる。万策尽きたと思った私はオーナー電話で聞くしかないと思い、

申し訳ございません! 今、オーナー電話確認しますので、もうしばらくお待ちいただけますか?」

 と言ったが、客二人組はもういい!といってレジ横の電子タバコの立体広告を蹴飛ばして店を出ていった。

オーナーオーナー! 広告がぁー!」

 と唸っている自分の声で目覚めた時、まだ午前10時5分だった。寝ようと思ってから時間も経っていない。あまりにも鮮明な悪夢だったので、ぼんやりした頭でこんな場合はどう対応すればいいのかオーナーに問い合わせのLINEを送ろうと思い、真剣に文面を考えていたらその間に寝落ちしたのか、それもまた夢の一部だったのか、よくわからないが気づいたらまた夢の中にいた。

 出勤したら更衣室の場所が変わっていて、事務所の片隅ではなくトイレの横になっていた。で、新しい更衣室に入ったら、三つの従業員ロッカーがあった。その一つ一つが充分な大きさがあるし、女子のぶんだけで三つあるってことは、シフトに入った相手と共有しなくて済むし、広々と使えるなぁ、やったー! と思ってそこに荷物私服を入れた。

 そして、上がりの時間の十分前にトイレ掃除をしようとしたとき、交代のバイトが出勤してきたのだが、一人はDさんでもう一人は見たことがない人だった。新しい夜勤バイトだという。それで挨拶をしようとしたのを新しい夜勤バイトだという人が遮ってきて、

ロッカー荷物、さっさと退けてくれないですか? それ、正社員用なんですけど。っていうか、どうしてただのバイトの分際で個人ロッカーが与えられると思ったの? 笑けるんですけど。ほら、てめえのような下賎の者の荷物置き場はここだよ、クズ

 と、更衣室の隅っこ似合った廃材一歩手前の朽ちかけの下駄箱のような物を指指した。

 新しい夜勤バイトだという人が更衣室を出て行ってから、Dさんがこっちに来て言った。

ちゃん説明されないとわかんないよねー。私もさっきあの人に言われるまで、新しいロッカーやっほーって思ってました。なんかね、オーナー最近クトゥルフ神話にハマってて、それで占い師正社員を雇って大事しろって言われたらしくてー、すごい豪華な仮眠室作ったりとか、トイレ特別改装したりとかして。あ、ちなみにうちらバイトの専用トイレも作って貰えたんだけどこれです」

 Dさんは更衣室の片隅を指差した。そこには何の仕切りも目隠しもなく、蓋がなくてしかも小汚なくアンモニア臭様式便器がぽつんと設置されていた。ケツはお花紙で拭けと。そして、トイレの背後が窓ガラスの填まっていない窓があって、そこが何でか客用トイレの個室と繋がっている。

オーナーオーナー! 何でクトゥルフ神話なぞ……」

 と唸っている自分の声で目が覚めた。午前11時45分だった。

 今日仕事は暇な時期の日曜日くらい暇だった。Aさんは今日休みで、オーナーシフトに入っていた。暇過ぎてオーナーが話しかけて来るのだが、一々距離が近い。以前は2レジにいる私へオーナーが1レジからクソデカボイスで話しかけて来ることが多かったが、それは私がまだオーナーにあまり信用されていなかったからだ。最近は私が「はい」「わかりました」とキャバ嬢さしすせそくらいの事しかわず淡々仕事をしているせいで、信頼度が上がったようだ。オーナーは心の距離()がすぐ物理距離なっちゃう質らしい。それで老若男女関わらず、信用している従業員には至近距離で話しがち。

 20から新人高専五年生がトレーニングに入った。とっくにAさんが詰めこみ教育したことを、オーナーはまるで初めて教える時のように教え込んでいた。高専五年生は大人しく聴いて、言われた事を黙々とやっていた。

 だが高専五年生は、事務所バックヤードからフロアに出る時に「いらっしゃいませ」と言うという決まりを、何度オーナーに言われてもちゃんと出来なかった。あまり愛想の良い性格じゃあないのかな。でも話しかければ普通に応じてくるので、全くの無愛想でもない。ただフロアに出るというだけで「いらっしゃいませ」という意味がわからいから言いたくないのだろうか。しらんけど。

 まあでも、夜勤若い男子が無愛想でもほとんどのお客様全然気にしないから、いいんじゃないだろうか。私だて今までの半生のなかで、気さくで若い男性コンビニ店員なんかたった一人しかたことがないしなあ。

 当店に勤め始める前に私が働いていた同系列他店の夜勤だった、イケメン正社員氏がその唯一の気さくで若い男性コンビニ店員だった。彼は恐そうなおじさん達にとても好かれていたので、男でもそういう性格で損することはないのだろうなと思う。でも別に、無愛想だからといって無闇やたらと因縁をつけられる訳ではない。だが女の場合接客業なのに無愛想だとわりと致命的だ。時には暴力沙汰にまで発展してしまうので、元が根暗だろうとなんだろうと、仕事中だけは明るくちゃきちゃきしてる振りをしていた方がいいみたい。

 21時頃だったかに、久しぶりにセクシャリティ服装表現しまくるタイプゲイお客様が来店。いつものタバコを買っていかれた。左耳にだけピアスってことはタチなんだなこの人……あ、そういえばJUDY AND MARYの『そばかす』の歌詞に「思い切りあけた左耳のピアスには」ってあったけど、女子が左耳にピアスを開けるとなんか別の意味あったりするんかな……と思いつつ見送った。

 当店には行楽シーズンかに、なぜかよくセクシャリティ服装表現しまくるタイプゲイ人達が立ち寄るのだが、近くに何か会合でもあるorあったのか、時間微妙にずらして同じような服装の屈強な男達が続々とやってくるのだ。なんか、平成時代JK並みに同じ服装をするのが好きなんだな。

 もちろん、そういう服装じゃない系のゲイお客様もいて、パートナーと手を繋いで買い物をしているのを時々みかける。

 そういえば、去年の年末だったか……歌舞伎町から車で友達の家に行く途中に寄ったというゲイお客様が来店したことがあって、そのお客様はAさんを見て、

「あら、あんた良い男じゃない?」

 と一目で気に入ったらしかったが、でもお会計の時にAさんに対してなんか意地悪にネチネチと絡んできたらしくて、後でAさんが、

「気に入ったなら優しくしろよな!」

 と荒れていた。まあでも、せっかく顔を誉められたのに平常通りクソみたいに雑な接客をしたからだろっていう。

 そんなこともあった。

 仕事上がりに事務所の隅っこの更衣室で着替えている最中に、ふと壁に着いている姿見がロッカーの扉の内鏡と合わせ鏡になっているのに気づいた。まあでも普段からその二枚の鏡で自分の後頭部を映して後れ毛のほつれチェックなどをしてはいるのだが、うまく距離を取れば小さな内鏡にも腰の辺りまで写せるということには今日初めて気づいた。自分背中を、無理な体勢にならずに見たのって人生で初めてだが、私って本当に姿勢がいいんだな(この間、女子フリーターアルバイトさんに言われた)ってなんか感動した。

 

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