2021-01-20

不妊治療終わったら、私は鶯谷園に行く

そろそろ終わろうとしている。

足掛け4年、治療期間でいうと3年間。掛けた金額年収2年分。

不妊治療だ。

肝心の原因は省くが、私たち夫婦はクリニックに行ったら「自然妊娠は限りなく難しく、さまざまなレベル治療のうち、一番最後の一手『顕微授精』しか取れる手はありません」と言われた。

「顕微授精」とは、卵子を体内から取り出して、精子を1匹、針で注入して受精させる方法だ。まさしく試験管ベイビー。手術も伴い、1回1回の治療が高額なのが特徴だ。

医師説明素人計算によると、自然妊娠可能性は・・・

0.00002%~0.00007%くらいだ。

数学が苦手な私でもわかる。

これは天文学的数字だ。

ハッキリ言って、その事実だけで十分に打ちひしがれる。

私たちも打ちひしがれた。

でも、打ちひしがれてばかりでも年を取るばかり。今が、人生のうちで一番若い

私たちも、そして私たち卵子精子も、どんどん年を取る。治療に取り掛かるなら早い方がいいのだ。

いくつかの不妊専門クリニックを訪ね、とあるクリニックで早速、顕微授精のための治療を始めた。

流れは主に以下。

月経が来たら、受診治療計画を立てる。この時、ホルモン補充のための服薬や注射スケジュールも組む。女性ホルモンあの手この手ガンガン入れて、本来1か月に1個しか取れない卵子大量生産する。

②クリニックの方針によって、その都度予約しての院内注射自己注射を選ぶ。(高くても自己注の方が、圧倒的な気楽さが私はあった)

③再び指定の日に受診し、卵子を包む袋が増えているか、大きさなども測り、採卵手術の日を決める。予定通りの大きさ等になってない場合は、ここで何回か受診をして様子観察を繰り返す。(これが仕事のある身には辛い。そんなカンタンに予定を開けることなどできないのだ。)

④採卵手術の日が決まったら、指定時間病院に行き、手術を待つ。麻酔は使うクリニックと使わないクリニックがある。使い方さまざま。針を打つ箇所にに限定的に使うところもあるし、希望により静脈麻酔を使うところもある。

(手術自体10分程度だから、あまり強い麻酔を使って麻酔が覚めるまで院内で休憩しても、お互いあまりいいことがないのだ。)

毎回50万近く払って、私が得たもの

それは、ホルモン補充によるひどい副作用

孫悟空の頭のわっかを締め付けられるようなひどい頭痛吐き気。脂汗。気持ち悪さ。

布団から起き上がれない。仕事に支障が出る。

ただでさえ、当時はフルタイム勤務と土日の家業の手伝いで疲れがたまっていた。

そこに、追い打ちをかけて不妊治療

夫も夫で、こんなに副作用がひどいとは露ほどにも思わず、「土日は休ませてくれ」とお願いする私をずいぶん怠け者扱いした。

今は時が進み、治療期間の私を放っておいた方がいいと理解している。

また、ホルモン補充の注射自己注射に切り替わったので、夫が見てる前で注射儀式

注射の針を見せては、「これをお前にぶっ刺す!そしたら、具合悪くなって私みたいに布団から離れられなくなるんだからな!笑」と脅している。

ちょっとかわいそうだけど、仕方がない。

採卵手術は採卵手術で、手術中の気絶を経験

採卵手術では、ながーい針をあそこにぶっ刺して、子宮から卵巣まで貫通させる。で、針をぐりぐり動かして、卵子を吸い取る。人によって痛みの差があるらしいが、私は最初の手術で意識を失った。

採卵後には。ホルモン補充により卵巣が膨れ上がり、1週間絶対安静。1日3回ウエストを測り、腹水がたまらいか確認する。尿の出が悪くなったり腹囲が大きくなったら、即連絡。

注意書きが山ほど書かれた紙を持たされて、疲労困憊で帰宅する。

この症状は「OHSS(卵巣過剰刺激症候群)」といい、ホルモン補充療法の一番の副作用だ。

悪化すると、血液が濃くなり電解質の異常が起こったり血栓症を引き起こすこともある。

何十万もお金払って、そんなことになるなんて・・・

私は安静だけで、事なきを得たが、本当に色んな事が辛すぎる。

以上の症状は毎回ではなかったが、私を打ちひしがせるのに十分だった。

もはやフルタイム仕事を続けるのが無理だと思われた。

実際、無理だった。たびたび仕事に穴をあけ、仲間のフォローを受けながらも、フラフラだった。

でも、不思議なことに治療の回によっては、全然大丈夫なこともある。

から、元気な時は体調もいつもどおり。

「次もこのくらい大丈夫だといいな」と思うし、でもひどい時は目が当てられないくらい体調が悪くなるので、自分でも自分の体調が読めない。

すべての治療を事細かに周囲に説明するのも気が引けた。

説明すればするほど、自分の状況が克明になるし、人に言われるまでもなく「この治療を続けても、授かれるのか?」という難問にぶちあたる。

この問題真剣に向き合う気にはなれなかった。今もなれない。

距離に住む義両親に打ち明けたのは、今からほんの数か月前だ。毎週のように会っているけど、絶対言いたくなかった。

ガッカリさせるのも嫌だし、気を使われるのも嫌だ、不妊の原因を話すのも嫌だ、今月は治療だというのも嫌だ、詳しい治療の結果を話すのも嫌だ、全部が嫌だった。

それでも、打ち明けたのは「もう治療を終わらせよう」と思ったからだ。

0%と0.00002%~0.00007%の間には、毎回体調を奪われるような副作用と数十万円のお支払いが待っている。

考えれば考えるほどバカのようだし、実際バカにならないと、こんなこと続けられない。

そして、バカなりに色々考えながら、3年間治療に取り組んできた。

ドクター相談しながら、治療の順番を変えたり、今できる最善を尽くしてきた。

0%と0.00002%~0.00007%の間には特に何もないようにも思われたし、

今吸っている空気から二酸化炭素だけを素手で取り出すのと同じくらい、困難があるようにも思われた。

そして、今この文章を書いている。

この3年間、不妊治療について何か書こうなんて夢にも思わなかった。

でも、「書こう」と思ったのは「治療を一旦卒業する」ことを決めて、振り返ってみると、

「あぁ、なんだ。私ってすごい頑張ってきたなぁ」と思えたからだ。

私はこの3年間ものすごい困難と向き合い、あるのかないのか分からない0%と0.00002%~0.00007%の間を、行ったり来たりしながら、歩いてきた。

治療の結果は最初から最後まで奮わなかった。

私たちは、治療の度に1つか2つの受精卵を冷凍しながら、ここまで来た。

液体窒素冷凍された卵たちに、特に何の思い入れもないが、得られた結果といえば、

このいくつかの受精卵。

これを身体に戻せば妊娠できるのか?

ハッキリ言って「神様すら知らない」領域だ。

何回か体内に移植はしているが、結果がいつだって(ー)だ。

そして、妊娠したとして、それは継続するのか?

私の親族には、「妊娠悪阻」で長期入院歴を持つ者と、「子宮妊娠」を繰り返した者がいる。

私もそうなるかもしれないし、ならないかもしれない。でも、なんだか確率は高そうだ。

こういう分かりきった結果をや推論、不安を重ねながらも、1回1回の治療を着実に積み上げてきた。

そんな中で、言った本人は心配しているつもり。だけど、心をえぐられるような言葉にも出会った。

「顕微授精は止めた方がいいよ。身体ボロボロになるよ。」

ありがとう、うっせー死ね。もう既にホルモン補充で独特の太り方をしているよ。

妊娠したくて治療を頑張っているかも知れないけど、産んでからの方が大変だからね。」

ありがとう、うっせー死ねあんたんとこも不妊治療たからって、土足で踏み込んでくるな、ばーか

気持ちだけ受け取って、言葉ゴミ箱に捨てる。

しろ宇宙に放り投げる。二度と地球に帰ってこないように、大気圏燃え尽きて死ね

こういう黒い気持ちになることもある。

いつも気持ちベクトル自分になってしまう。

一人で打ちひしがれて、誰にも当たれない。相手も悪気0%だ。

無茶を承知治療継続しているから、涙が出てくることもある。

それが辛い3年間でもあった。

そろそろ最後の採卵手術を迎える。

このあと移植が控えているけれど、特に期待はしていない。

この3年間で得たもの

それは、副作用、期待薄な結果、それでも向き合い続けながら、生活構成する全てに中途半端になりながら生きてきた証。

こんなことを言うのは大げさだけど、今までやりたいことは努力ほとんど叶えてきた。

行きたかった高校大学海外留学、取りたかった資格、それを活かした仕事に就いてきたこと。

でも、この不妊治療ばっかりは、体調・仕事・休養・家業金銭などなど生活の根幹をなすことがら全てが思うようには進まず、身体メンタルボロボロになった。

倒せないものがあること。

努力が何の成果にも結びつかないこと。

それでも、それに向かって進んでいくこと。

そういう今までにない道のりを味あわせてもらった。

別にありがとうを言うつもりは毛頭ないが、この3年間はそれを味わい尽くした期間だった。

また今日も、ホルモン注射を打つ。

私は、注射より焼肉に行きたい。

同じホルモンなら、注射より食べる方が断然いい。

カルビハラミホルモンシマ・・・思い浮かべるだけで美味しそうだ。

さあ!全部終わったら、5年ぶりに鶯谷園行くぞ。

(断っておくが、鶯谷には鶯谷園だけのためにしか行ったことがない。)

そう決意すると、

あぁ、よだれが出てくる。

  • こんなことを言うのは大げさだけど、今までやりたいことは努力でほとんど叶えてきた。 行きたかった高校、大学、海外留学、取りたかった資格、それを活かした仕事に就いてきたこ...

    • それって 「ハードルを資本力で越える」 「挑戦を支持される(それに挑むべきでないと幼少時から刷り込まれていない)」 が当たり前の世界の話だよね 高校受験の選択を許される境遇...

    • セックスのハードルが超えれません🥺

  • お疲れ様でした。 とりあえずこれからの増田や旦那さんの心身が快復しますように。

  • 私も不妊治療してたけど、③が共働きには一番辛かったな。 頸管粘液が減るからって、弱めの薬飲むんだけど、育たない。来週も様子見ましょう。育ってない。もう強い薬飲みましょう...

  • まさに今日から不妊治療を始めるのですごくためになる。やっぱりそんなに辛いもんなのか。。具体的な辛さをちゃんと読んだのは初めて。そしてやっぱりお金もかなり、なんだなあ。...

    • お金は治療内容によるよ! 私は1年半(毎月じゃない)薬飲んでタイミング取って、全部で10〜15万くらいかな。 卵胞の成長具合見るたびに2000円はかかってた。 最初から領収書取っておいて...

  • そんなに体を痛めつけてまで実子が欲しいってどういうことなんだろ 0.0000なんちゃら%てほぼ無じゃん 子供が欲しいのが生物としての本能だからなんだろうか。でも生物的なことをいう...

    • 子供欲しいなんて本能での欲求を理解してもらうために言葉で説明するのって難しい気がする 私は子供なんていらないし結婚もいいやと思ってたのに35歳くらいからマジで子供欲しい気...

      • 肉体が衰えて死の影を意識すると猛烈に自分の子孫が残したくなるんだよな 残酷なのは「女性のみ」肉体の衰えと出産能力の衰えが同時に訪れること 男性は50代60代でも自分の子孫...

        • この前男がトシ取った時の子は100パー発達障害なるみたいな結果出てたじゃん

        • そこで「不公平」って単語が出てくることにめっちゃ違和感あるんだけど、 どう説明していいのかよくわからん。

      • 世の中って子供いらん人には理由をずけずけ聞くから子供いらん勢は理論武装するんだが、むしろ子供が欲しい人こそ理由があるべきなんじゃねーかと思うわ 理由もなく世の中に送り出...

        • 生物の大前提として子孫繁栄する本能があると思うんだけど、もし誰もが理論的に子供欲しい理由を説明できなければ子を持ってはいけないんだとしたら、人間は滅びるだけなんだよな...

  • 努力が何の成果にも結びつかないこと。 「すべて自分次第、自分を信じて、まずは努力」 ってみんな普通に言うよね 「私は(若かったから、体力があったから、健康に気を付けてた...

    • むだというか前職で作った500万円を マイナス500万円の仕事に変えてくれたお仕事はあった

      • しかも、相手は笑ってたからな。 あなたにとってはわらいごと。 私にとっては人生の終わり よのなかそんなもん

      • なんだそれ 詐欺かマルチか

  • 養子って選択肢は?

    • そろそろ実子にこだわる考えもアップデートすべきだよね

  • 鶯谷園いいよね!ワイも好き

  • 友達が複数不妊治療やってたりで聞くとほんとたいへんだよね ぼくは子供はいらない、と知り合いの子を引き取った

  • こんだけして生まれてきたのがてんすだったらって思うとね そりゃあ溺愛するわな 全部思い通りの人生なんてあってたまるかってな お疲れさまでした

  • こんなカスみたいな世界に生まれないで済んだ子供がいてよかった! 笑顔になれる増田だった あなたの体質は不幸な子供を救ったよ

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