はてなキーワード: 白いタイヤキとは
そろそろ死のうと思ってる。脱サラして上手く行くと当時は思っていた。家族に迷惑がかかるから店がヤバくなった時点で離婚。娘二人とは年に2回ほど会うのみ。死のうと思ってる。
かなり衝撃的な冒頭に目を引きます。一体なにがあったのでしょうか。
内容をまとめると、このような話でした。
結婚もして、4年間で貯蓄は1000万円を超え、全てが順風満帆でした。
そんな何一つ不自由のない暮らしの中で勝ち組の人生を送っていましたが、それと同時に地方での刺激のない毎日に飽き飽きもしていました。
独立する条件を以下の3つのことを条件に入れて探し出しました。
長期的に稼げるもの
そしてたい焼きという昔から馴染みのあるモノなので飽きられずに長く続けられる。
そんな白いたい焼きはこれから絶対に流行ると確信し、初期費用600万円をかけて脱サラをしました。
白いたい焼きとは
その名の通り白い色のたい焼きです。
材料にタピオカ粉などを使うことにより色が白くてモチモチした食感のたい焼きが出来ます。
さらに冷やして食べても美味しいので新しいスイーツとして大ブレイクしました。
1コ200円と、たい焼きにしてはちょっと高めの料金で売りに出しましたが、その珍しさとインパクトでたくさんの人が行列を作りました。
さらにテレビで紹介された翌日には3時間待ちの行列が出来るほどで、一日ではさばききれないほどの人気が出たんです。
そんな白いたい焼きは企業にも注目され、脱サラ組はもちろん、焼き鳥屋さんなどの飲食や屋台からも数々の企業や個人が参入してきました。
フランチャイズ本部側も間に合わないほどになり、やりたくても出来ない状態という考えられないような状態で、「白いたい焼き脱サラの会」というものまで出来ていたほどです。
また、地元でこれだけ流行ったんだから、都会に出したらもっとスゴいことになると、都内にも出店。全部で13店舗にまで増えました。
小さな店舗でも月に300万円近い売り上げがあり、手取りで年収5000万円。
さらに8店舗を増やす計画を進めて、このまま大成功の道を辿る。、、、はずでした。
ブームが去る
初めの頃は珍しさと話題性でたくさんの行列を作りましたが結局はたい焼きです。並んでまで食べるものではありません。
そして都内に進出してから間も無く、一気にブームが去ってしまいました。
いつものように、「今日は30万円を目標に頑張るぞ」と現場に出ますが、その日の売上は10コ。目標30万円が1800円の売上で終了。
売れずに余った1500コものたい焼きを捨てた時に「終わった」と思いました。
そこからは後の祭りで、増やしすぎた店と人で毎月多額の赤字になり13店舗もあったお店は全部閉店。機械など売り払っても3000万円の借金が残りました。
初めの頃に一番稼いでいた店が常に人が溢れるショッピングモール内だったのです。
しかし、それと同じ感覚で都内のショッピングモールにも出店してしまったのがアダとなりました。
都内のショッピングモールの家賃は毎月なんと約13倍の140万円。
さらに2年間の縛りがあり、もし途中で閉店する際も2年分の家賃は一括で精算しないといけなかったのです。
ブレイクは人を狂わせる
話だけ聞くと、「バカだなぁ」と思ってしまいますが、この人は以前は地銀で法人融資の担当をしていました。
上司からも認められる実力もありましたし、本業を自分の手の届く範囲でやっていればいいのに色んなものに手を出して夜逃げする企業をたくさん見てきたので、事業の失敗パターンも熟知していたはずでした。
しかし、本人も認めていましたが、実際に事業をする側に立ってしまうと欲が止まらなくなり冷静に見れなくなると言います。
「すごい行列で人手が足りません!」
「材料が足りません!」
そんな状況に実際なってみると、目の前には行列があるのにそれを逃すのはお金を捨てるのと同じで心の底から苦しくなってしまう。
さらに人を増やせば、店を増やせば増やした分だけ売上が上がっていくのを間近で見ていると、もう先のことは一切考えられなくなってしまうと言います。
そして、、、
その後、借金は家族にまで飛び火し、離婚。借金の一部は親にも払ってもらっている。
もうどうしようもない状態で、現在は死ぬしかない状態というところまで来てしまいました。
その後の安否は分かりませんが、年収5000万円が突然借金になったその状況は想像もつきません。。。
たい焼き市場は2004年には78億円程度のものでした。しかしその5年後には388億円と、約5倍に成長したのです。
その後もテレビやメディアで紹介され続け、ビッグマーケットに発展しました。
ですがその後は恐ろしい速さで衰退し、もはや何もなかったかのようになります。
さて、昔からある一般的なたい焼きが何故こんなにも一大ブームを作り上げたのでしょうか。それにはこんな説があったんです。
このブームで一番儲けたのはFC本部と言われていて、コンサル料や加盟金だけでも数億を稼ぎ出し、かなり儲かったそうです。
そして、このブームを作り上げたと言われているのは製粉メーカーの鳥越製粉です。
鳥越製粉は3年をかけて白いたい焼きの粉を開発しました。そして不況で苦しむ配管工事業の尾長屋に話を持ち掛け、白いたい焼き屋を開店させ、それが火付け役となり、瞬く間に広がったと言います。
誰かが、「アメリカのゴールドラッシュで一番儲けたのは発掘者より発掘器具を販売した人だ」と言いましたが、今回の件もこれにあたりますよね。
全国に広がった白いたい焼き屋さんから材料費を搾取した製粉メーカー。
ブームが去り借金がだけが残ったのは脱サラ組だけとなりました。
企業はどれだけ生き残るのかを表した企業の生存率を見ると、このようになっています。
1年→40%
2年→15%
3年→6%
独立、起業してもわずか1年で半数以上が。そして3年になると94%が倒産する結果になっています。
数字だけ見るとかなりヒドい結果で、起業なんてしたくなくなりそうですが、実は倒産の1番の原因になっているのが、まさしくブームに乗った流行り物での独立です。
この企業生存率は、言いかえればブームの継続率としても見れます。どんなブームも1年で興味半減。3年後にはほとんど忘れられていますよね。
お笑い芸人で例えると分かりやすいので、この企業生存率をテレビ露出率に置き換えてみます。
1年前に活躍した日本エレキテル連合。今年に入ってテレビの露出が半分以上減った気がしませんか?
冷やし中華の歌を歌ってたAMEMIYAや、右ひじと左ひじを交互に見て欲しい2700が流行ったのは3年前です。ほとんど見なくなりましたね。
人が新しいモノに興味を持ち続ける期間がまさに企業生存率と比例していませんか!?
しかし、それでも現実には多くの人が「どこかにいいアイデアないかな」とか「こんなのがあったら流行るんじゃないかな」と、当たり前のようにブレイクを目指してしまいます。
同じ材料を同じレシピで作っても、焼き方によって大きく味が変わってしまうのが白いたい焼きです。
しかし「美味しい物を提供したい」というよりも「白いたい焼き」という商品力に目を付けたまったくの未経験者が集まってしまいました。
そのことにより店によって味はバラバラ。さらにバイトを使い、混雑の中でやっていれば味はドンドン落ちていく一方です。
珍しさで注目され行列を作りましたが、一度食べて「あぁこんなもんか」と思わせてしまえばリピートはつかなくなりますよね。
ちなみに長年継続している普通の茶色いたい焼き店は、どのお店でも同じ味が出せるようにしっかりとした研修、修行期間を儲けています。
大きくは儲けてはいませんが、しっかりと土台を作って美味しいものを出し続ければ、ブームなどなくても、珍しくもないどこにでもあるような商品でも常連が付いて、長く商売をすることが出来ています。
まとめ
最後にまとめると、
売れている状態では冷静でいられなくなる
ということが学べました。
本当に、こんな話を聞くと笑っちゃいますよね。「なにやってんだ」「当たり前だろ」「おれならもっとこうする」などと思うかもしれません。
しかし、白いたい焼きを始め、ほとんどの企業がこのように倒産していきます。
マネーの虎で絶対的な成功者として出ていた社長達も、その後にはこのような理由で次々に倒産していってしまいました。