2018-12-09

青少年の性行動全国調査(1/5)(Session-22 書き起こし)

ラジオ「Session-22」書き起こし。https://www.tbsradio.jp/319359

"大学生デート経験率は過去最低" 草食化とも報道された「青少年の性行動全国調査」その結果から読み取れる本当に大事な事とは?

次:https://goo.gl/N1VKk5

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南部広美:

大学生デート経験率は過去最低に"

草食化とも報道された「青少年の性行動全国調査

その結果から読み取れる本当に大事な事とは?

先月、若者の性行動や性に関する意識調査する青少年の性行動全国調査の結果が公表されました。

この調査日本性教育協会1974年からおよそ6年に一回行っているもので、8回目となる今回は去年、全国の中高生大学生合わせて13000人ほどを対象に本人が記入する方式実施しました。

今回の調査では、デート経験したことがある大学生割合男子が71.8%、女子は69.3%でいずれも過去最低に。また性交経験ピーク時の2000年代半ばに比べ大幅に減少していて、大学生男子で47%、女子は36.7%でした。

この結果を受けて草食化が進むと報じたメディアもある一方で、調査の結果を見てみます中学生デート経験は男女ともに過去最高で、日本性教育協会では性に積極的な層とそうではない層の分極化が進んでいると分析しています

今夜は調査委員会の委員として青少年の性行動全国調査に携わった社会学者永田夏来さんをお迎えして、この調査結果から読み取るべき本当に大事なこと、そして今後の社会的アクションについても考えていきたいと思います

荻上チキ

このように同じような項目について長年取り続ける調査というものは、社会の変化を浮き彫りにする上でとても重要であると同時に、いろんな社会政策の提言とか社会教育のポイントとかそんなことまで浮き彫りにしてくれるものなんですね。

から今回の性に関する調査ではあるんですけれども、性を通じて社会が見えてくるという点もありますし、性を通じて課題が見えてくるという点もあります。なので、今回はどんな調査結果になっているかということに加えて、その報じられ方の問題や、一方で具体的なデータの読み解き方、そして課題、そのあたりをですね、今日は伺っていきたいと思います

南部

ではスタジオゲストをご紹介します。

改めまして社会学者兵庫教育大学大学院学校教育研究科講師永田夏来さんです。

よろしくお願いいたします。

永田夏来:

よろしくお願いします。

荻上

よろしくお願いします。

土曜日イベントではお世話になりました。

永田

とっても楽しかったです。ありがとうございます

荻上

改めてなんですけれども、この調査というのは一体どういった調査なんですか?

永田

この調査は、1974年から6年おきに全国の中学生高校生大学生対象にしている、継続的調査というところが一番のポイントですね。

継続調査であるということはどういうことかというと、調査項目を基本的に変えないっていうことです。相手は入れ替わっているんですけれども、同じ項目について、同じ訊き方で、同じ手法で、同じ選び方で訊いているので、社会の変化を見ていくっていうことを前提にした調査になっているっていうところが一番の特徴になりますね。

荻上

最初設計が当然大事になってくるというのはもちろんのこと、たとえば同じ調査項目でただ変化しただけでなくて、もしかしたら答える側の解釈が変わってくるかもしれないとか、単にデータの結果を文字どおりに読むわけではなくてテクニック必要になってくるというのが、こうした継続調査の難しさでもあり面白さでもありますよね。その中で永田さん、今回の調査ではどういった役割をされたんですか?

永田

今回は代表お話しますけど、もちろん分析も含めてチームでやってるっていうのが大前提ですね。私も基本は家族社会学で若者恋愛妊娠結婚出産ぐらいのところを専門にしてますが、私以上に学校教育について詳しい方であるだとか、階層研究について詳しい方であるだとか、いろんな立場研究者が集まってそれぞれの知恵を出し合って分析しているっていうことになります

荻上

階層というのは社会階層立場のことですか?

永田

そうです。

私がやった事っていうのは、その調査設計それから実査それから分析ですね。入力なんかは他の研究分担者がやってくれてますけれども。

この調査実査が非常に面白くて、実際に学校に行ってやるんですよ。

この間このニュースを22日ですか、木曜日デイリーニュースセッションで取り上げて頂いた時に、ツイッターハッシュタグ見てたら「どれぐらいちゃんと答えてるんだろう」って。

「なんか性行動の話とかちょっと答えにくいじゃない」「サバ読んで答えてるんじゃないの?」みたいなことがツイッター議論になってて、そうだよね、って思いながら見てたんですけど、自分で書いてもらってるっていうのがこの調査の特徴です。

実査学校に行って、学校教室でやるんですけど、ちょっと席を空けてもらって、見えないようにして、封筒に入れて配布し、自分で書いて封筒に入れて回収すると。完全に匿名ですね。

学校先生も基本教室から出てもらってますので、そこまで行ってサバまれたらしょうがないけど、極力サバを読まなくても大丈夫な工夫はかなりしているっていう自負はありますね。

荻上

研究として論文にするための手続き、最低限これくらいしなきゃいけないっていうものがあるわけですけれども、そうしたことを行いながらしかも同じ方法で続けているということなので、それでどう変化するのかが見えてくるわけですね。

この研究の意義は、僕なりに解釈したものはさっき言ってみましたけれども、永田さんはこの研究の意義をどうお感じになりますか?

永田

継続調査であることの意義は何なのかって言うとそれは時代効果、加齢効果コーホート効果っていうふうに我々社会学者は言うんですが、この三つを分けることが可能だっていうのが継続調査の一番の強みなんですよ。

時代が変わったことによって生じる変化、たとえば携帯電話の利用率なんかそうですよね?携帯が普及すると年齢かかわらず全員が使うようになった、これが時代効果です。

それと加齢効果っていうのは、例えば通院の頻度とか。歳取ったら、どんな時代に生きている人であっても病院に歳とともに行くようになるとか。そういうのは時代関係ない年齢による効果ですよね。

それともう一つがコーホート効果。それはどんな世代によっていろんな経験の仕方や社会的背景が違うから行動に変化が出てくるコーホート効果

この三つを分けることが可能だっていうのが継続調査の一番の強みなんですよ。

そこをどういう風に見ていくのかっていうことで議論ができるっていうところが、一番のおもしろさかなという風に思いますね。

荻上

例えば、よく若者政治離れ、みたいなことを言われたりするわけですけれども、今の三つの分類で言うと、本当に政治離れしてるのか?

どの世代若者の時が一番政治離れはしてるわけだけれども、だけど二十代三十代四十代と歳を重ねていくにつれて投票に行くようになったり支持政党ができてきたりということを経験していくと。

からこれがその世代独特のものなのか、それともこれからもずっとそうなのかというのは、加齢効果なのか、コーホート効果なのか、時代効果なのか、追って行かないと分かんない点もあるので、一個のデータだけ、その年のデータだけでは解釈できないものもたくさんあるんですよ。

永田

そうなんですよね。その辺をやっぱりしっかり議論していくっていうことにつなげていくというところが一番の継続調査の強みかな、って私は考えてますね。

荻上

そうした中で若者の性行動調査、ということなんですが、今回その結果が一部メディアで、6年前もそうだったと思うんですけど「草食化が進んでる」というワードで報じられたりもしていましたが、実はこの調査、数多く行われている調査で、性行動だけじゃなくていろんな調査が行われているんですよね。プラス分析の仕方も色々あるんですけれども、まず草食化という括りと、そこが注目されることについてはどうお感じになりますか?

永田

そうですね、あのね、若者調査って割とそうなんですけど、レッテル貼りたがるっていうのがあるんですよね。

特に大人にとって若者はこんな何か変わったことをしているとか、逸脱行動に走っているとか、そういうふうに、若者は変だよっていう風な話を作りたがっててるっていうのがそもそもメディアの状況として若者研究でも指摘されてるんですけど。

荻上

ゆとり世代だとか、さとり世代だとか、お金がなくてもなんか絶望してないヤツらだとか……

永田

パラサイトシングルとかね(笑)

そういう風なレッテル貼りに使われるんじゃないのかな、というのが一番危惧しているところです。

草食化というと草食系男子みたいに思いがちなんですけど、実際このあとデータ見ていくと思うんですけど、経験率下がっているのは女子経験率が下がってるっていうのもあるんで、なんか単純に草食化って言われて勝手に皆さん想像されたら困るっていうことありますし、より正確なところは分極化、先ほどお話あったようにバラエティに富んできているというのが正確なところなので、そこをきちんと理解していただいた方が、社会見取り図としては正確になるよねと思ってますね。

荻上

今の言葉の「分極化」なんですけども、これ「二極化」ではないんですか?

永田

ポーラライザーションの訳なんですよ。二極化と言ってもいいんですけど、分極化っていうことで意味されるのは、全然違う要素が同時に起きてるっていうことなんですよ。二極化って言うと、パカっと二つに分かれるって感じなんですけど。

荻上

二極化イメージ格差、分断、すごくコミットする人そうじゃない人に分かれる、みたいなイメージありますけど、分極ってもっとこうぐねぐねして、いろんな人たちがいますよねというようなものが、なんとなくでもこういった集団、こういった集団という風に見えてくるようなもの……

永田

という感じです。

なので二つにパカっと分かれるわけではないというところがこの含意になりますね。

荻上

今日はですね、統計、読み解き講座も兼ねられるような構成にしていますので、まず肝心のデータを見ていきたいと思います

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ラジオ「Session-22」書き起こし。https://www.tbsradio.jp/319359

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