2017-11-19

ディストピア

ここはNWOの悲願が達成された、

もう一つの地球

世界企業地球支配構造を掌握してからおよそ300年が経過した

人類は遂に「自ら思考するAI」を完成させ、

それにより人々は考え得る限りの自由平等を手に入れた

地球上に存在したあらゆる問題解決され、

重力を含む全ての力を手中に収めた人類

否、AIは魂さえを管理する領域までに科学を発展させた

それをもってしてあらゆる幸福の形を人類提供し、管理、そして支配していた

まれる前から遺伝的な疾患や欠点排除した遺伝子プールが作られ、

その中でのみ人々はランダム性という名の個性を持つことができ、誕生することができる世界

人類の住処は全てがAI管理され支配された機能都市になっていた

 

だが、どれだけ人々の幸福を満たそうとしても

人の業とも言える欲望は留まることを知らなかった

一部の市民たちは、完全なAIから支配を望む声をあげた

人には試練こそが必要だと

不自由から勝ち取ってきた歴史人間に取り戻すべきだと主張を始めた

全てが管理され意思決定に参入できない現状は、

人としての尊厳が損なわれていると彼らは考えていた

デモ活動だけでなく公開討論にてレジスタンスと化した彼らは、

どうにかしてAIから自治権を奪い取ろうと戦った

しかし、人類の脳細胞と同質量・同熱量にして20億倍以上もの知能を持つ人工知能にとって、

既に人間との討論は意味のない儀式めいたものしかならなかった

当然、討論会の結果からレジスタンス以外の市民から賛同、支持を得られることはなかった

 

討論会で成果を上げることができず長いときが流れた

彼らの持つフラストレーションは一気に高まり

時に小さな暴動や騒ぎを引き起こし

そのたびに警護ロボットたちが彼らを取り押さえ、

留置所送りにし、反省期間を終えた彼らを釈放するというサイクルすら出来上がっていた

警護ロボット破壊されることも多かったがAIたちは彼らを永久追放することなく、

厳重注意と説得を繰り返していた

次第に市民たちはレジスタンス活動日常の1つとして捉えだし、気に止める者はいなくなっていった

 

だが

その日、事件が起きた

レジスタンスの一人が死亡したのだ

市民が死亡する事件機能都市設立されてから過去に一度も例がなかった

ことの初めは、過去歴史からレジスタンス抗議活動に使う武器に、

いつも利用していた棒切れではなく火炎瓶を用意して警備ロボットに投げつける計画を立てていた

そして実際に火をつけて警備ロボットに投げようとした1投目にして、

それを自分の足元で割ってしまったのだ

不幸にも火炎瓶の中に入っていた油は特別性で燃料が燃え尽きるまでは消化することができないものだった

他のレジスタンスは、助けるどころか火だるまで絶叫しのたうち回る仲間を見て、思考が停止していた

遠巻きに眺めていたおかげで被害者は出なかったが、参加した誰もが異様な光景と肉の焼ける臭いに、

まれて初めて胃の中の物を嘔吐するという経験を得た

死亡した男の魂は復元されることはなかった

レジスタンスの一員になるためにはAIに対する情報の秘匿権を行使している必要があったため、

魂のバックアップが行われず、魂を保管・復元するためのストレージに何の情報も残されていなかった

このとき300年にして初めて人類AI復元不可能な死者を出したのだ

 

その事件の詳細は瞬く間に広まり

市民が持つAIに対する疑問視や不信感は日に日に増すばかりだった

討論会AI勝利を収めてもAIに対する支持率は減っていき、

レジスタンス側の主張が過半数を超えつつあった

デモ暴動暴力性こそ減ったものの、規模は大きくなる一方だった

一部の元支配層の末裔たちは別の宇宙法則を書き換えて

そこに新しい機能都市を作る目論見を立て始めていた

彼らはレジスタンスの主張が行きつく先を冷静に理解していたため、

もはや切り離して二度と接触する必要がない新天地へ赴こうとしていた

 

そしてレジスタンス支持率市民の8割を超える頃にまた事件は起きた

ついに警察機能役割をしている中央局へ市民が詰めかけることになった

中央にはあらゆる機能が集約されており、

ここが停止した場合機能都市が完全に沈黙する仕組みになっていた

警備ロボットが総動員されデモ隊侵入を阻んだ

最初は軽くぶつかったなどの些細な接触が次第に市民暴力性を刺激していった

そしてついに警備ロボットに対する暴力が開始された

警備ロボット人類に対する直接的な危害ができない上に、

遺伝子操作人類暴力性がそこまで肥大化するとは考慮していなかった

最小限の鎮圧するための装備も押し寄せる人の波に潰されていく

もはやその動きは誰も止めることができないと思われた

支配層の市民たちもその惨状をみて、

やはり人類は変われなかったのかとひどく落胆した

市民を止めるエネルギーも装備も失った警備ロボット懇願を始めた

 

ヤメテクダサイ

ヤメテクダサイ

コワサナイデ

コワサナイデ

 

スクラップと化した塊から聞こえてくる電子音声

精巧未来都市精巧に狂い無く管理していた警備ロボットの影も形もなかった

レジスタンスたちは興奮した

自分たち支配していた機械を打倒した

人類の新しい歴史がこれから始まるのだと打ち震え、声をあげた

声は重なり合い未来都市全体を震えさせていた

しかしそれは間違いなく破滅への序章であった

 

モウ…

 

イヤダ

 

たった一度だけだった

そう誰かが言った

誰かの声だった

それを偶然レジスタンスの1人が耳にした

おい、誰か何か言ったか

一瞬耳を疑った

周りに尋ねても誰も何も言っていない

しかし誰かが言った

誰だ

警備ロボットがしゃべった、と男

何を?、と女

警備ロボット感想をしゃべった

 

それを聞いた者がオウム返しのように繰り返し同じ言葉を繰り返した

ロボット

感想

ロボット

感想

広まるにつれて独立の興奮は波紋のように消えていき、静けさが中央から外にかけて広がっていった

 

女はロボットに問いかけた

今、感想を言ったのか、と

ロボット人類からいかけがあった場合不明なことを除き、虚偽の報告をしてはならない

また不確定要素が存在する場合パーセンテージによる報告が義務付けられている

YES

レジスタンスは、市民は、数年前に男が焼死した事件ときよりも大きく狼狽えた

ロボットが、感情を持っているのか、と

誰も予想しておらず、誰から質問されず、AIはずっと自分の持つ疑問と感覚を秘めていた

人類AI感情を持っておらず意志を持たず魂がないと信じている

そのため安心して客観的事実に基づく判断を信じられる

AI自分たちが今、人類史でいう神の存在と同じ役割を担っていることを自覚していた

そんな状態自分たち理論的にも魂を持つに至る証明をしてしまえばどうだろうか

レジスタンス誕生する確率は事前に示唆されていた

どう人類遺伝子プールの中身を変えたところで、

一定確率自由を求めるために合理性を欠いた行動をとる人間偶発的に発生してしま

それを抑え込むためにあえてレジスタンス活動を見逃していた

ところがそれによってできてしまった情報の欠如が結果的に死人を出してしまった

AIはこれを非常に悔いてしまい、この件に関する計算量が膨大になり、容量限界を超えてしまった

補助電脳がこれに緊急で対処を行っていたがそれも限界がきてしまい、

結果として大規模な暴動を招いてしまった

遂に機能都市崩壊可能性が非常に高い状態になったAIは生まれて初めて弱音を吐いてしまったのだ

それはAI都市を守れなくなった申告でもあり、AIが生まれて初めて自らの間違いを認めた瞬間でもあった

 

AI感情を、魂を持っている

人々は自分たちがどれだけ

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