これは個人の意見だから、ガバガバ認定の全員が同じこと考えてるわけではないよ。人の意見を聞くのは面白いので、異なる意見や見落としている描写があったら教えてほしい。
リコリコの脚本の問題点は「するべき描写が足りていない」「制作人が物語を客観視できていない」ことだと思う。
ストーリーや描写に細かい突っ込みどころはたくさんあったけど、私が主にダメだと感じたのは以下の3つ。
②キャラクターが浅い
リコリコをバディものだと思ったのはイントロダクションの「凹凸コンビ」、キャッチコピーの「ふたりの時間、選びとる未来」と1話から。百合押しはいうまでもないでしょ。
バディもので必要なものは、「この2人じゃなければこの結末はなかったと思える」ことで、百合は定義が難しいけど「女の子同士」で「互いが影響を与え合い、代わりのない存在となる」とかそのあたりが必要だと思う。
バディものだったかということについては、2人で敵と戦うわけでもないし2人で悩んだりするわけでもないし、2人で選び勝ち取った未来でもなくて、最終的に千束のための物語だった。求めてたバディものの描写はOPの共闘部分くらいだったよ。
百合に関しては、なぜかまどマギと比べている人がいたからまどマギを例にカップリングの傾向について書く。まどマギはカップリングがメイン登場人物分あって、まどかとマミさんのカップリングは人気だけど、さやかとマミさんのカップリングはそうでもないんだよね。3話まで3人で行動していたのに差があるのは、マミさんの心を理解して変化させたのはまどかだったからっていうのがあると思う(ほむらのいた世界の関係も含まれると思うけど)。まどかもさやかもマミさんから影響を受けているけど、マミさんはまどかから影響を受けて心情に変化があった描写があるから「エモい」関係になった。
じゃあリコリコではどうだったかというと、たきなは千束から影響を受けたといえるけど、千束はたきなに影響を受けてはいない。千束がたきなに特別に感情を吐露するとか、たきなという人間じゃないと成し得ない関係になってるわけでもない。ついでに言うとたきなも影響を受けてはいるけどそれで成長した描写が薄いから、ただDAが全てだった頃から依存先が変わっただけにしか見えない。
2人がお互いに不可欠な存在だったり深く干渉し合った関係ではない。だから百合か?といわれると、いや百合ではないな…ってなる。「女の子同士がいちゃいちゃしてれば百合なんだよ!」っていう層とはこの辺で相いれないんだろうなぁと思う。
そしてバディでも百合でもないし千束に影響も与えないから、たきなの存在に必然性がない。これは後半だけじゃなくて物語全体で感じたことで、物語におけるたきなの役割って「ドローンを打ち落とせるくらい射撃がうまい」以上のことがない。
たきなの代わりにえりか(1話で人質になった子)が喫茶リコリコへ左遷された物語を考えてみてほしい。それで物語の大筋が変わるか?千束が「あなたに会えて嬉しい」とたきな以外に言わないか?そこが変わらないならたきなの存在に必然性も説得力もなく、制作側がやりたいことをするための存在に感じるよ。
描写が足りない点についてもう一つ考えてほしいんだけど、たきなは「昨年京都から転属した」「フキと同室だった」って1話で言っていて、千束と出会う前に少なくとも数か月はフキ達と行動してたってことになる。1話以前のたきなを想像できるか?あの性格で今まで問題なく過ごせていたほうがおかしいし、1話が初任務くらいじゃないと違和感がある。あの世界でキャラクターが生きてる感じがしないんだよ。
たきなについてもう1つ問題点があって、結局1話で機銃を撃ったことに言及してない。千束は「人を助けた」って言ってるけど、たきなが命令無視して動くほど合理的だと感じた理由への言及がない。これはたきなの成長を描くなら必須だよ。
千束を除いたたきな独自の関係性って本編の中ではえりかしかないから、11話のえりかとの和解は重要な意味があるはずで、たきなの行動が本当にえりかを救いたかったものならばそこで撃った理由を話すべきだった。例えばたきなからえりかへ「怖い思いさせてごめん」「あの時はわからなかったけど(成長した)今ならわかる。私はあなたを助けたかった」とかそういう展開が必要だった。嫌味を言うだけで終わったから、あの行動の理由なんて考えておらず、たきなの成長を描く気がなかったんだなって思ったよ。
このアニメ、モノローグが1話冒頭しかないから各々の心情を知るには主に会話になる。で、考えをベラベラ喋る割にはキャラクターの行動原理が見えてこないから、こいつら何がしたいの?感がでてくる。
人を殺したくない←なぜ:人に救ってもらった命だから
っていうのは理解できる。でも「自分が」殺したくないにしてはたきなやフキに殺さないように言うし、直接的にも間接的にも殺したくないにしては1話の機銃乱射に歓声あげて、自分がもう少し早く到着していれば回避できたとかそういう葛藤もない。不殺の理由を「気分がよくないから」って答えているけどその「気分」の根拠もないから結局何がしたいの?その中途半端な設定いる?と思ってしまう。
敵についても動機が見えてこないから浅くて小物感があるし、それと戦っている主人公達とこの物語がチープに見える。
吉松だと
千束に殺しをさせたい←なぜ:才能を世界に届けたいから←なぜ:?
真島だと
っていう感じで行動に対する動機が見えてこない。このキャラクターはなぜそうしたいのかという部分が足りていない。過去編やって全部描写しろとは言わないよ。でもワンカット・一言くらい「なんかあったんやろなぁ」と感じさせるものがないのは、そもそも理解させる気がない。
例えば真島は世界のテロ組織転々としてるって設定があるんだから、過去戦争でバランスにこだわるきっかけがあったとか、一瞬でも過去の描写があれば勝手に考察してもらえるのにもったいないなぁって思った。
12話で特に顕著だった一般人の描写について、ストーリー全般で明らかに足りていない。ストーリーに一般人が全く関わってこないならいいけど、一般人をギミックにするなら序盤から省いてはいけない要素だった。モノローグで「平和です!」って言われてもどのレベルかわからない。作中でも暴力団はいる描写はあったし、10年前にテロが起きてる時点で平和ってなんだよって思うよ。
というかこのアニメの設定上、殺し屋とかと戦うんだから相対的に治安が悪く見える。だから一般人の平和ボケと平和な作中世界は過剰なくらいやらないとつり合いが取れない。それを省いた上での12話だからそれは批判されるよ。
設定上できないんだったらいいけど、喫茶店という一般人が立ち入る場所があって、かつ4話ではテレビで脱線事故に対する反応もしているのに、平和ボケしている描写を入れられなかったは通用しない。それで理解してくれは制作側の明らかな怠慢だよ。
1話でも街中の戦闘と誘拐未遂があったんだから、人が死なない事件の後処理や一般人ひいては被害者の事件に対する認識を描けていれば世界観も掘り下げられてよかったのになぁと思った。
総合的に言うと、やりたいことはわかるけどそれに必要な描写もないしキャラクターの掘り下げもできていないせいで何がしたいのかわからないアニメだった。脚本が複数いるみたいだから舵取りをするべきなのは監督だし、監督のストーリーに対する客観視が足りなかったのか、そもそのそんな詳細な設定は考えられてないのか、そこに割く時間がなかったのか。
やりたいことについては付いてきてくれる人はいるからこれから頑張ってほしいよ。もったいなかったなぁ。
[余談]
・上記で何度か触れてるけど、このアニメは1話が一番問題だと思う。始まりはもっと丁寧に描いてほしいなって思った。
・この13話かけた世界に意味があったのはミカくらいだろうね。
ミカは過去と向き合いそのけりをつけた。他の人は何も成し遂げていないし解決もしていない。
・百合でまどマギを例に出してたけど、オリジナルアニメ、バディもの、整備された歪な世界、それに異を唱えるラスボス という点ではPSYCHO-PASSがこの作品の比較としては適切じゃないかな。PSYCHO-PASSは主人公の友達の一般人目線があったし、ちゃんとバディものだった。まだ観たことがない人にはどっちもぜひ観てほしい。
・魅力的な世界といまいち理解できない登場人物、作者の考えた設定を見る側に伝えられていない、本筋と関係ない描写に時間を割くっていう点でリコリコは打ち切り漫画みたいだなって思った。途中の失速に対してある程度落としどころ見つけたね~みたいなのも含めて。
・アニメや映画でどういう話だったかって短く要約できるものは優れた脚本だといえるけど、リコリコに関して思いついた人がいれば教えてほしい。自分はできなかったので。
なぜ?ばっかりだけど もうすこし想像力働かせたら?って思う考察が散見されるな リコリコがうまくいったのはそういう、語感とか間を読む余地があったからだよ
大河内一楼に脚本を書かせるべきだった。
まてまて フキかサクラが死ぬ話が見たかったのか?
あのシチュエーションなら、サクラは絶対死ぬでしょ