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2022-02-11

最近読んだBLと非BL

 数年に一度は自分に襲い来る長野まゆみ作品ブームはまっている最中のため、あまり商業BLを読めていない今日この頃。残り少ないお小遣いも、長野先生新刊(非BL)を買うために温存中。

 ちなみに、長野まゆみ先生の書くものの多くには男×男の恋愛要素があるのだが、「非BL作品扱いなのは何故なのかというと、BLレーベル以外から出版されており、商業BL定義にあてはまるようなBLではないからというだけ。商業BLには面倒臭いルールがあるのだ。例えば、基本的ハッピーエンドとか、攻めの浮気厳禁とか、無駄に女を登場させてはいけないとか。

 まずは久しぶりにちゃんと「商業BL」の漫画から

極夜』(文善やよひ)

あらすじ

 世界は人の住まう「現世」と人ならざる者の住まう「常世」に別れている。主人公天野は、常世から来た者たちが利用する人里離れた旅寓(旅館)で働いている。

 ある日、常世の王・ツクヨミが旅寓に骨休めにやって来た。傍若無人ツクヨミ天野は振り回されるが、ツクヨミにかつて自ら命を断った友人の面影を感じ、気になってしまうのだった。

増田感想

 これはある特定の層にピンポイントでぶっ刺さるやつなのだろうと思うが、生憎私自身はこういう系を好きこのんで漁って読む方ではないので、せいぜいハジ先生の『坊主蜘蛛』を読んだくらい。BL外の作品ではたとえば『千と千尋の神隠し』とか『しゃばけ』とか『蟲師』とか『夏目友人帳』とか『モノノ怪』とか『家守綺譚』とかそこら辺が好きな人向けなんじゃないか。あ、私の好きな『左近の桜シリーズ』(長野まゆみ)もこういう系だな、そういえば。

 特定の層にピンポイントでぶっ刺さる系なので、『極夜』のレビューを某BLレビューサイトで見るとけっこう良さげなのだが、泣いたとか感動したは言い過ぎなのではないかと、私は思う。そこまですごくはない。まあまあ良い話だとは思うけど。

 事前調査なし・試し読みなしで買って読んだら、表紙めくって出てきたカラーイラストが『鴆――ジェン――』のフェイ将軍とツァイホンの絵だったので、私は買う本を間違えたのか? と一瞬慌てた。調べたら、この『極夜』というタイトル単行本、文善やよひ先生が『鴆』の大ヒットで人気作家になったために、絶版になっていた過去作品を『極夜』と改題して復活させたものだった。表題作の他に『鴆』の番外編も同人誌から再掲。なるほど、今の文善先生はかなり手練なプロ作家という印象だが、『極夜』は確かに若いなって印象だ。『鴆』はpixivコミックで2話まで無料で読める模様。

 文善先生の大ファンの人で過去作品全部コンプしたい人向け。文善作品ちょっと興味があるくらいなら、回り道せずに『鴆』シリーズか『蟻の帝国』を読むといいのでは。

 エロシーンがしめやかでいいな。私はあまりこれ見よがしな感じのエロシーンは好まないので。それと、ベタスクリーントーンが少ない為にエロシーンの白抜きが煩く見えなくていい。

 しかし、シンプルめな画風でもごっそりと白抜きのかかるのって。以前、某お気に入り作家さんのBL作品シーモア無料になっていたので読んでみたところ、修正レベルシーモアだったのでKindleでは輝く白さに消されるべき所が薄ぼんやり見えていたのだが、薄ぼんやり越しにもそこがかなり生々しい描かれ様なので驚いてしまった。な……BL作家さんって、キャラの顔はめっちゃ漫画でもおちんだけはこんなにリアルに描くもんなのか……なんでここまでおちん描写に執心してるのかわからない……と、電子書籍Kindle使いな私は愕然とした。そんな所どうでもいいと言い切ってしまうのも何か違う気もすると思いつつ、正直どうでもいいよなあ、どうせ消される所なんだし……と思わずはいられない。


『綿柎開(わたのはなしべひらく)』(長野まゆみ



概要

 16ページしかない掌編なので、あらすじは省く。掌編アンソロジー『掌編歳時記 秋冬』に収録された作品サラリーマンのほんのりオフィスラブ。現代現代的な話だから幻想なし。エロもなし。しかし非BLなので安定のインモラル上等ぶり。


増田感想

 普通に現代ものなのでビビった。登場人物ちゃんと今時のサラリーマンだなんてすごい! 漢字字形にやたら拘るところはいもの長野先生だけれども。

 こんな短い文章ボーイズがラブしているのすごい。文章は簡潔だけど、短いなかに情報量が多く、なのに情緒風景描写が死んでいないとは。熟練プロ作家恐るべし。と、これを読んだ時にちょうど小説投稿サイトフジョッシーで開催されていた掌編コンテストに応募すべく四苦八苦していた私は、震え上がり畏れ平伏叩頭したのだった。プロすごい。


ところでBLとも長野先生とも関係ないけど、『掌編歳時記 秋冬』のトップバッターが先週亡くなった西村賢太先生訃報を知ったあとに読むとほろりとしてしまう、切ない掌編だった。


『チマチマ記』(長野まゆみ




あらすじ

 猫のチマキは飼い主のマダム・ロコとはぐれてしまい、まだ赤ちゃん同然の弟・ノリマキを連れての放浪生活ののち、小巻おかあさんの家に流れ着いた。小巻おかあさんの家・宝来家は大所帯。おかあさんの息子でありまかない担当カガミさんの他、おかあさんの亡夫の前妻・マダム日奈子、日奈子の娘の暦さん、暦さんの兄・樹の娘のだんご姫、だんご姫の叔父桜川くん、そしてジャン・ポールが住んでいる。

 そんな複雑な家庭でクセのある人々と共に暮らすチマキは、小巻おかあさんのエッセイコマコマ記』を真似て『チマチマ記』を書くことにした。これはチマキが宝来家にたどり着いてから一年間の記録。

増田感想

 だいぶ極まった感じのロハス生活を描いた作品だが、長野まゆみ先生らしく背景には桜川くん×カガミさんのほんのり(悪魔的な)BLがある。

 長野先生がこんなにふんわりした感じの森ガール死語)が喜びそうな文章を書くなんて意外な気がする。しかも「にゃん語」とか「萌え」とかい単語長野作品に登場するとは、その事自体萌え萌えしい。

 だが、文体はふんわりしているのに、ことあるごとに美味しい食べ物カロリーが高くしか健康に悪いという現実ビシバシ突き付けてくる。なんなの長野先生サドなの? そんなに言わなくてもいいじゃないカロリーことなんて! 普段現実離れした作風なのになんでそこだけリアルシビアなのか謎。極力カロリー塩分を抑えてしかも美味しい料理を作ろうとなった時にまずは極上の食材調達してきてそれを干す、という異様な難易度の高さ。救いなどなかった! しょうがない、貧乏人はポテチ食ってデブしか……。

 昔、向田邦子か誰かの随筆で、戦中にこっそり隠れて読んでいた婦人雑誌に「シュウクレエムのいただき方」という記事が載っていて腹を空かせながら読んだが、結びに「淑女はシュウクレエムなど食べてはいけません」と書かれていてがっかりした、とかいう内容のがあったと思うのだが、きっとその時の向田邦子か誰かの気分が『チマチマ記』のお料理場面を読んだ時の私の気分に近いんじゃないかなと思う。

 難易度高過ぎロハス暮らし描写勝手に心折られてしまったが、桜川くん←カガミさんのBLは良さげに納まったっぽいのでいいや。

 
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