辛い
お前チョピンの前でも同じこと言えんの?
眠れないとは具体的には
・寝付きが悪い
・夜中1,2回程度目が覚める
・その後は眠れるときもあれば、数時間眠れないときもあるが一応眠りにはつく
・その後朝方目が覚める
・アラームの鳴る1,2時間程度前のことが多く、起きてしまうには早いが二度寝するとかえって辛い
・翌日は眠気や頭の違和感はあるが、起きていられなほどでもないし、昼寝しようとしても眠れない
という状況だ。
1日の活動がまったくできないほどではないが、仕事が終わったら疲れ切ってしまい、好きなことに割く時間はあっても気力や体力がわかず、別段長時間残業や連勤をしたわけでもないのに仕事だけで1日が終わってしまった、喪失感というか、とてももったいない感が強く、それがストレスなのである。
もういい歳なので、健康維持増進のためにも軽いトレーニングは欠かせない。
また、睡眠負債は万病の元というか、老化やハゲを加速させると聞くので、完全に止めることはできないまでも、可能な限りは徹底的に抗い、遅らせたい。
今後加齢臭も現れ、ハゲ散らかし、「おっさん」「オヤジ」とひとくくりにされ、蔑まれること自体は不可避としても、「ただ醜く汚くらしいおっさん」にだけは絶対になりたくないからな。
「本当だ、いないじゃん」ミカが続く。
「あ、いないですね」吉田の隣の席の奴が囁いた。
国語教師の山岸は授業を中断し、後藤が座っているはずの席を見つめる「おかしいねぇ、どこ行ったんだろう」
山岸久、58歳、長い教師生活で生徒が忽然と姿を消したのは、当然初めてであった。後藤の席は真ん中付近、黒板に板書をしている間に教室から出たのであれば、他の生徒が見ているはず。「誰か後藤がどこに行ったか知らないか??」あたりは騒然とし始めた、どうやら誰も見ていないらしい。束の間、教室後方の扉が開いた、そこには鬼のような形相の後藤が立っている。「717と言え!!」学校中に聞こえるような声で後藤が叫ぶ、困惑しきっている山岸に詰め寄りながら「717と言え!!」何度も叫ぶ、山岸は何が起きているか全く理解できない、もはや泣きそうになりながら呟く「717、、」すると教室中の生徒が一斉に立ち上がる、山岸は夢か現実か区別がつかない。学級委員の吉田が声を張り上げた「山岸ティーチャー、7月17日お誕生日おめでとう〜」全員が隠し持っていたクラッカーを鳴らす。「パンっ」「パンっ」
山岸は35年間の教師生活を振り返っていた。色々なことがあったけれど、生徒たちは今、僕の誕生日を祝ってくれている。それでいいじゃないか、誕生日は11月7日だけど、それでいいじゃないか。山岸の頬に一粒の涙が伝う、「みんなありがとう」そう言おうと思った瞬間、目の前の本田が起立もせずクラッカーも鳴らさなかったことに気付いた。刹那、山岸は思いっきり本田の頬を引っ叩いていた、教室が静まり返る。
誕生日を間違えられたこと、ふざけた名前の呼び方、授業妨害、脱走したこと、タメ口で命令したこと、隠し事をしたこと、実は全て許せなかった。それを飲み込もうと思った矢先、起立もしていない本田が目に入った。手は勝手に動いていた、全部我慢していた、やっと気づいた。そこから山岸は教室のすべての生徒にビンタをした。100%クビになる、覚悟の上だった。
困惑と悲しみと怒りが飽和する教室、山岸は手の感触を確かめながら言う
「よし全員いるな」