2024-08-29

村上隆が何をやろうとしているのか理解して嫌いではなくなった

村上隆氏と左派論客斎藤平氏がReHacQ(高橋弘樹氏が運営するチャンネル)で対談している動画が4連続で上がっていてすべて見た。

※以下敬称略


結論から言うとこの動画村上隆が何をやろうとしているのかよくわかったので彼への嫌悪感はすべて消えた。

1動画40分近くあるので見るのは大変だと思うが興味深く見れたので余裕がある人は見てほしい。


一応言っておくとこれはあくまで私の個人的見解なのでその点には注意してほしい。

ざっくり動画の流れを説明すると斎藤幸平が布施英利と対談した際に村上隆が嫌いと悪口を言ったので、村上隆Youtube?にコメントを書きそれを見てチャンネル運営者の高橋弘樹が対談に誘ったという流れのようだ。

斎藤平氏マルキストなので拝金的に見える村上氏行為があまり好きではない

現在京都で開催中のもののけ展の展示内容を村上隆斎藤高橋、両氏に説明しつつ最後に対談という流れになっている。

そこで現代美術とは何か、芸術とはなにか、現代美術マーケットがどのようになっているのかという基礎的な内容を質疑応答形式確認していく中で村上隆がどのようなことをやってきたのか、目指しているのかという事も語られていく。

村上隆顧客forbes上位に入るような超大金持ちであるだとか、日本人想像もできないような西洋お金持ちの間でアートはある種のコミュニケーションツールとして機能しているだとか。斎藤氏や高橋氏のアート素人目線から質問として、アート大衆に開かれるべきなのでそれほどの高額でアートがやり取りされるのがどうなのかという質問などもあった。


ただ、結局動画の内容を見た上で私が理解した村上隆がやっている事というのは以下のようだ。

西洋を中心とした世界の信じられないようなハイソサエティの間で流通している概念上のアート文脈日本アニメ漫画といったオタクカルチャースタイルアートである認知させるため芸術活動をしている」ということだ。

それゆえに、彼のアートは"芸術の枠を拡張する"という典型的現代美術ということになる。

これは別の動画漫画家の山田玲司チャンネル)で言及されていたが、村上隆はもともとは典型的第一世代オタク宇宙戦艦ヤマトファンであった。そこでアニメ業界に憧れはあったが庵野秀明作品が続けざまに放映されるのを見て業界を諦めたらしい。その結果彼はアニメ以外に興味のある分野として日本画を専攻することになる。

まり根本的な動機としてアニメは素晴らしいものなので世間に認められるべきだというものがあり、それがスーパーフラットという概念アニメ漫画日本画も同じような手法を使っており、同じようなシステム体系であり、アートである」という主張に繋がることになる。

からオタクカルチャー世界に認めてもらう手段として、西洋ハイソサエティコミュニティ顧客とし、自分作品をその人たちに売るという行為につながる。

彼はしばしば「高額で売ることが重要なのではない」と言うがこのロジック理解すると容易に彼のアート発言意図がわかるようになる。つまり西洋アート文脈支配しているハイソサエティオタク系の作品アートである認知してもらうには彼らのマーケットに入り込みそれらの作品を売り込む以外に方法がないのだ。だから値段は顧客勝手に決めることになるし、高く売ることが重要ではないという事になる。目的を達成するための単なる手段に過ぎないわけだ。

またそれが彼の作品オタクカルチャー作品をパクったかのような作品群が混じる理由でもある。動画のなかでドラえもんソニックを混ぜて作った作品がある(ルックとしてはミッキーマウスに似ていたためにディズニーに買われたらしいが)

これはつまりドラえもんソニックを混ぜて作った作品美術マーケットで売れたということは大本であるドラえもんソニックアートである。という論拠になる。むしろ元ネタがある作品をあえて作ることで"漫画ゲーム作品アートである"という事になる。


"世界アートはいったい何なのかという概念を決めているのは西洋を中心とした大金持ちの上位層である"という彼の視座から見ると、日本人資本主義に組み込まれてすらいないとか、敗戦国の悲哀等という発言意図理解できる。

アートはいったい何なのかというルールを決める場に日本人存在しない。

からその世界に入り込みその概念のものを拡大して自分の好きなオタクカルチャーアートである概念を変容させる。


アニメゲーム制作者や漫画家がエンタメとして世界に売り込むことで楽しんでもらい大衆という社会階層の下からオタク世界拡散している。一方で村上隆がやっていることは世界の上位層に対してオタクカルチャーを広めオタク拡散することだ。

つまるところ上から攻めるか下から攻めるかの違いに過ぎない。

1990年代以降実際にオタクカルチャーは全世界拡散し人気を得てきた。私もアニメ漫画を楽しむ人が世界中に増えることは純粋にうれしい。直近でもご当地初音ミクに感動した人もいたはずだ。


から私は村上隆がやろうとしている事に反対しないし、もう嫌いではなくなった。



追記

幸いいくつかブコメが付いたので補足する

からこの趣旨発言はしてて、それをオタク文化収奪と見る界隈から批判されてた。ドラえもんソニックを混ぜた作品アート領域で認めさせてくれたかオタクの味方!というのはむしろ議論が後退してる気が

はっきり言うが、村上隆文化盗用だと批判されたのはオタク部族主義トライバリズム)が原因だと思うので"村上隆オタク第一世代である"という部分が広まれば相当数その批判は収まると思う。もともと知っていた人はいると思うが、今回かなりのコメントで"村上隆オタクのとしての過去の部分をここまで詳しく初めて知った"という意見が目についたので。


NHK番組集団体制というか起業して雇用者を支えながら制作しているのをみて、普通に企業家だと思ったよ。

これもクリティカルな部分で、では集団製作アニメアートではないのか?アシスタントを使っている漫画アートではないのか?

というところにロジックバックボーンとしてある。まぁ要するに高畑勲みたいに絵を描けなくて指示して作らせても別にアートだろということ


同じ文脈だとルーヴルで展覧会をやる荒木飛呂彦の方が好ましいか

トラバにも書いたけど、もともと王侯貴族のものだった芸術フランス革命ルーブル美術館の門戸を開いて大衆に開いたという文脈がある。つまり展覧会とか美術館で公開するのはあくま大衆アートを広めるのが目的であってハイソサエティアートを変容させるという事にはならない。日本人から見るとルーブル美術館は権威だというように見えるかもしれないが、あれは権威が"大衆"に啓蒙するという文脈がある。


コミックとかを芸術にするのってロイリキテンスタインがすでにやってて、その土壌がすでにあるうえでヲタク文化を単にスライドで持ってっただけに見えるから嫌われてるんでは?

コミック西洋のものであって、日本のものではない。村上が広めたいのはあくま漫画とかアニメといった和物(より狭義に言えばオタクカルチャー)。そして西洋人がアートを決めてるんだから西洋のものアートとみなされるというのは当たり前だと思う。

ただ、村上隆発言を見て分かったけど、彼の思想は明確にナショナリズム日本)やエスニシティー(アジア人)を強調してる。これは日本のものである漫画アニメを広めたいという思考で直線的に結びついている。今回の動画で弥助問題言及したのは非常にわかやすい。つまりはてなリベラル左派と相性多分悪い。

  • けど結局なんの結果も残してないよね

  • オタクがアートだと儲かるのは村上隆なのではないか オタクは儲からない

    • そして村上隆という名前が付いている限り彼らは「元ネタがある」事を絶対に認めない

  • かなり昔村上隆が金田伊功語ってたけど面白かったよ

  • アートに関心を持つ必要は特にないということがよくわかった

  • Web上で賢しらぶってる人たちはイメージで人を嫌って、イメージで人を攻撃していて、その根本にあるのは「自分が理解できないものがあるのがストレスだ」というエゴで、相手のスタ...

  • でも結局アート界隈では「村上隆がアニメを発明した、村上隆は世界で唯一無二のアニメである」みたいな扱いになってるから俺は嫌い

  • >日本のアニメやマンガが世界でヒットしたのも、もしかしたら村上隆の貢献がある https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20240829132621   これは100%ない(断言 海外のアニメやマンガ...

  • 単にストーリーを書けない言い訳なんじゃない?

  • 集団制作は狩野派もやってたから日本美術の文脈にも乗ってるとどっかで語ってたな

  • 村上隆ガーと野党ガーはどうせ、同一人物やろ

  • 増田が知らなかっただけでそんなことはみんな知ってた。知ってたうえで嫌ってたんだ。

  • 村上隆さんが正義のオタクで表自戦士が悪のオタクに別れたね

  • 村上隆増田と村上隆の和解の瞬間に立ち会うことができて感動している

    • 村上隆増田とは別人だと思う この増田は美大の教養がないただの鑑賞者だしセクハラ云々も言ってない

  • ■村上隆が何をやろうとしているのか理解して嫌いではなくなった https://anond.hatelabo.jp/20240829132621 「西洋を中心とした世界の信じられないようなハイソサエティの間で流通している概...

    • でもグランジはテクニック至上主義のむしろ正反対に位置しますよね?

    • 津軽三味線弾きがゴットタレントに乗り込んだら欧米人は驚いてひっくり返るだろう、ってくらい素朴(というか…)なこと言ってるよ。驚くわけねえじゃん。 驚いてるで https://www.you...

    • scum なら「スカム」ではなく「スキャム」だろ、ボケ

      • 表記でも発音でもscumはスカムだっつうの。このスカム野郎。

      • 会田誠がそこまで言われないのはほとんどのヲタクにとって"not for me"なので批評の対象に乗せてないからだよ。

        • 会田誠の絵はえっちだけど、村上隆の作品はえっちに見れないという重要な違いがあると思います

    • けっきょく大衆にウケるような権威づけは誰がやってるのさ、今 富裕は人が欲しがるものを占有する優越がメインなわけで 人が欲しがってる、という流れはどっかで誰かが仕掛けないと...

    • でも可変Ko2ちゃんのガレージキットはわりと心底欲しかった

  • 元増田のように、村上隆の話をよく聞いて 村上隆アート教の教えがわかったぞ!アートを理解した!ってなってるやつを増やすのが村上隆の目的

  • 村上隆が嫌われる理由のもう一つとして、日本の美術界の制度からはみ出したからってのもあって 日本の美術界はいかに「先生」に認めてもらえるかで出世が決まる でもこれがあまりに...

  • ワイは村上隆は好きやけど村上春樹は嫌いやで。

  • 村上隆の絵あまり上手く見えないのも嫌われてるんじゃね? 会田誠はフェミニストには嫌われてるっぽいけど、綺麗だったりするから割と許されてる気がする。

    • 腐っても芸大。上手く綺麗に描こうと思えば描けるはずだけど上手く綺麗に描く気がさらさらないんだろ 彼の絵がどこか癪に触るのは 日本人の幼稚さ・アホさ・薄っぺらさをあの絵柄...

      • これなーアカデミックな絵が描けても漫画絵が上手いかは別で、美大出身の漫画家が絵が下手って言われる事もあるくらいだよ。 アニメや漫画をアートにしたいって言っときながら、そ...

  • 「西洋を中心とした世界の信じられないようなハイソサエティの間で流通している概念上のアートの文脈に日本のアニメや漫画といったオタクカルチャーのスタイルもアートであると認...

  • 過去のアート作品は引用されればされるほどその歴史的価値が高まるけど 俺がアートにしてやるというスタンスだとその主従関係が逆になるんだよね アートになってないものを利用して...

  • このエントリを読んで、なんだ?村上隆は宅八郎の逆張りか?宅八郎は良くも悪くもオタクの負のイメージを身にまとったが、村上隆は自分が汚れることなくオタクを名乗ったのか?宮...

  • 村上隆が日本の現代美術は世界に通じないとかTwitterでイキってた頃に田中功起がヴェネチア・ビエンナーレで特別賞取って、 別にオタクアートとかの文脈じゃなくても日本の現代美術は...

  • 浮世絵が西欧に評価されたのは当時の西欧画家達が自分達の表現とは全く違う表現に出会ったからである。アートマーケットに評価された訳ではない。同じように日本の漫画やアニメは...

    • 今でもそうだよね。エロゲが流行った時、日本の絵って凄いじゃんと思ったけど、エロゲ以上はならなかった。 ソシャゲは絵師は買い叩かれてるけど、アニメ絵の価値は高めたかもね

  • じゃなんで神戸アニメストリートのロゴを止めさせようとしたの?ホントにオタクでオタクカルチャーに理解あったらこれがオリジナルそれはパクリって主張するのも恥ずかしいくらい...

  • 大半の人はある程度理解した上で嫌悪してると思うんだけどもw

  • 真に芸術的なものというのはそれぞれの人の心の中にあり、そこに「自由な精神の発露」があれば芸術たりうる。俺はそう強く思っている。 芸術の枠なんか拡張しなくても触れた人がそ...

  • 村上隆には増田やべー奴番付のストーカー被害のイメージしかないから 同情することはあっても嫌いにはならんかったやで😟

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