2022-11-06

ぼく勉ではなく漫画でのパラレルストーリーが悪い

https://anond.hatelabo.jp/20221105115632

ぼく勉と五等分、かぐや様とではクオリティに差があるのだからパラレルストーリーが悪いのではなくぼく勉が悪いのだという説が散見される。

これはぼく勉の話がつまらなかったから盛り下がったのだという趣旨で一理あるように見える。

しかしあえてぼく勉ではなくパラレルストーリー自体が悪いのだと私は主張する。

まずメディアミックスであるがぼく勉より単行本売り上げが低かったゆらぎ荘の幽奈さんですらゲーム化している。

単に人気が低いというだけではゲームより遥かにコストが低いボイスドラマが打ち切られる理由にはならないだろう。

またそもそもジャンプで2年以上連載していた作家に対してお前がうまく出来なかったから悪い、もっとうまくやれたはずだと言うこと自体傲慢まりないと一蹴しても良いだろう。

そもそもの話として、ぼく勉に話の良さは求められていたのだろうか。

ぼく勉は元々1話完結を繰り返す構成であり、長編と言われるものでも4話程度の連続した話しかない。その中ですら粗が目立った。

そして本編終盤の強引さを鑑みればその後のパラレルストーリーの出来についても推して知るべしであったが、そのような中でも多くのファンパラレルストーリーを歓迎していた。

同じ作者が描くのだから、話のクオリティが急に上がるわけがないのは誰しもがわかっていたはずだ。

まりぼく勉は話の良さなど期待されていなかった。強引でもいいか自分の好きなキャラの思いが成就することだけがまれていたのであり、実際にそれは叶った。

読者の求めていたことを叶えて、それでも盛り下がってしまったのだからこれはぼく勉が悪いわけではないだろう。

まとめると

ぼく勉に話の良さを期待していたファンなどほとんどいなかったのだから、話の出来が悪かったから盛り下がったのだという主張は失当である

となる。

ぼく勉はキャラの可愛さで人気を獲得し、長編の話作りが下手であることもわかった上でパラレルストーリーが歓迎されていたのだからファンが望んでいたのもキャラの可愛さだけのはずだ。話の出来の良し悪しは関係ない。

作者は今まで通りキャラの可愛さを引き出していたのだから、十分にうまくやったと言えるだろう。(理珠ルートキャラが出なかったのでまあうん)

もっともこれはぼく勉は話を期待されていない漫画から、話の出来が悪いのが悪いという批判は成り立たないということに過ぎず、話を期待されている漫画であれば話が良ければ受け入れられたのかという課題が残る。

そこでぼく勉が仮にストーリー面も期待されていたもの仮定して、以下にパラレルストーリー自体問題点を上げていくことにする。

必然的な読者の減少

パラレルストーリー問題点はまず読者が減っていく点にある。

読者が自分推しキャラが終わった時点で満足して読まなくなることは想像に難くなく、読者が減るのも当然である

ぼく勉の場合、頭3つほど抜けた人気のあった真冬ヒロインであった最後ルートですら大した盛り上がりを見せず(事実単行本売り上げが他より上回っているわけでもない)、最終回でもトレンド入りすらしなかった。

トレンド入り自体ジャンプ打ち切りになるレベル漫画(例:レッドフード)でもすることがあるものであり決して高いハードルではない。アニメ化していない作品ですら円満終了なら最終回トレンド入りは定番となっているので、ジャンプ連載作品ではむしろしないほうが珍しいと言って良いだろう。

読者が減少するということはすなわち作品が連載中であるにも関わらず、話が進むごとにどんどん盛り上がりが減っていくということになり、活気の減った漫画は余計に見向きがされなくなるという悪循環を生んでしまう。これはぼく勉に限った問題ではなく普遍的課題だろう。

作品内容が語られなくなる

他に読者が作品を語らなくなるという問題もある。

五等分の花嫁かぐや様では作中の描写がどうだ、ここの描写がああだと言った考察が盛り上がっていたが、ぼく勉はパラレルストーリーが始まった時点でこれまでの描写が語られることがほぼなくなり、考察ブログ更新を停止することが目立った。

これはパラレルストーリーが本編の描写連続するものでない以上、何がきっかけで彼を好きになったのか、何がきっかけで彼女を好きになったのか。そういったことを本編の描写から考察することが出来ないのだから当然だろう。したところで意味は無い。話を期待されていたのであれば、なおのこと虚しくなるだろう。

個別ルートは本編の描写と繋がっていない。であれば推しキャラを持つファンは本編の描写を語ることが虚しくなるだろう。それが個別ルートまでの間にあった出来事なのかどうかわからないのだから

全く語らないことはないだろうが、以前までと同じ熱を持って語ることは出来ない。同じキャラを推すファン同士であれば個別ルート話題で盛り上がれるだろうが、違うキャラを推すファンとはそれで盛り上がることは難しい。無意識にどこかで俺の好きなキャラルートではその出来事はなかったという冷めた目線が生まれしまう。

よって違うキャラ推しとは思い出の共有が出来ないのだ。

SNS時代の今、語られなくなることは作品にとって致命的であるパラレルストーリー二次創作需要の先食いですらなく、ファン交流の土壌ごと奪っていることに等しい。

これは恋と嘘のように最初からマルチエンドにすると決めていた作品であれば回避できる問題ではあるが、現実的には難しいだろう。週間少年漫画誌で人気と伏線を両立させることは困難であり、ぼく勉のように途中でなんとなく決まることが大半のはずだ。

ファンを満足させることの困難さ

最後にたとえパラレルストーリーをやったとしても各キャラファンを満足させることは難しいという最大の問題がある。

パラレルストーリーに対する各キャラファンの主な反応はこうだ。

  • うるか派 とにかく発表方法やその他の扱いにキレている。※
  • 理珠派 ほぼ関城さんがメインで理珠がサブ扱いなので不満の声が目立つ。
  • 文乃派 話自体にはそれなりに満足しているがパラレルがなければ本来は文乃が勝っていたはずだという幻想に縋って不満が渦巻いている。
  • あすみ派 とりあえずやってくれたことに満足している。
  • 真冬派 圧倒的な人気なのになぜか先生と生徒じゃなく先生先生恋愛になるという扱いにキレている。

※参考

作者に嫌われているキャラクターを好きになってつらい

https://anond.hatelabo.jp/20200724234926

追記】作者に嫌われているキャラを好きになったら特典でも冷遇されてつらい

https://anond.hatelabo.jp/20210308181806

替え歌】作者に嫌われている。

https://nicovideo.jp/watch/sm40451991

このように手放しに満足しているのはあすみ派だけだ。

なぜ満足しているのかといえば、登場が遅く人気も低いためエンドヒロインになる芽が一切なかったのに、奇跡的にヒロインになる姿を見ることが出来たから満足しているのだ。

この点真冬も同じく設定的にエンドヒロインになる芽が一切なかった。ではなぜこちらはキレているのかと言えば、パラレルストーリーをやること自体真冬の圧倒的な人気を背景に生まれものだと信じられているかである

まりパラレルストーリーをやるきっかけが真冬の人気によるものなのだから、当然話のクオリティも素晴らしいものであるはずだという期待があったのに、その期待が裏切られたから不満を持たれているのだ。

このように元々芽がなかったキャラルートをやったにも関わらず、そのルートの出来が良くなければ恨まれしまう。

芽があったキャラであれば、話が良くても悪くても本来は勝っていたはずなのに二番手以降に追いやられたという逆恨みをされてしまう。

元々なければ諦めがつくが、中途半端に与えられると足りないものが目についてしまう。半端な救済は逆に恨みを買ってしまうという、社会問題でもよく見られる現象と同じことだ。

結局のところ満足ができるのは元々芽のなかった不人気キャラファンだけであり、人気キャラファンは余計に不満を持ってしまうのである

本来ルートがなければないであもので満足できる。五等分の花嫁を見ればわかりやすい。

一花のあの思い出だけは嘘じゃないんだよの泣き顔で切なくなれるし、二乃のあんたを好きって言ったのよという告白で痺れることができる。三玖の私は私を好きになれたんだという独白に感動できるし、四葉が私の分の仕事をお願いしますという台詞をようやく言えたことも胸を打つ。五月の私は私の意思で母を目指しますという宣言が嫌いな人間はいないだろう。

(各キャラ台詞は筆者の趣味ピックアップしたものであり、あくまで例である

結ばれようが結ばれなかろうがそれぞれのキャラに素晴らしいシーンは存在していて、通常キャラファンはいいところを見つけて満足できる。満足出来ないファンもこういうルートがあればよかったと理想を追える。

パラレルがある場合それは出来ない。各キャラファンが見たいのは結ばれるところであり個別ルートである

すなわちそれまでの話にいくらいいシーンがあったとしても、個別ルートの出来が良くなければ満足されないのである

そして一度公式提示された以上、それは違うこれが正しいと自分理想を追える気概のあるファンは少ないから、ファン活動ハードルパラレルの有無で段違いになってしまう。

自分の好きなキャラの思いが成就する場面をやるのであれば、誰だって自分の中の理想の形で成就することを想像する。当たり前だが多くの場合理想通りに行くはずはない。

漫画である以上、あまり長い話数は出来ないのだからなおさらだ

普通であれば期待外れに終わるのは一度だけ、一人のキャラファンだけだが、ぼく勉のようにした場合ヒロインの数だけ期待外れに終わることになる。

作者に対する失望が増えるほど作品に対する興味も冷めていく。当たり前のことであってぼく勉に限った話ではない。

失望されなければいいというのは一つの理想ではあるが、それは全教科満点取れば入試に受かると言っているようなものだろう。

まとめ

仮に話のクオリティが期待されていたとしても、パラレルストーリーを連載する以上

というパラレル自体問題点があり、仮に万が一クオリティが高かったとしても盛り下がっていたと考えられる。

よってぼく勉が特別うまくやれなかったのではなく、パラレルストーリーという形式そもそも悪いのだ。

なおパラレルストーリーという形式をぼく勉が選んだ事自体が悪いというのはそのとおりだろう。

ただその場合批判は、作品ではなくそれを選んだ作者に及ぶべきではないかと考える。


追記

ぼく勉のチャレンジ自体評価したい

マルチエンドをやろうとしたこと評価したい

これがまさにパラレルストーリーをやったことの弊害ではないだろうか。

作品の内容を評価される手前、パラレルをやった意義で評価されてしまうのだ。

この話題がぼく勉である意味は何もない。内容について踏み込まれいか作品理解を深めることは出来ない。

パラレル自体で盛り下がり、内容についても理解が深まらいから盛り下がったのだから悪かったのだろうとみなされる。

かにぼく勉は話自体も悪かったが、仮に良かったとしても内容について踏み込まれないなら同じ結果になるのではないだろうか。

記事への反応 -
  • 先日かぐや様は告らせたいが最終回を迎えた。 これをもって一時代を築いた貧乏な学生が主人公のラブコメ(貧乏ラブコメ)3作品※が全て完結を迎えたことになる。 ※かぐや様は告ら...

    • https://anond.hatelabo.jp/20221105115632 ぼく勉と五等分、かぐや様とではクオリティに差があるのだから、パラレルストーリーが悪いのではなくぼく勉が悪いのだという説が散見される。 これは...

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      • 悪いのは発行部数が落ちるまで長期連載を続けるジャンプだろ そもそもパラレルストーリーで話題作りしなければあれ以上連載することもできなかっただろ

      • 五等分の花嫁もキャラがかわいいというだけで内容は特に無くね?

      • パラレルストーリーとかマルチエンディングをストーリーに組み込む前提条件に 主人公の動きを視聴者側が制御し行動を決定できる ってことがあると思う どのルートに入るかという所...

      • 元増田も言ってたけどパラレルのせいで過程が無意味化するってのは言われるまで気づかんかった    数年かけてアドベンチャーゲームやってきたのに最後の最後で格ゲーっぽいキャラ...

      • anond:20221106152116 この増田読んでずっともやもやしてたんだけどようやくわかった。 この増田はまあ確かに合ってるところもあるけど、根本的にファンを数字でしか見てなくて質を無視し...

    • 単にぼく勉がつまらなかったから人気落ちただけじゃね

      • ヒロイン格差がすごかったもんな なぜか途中で先生がメインヒロインなのかと思うような展開になったり 行き当たりばったりすぎて、次回作はちゃんと大筋を作ってくださいねとしか言...

    • でも、女は下方婚してませんよね。

    • 「貧乏ラブコメ三国時代は終わったものの、その後もカッコウの許嫁や甘神さんちの縁結びなど貧乏ラブコメの灯火は絶えることなく続いている。」 どっちも週刊少年マガジン…… セン...

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    • ここまで貧乏ラブコメ3作品の辿ってきた軌跡を追った。どれも押しも押されもせぬ人気作品と言って良いだろう。 かぐや シリーズ累計発行部数は1900万部(Wikipediaによるとうち100万...

    • ぼく勉に関してはパラレルが悪いんじゃない…各エピソードの出来が悪すぎたのが悪いんだ… 特に文系。文系メインじゃなく脇キャラメインの話とか、誰も求めてなかったねん

      • 最近、作者のYouTubeチャンネルで理系が赤ちゃん抱いてる絵を描いてるの見た 作者的には褐色も文系もサブでメインは理系だったんだなと

    • ラブコメに関して熱く語っていた増田が先月いた( https://anond.hatelabo.jp/20221105115632 )けど、ここで語られている3作ほどの新規性や新機軸があるわけでもないので正直ここまではてなで上...

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