個人的に体験したブラックバイトNo.1。大手ゲーセンでのアルバイトでのお話。
最初に勤めていたゲーセンの同僚がここで働いていたという話を聞き、それを頼りに応募した。
研修はまぁ普通だったと思う。私はメダルゲームコーナー担当になった。
フリーターになって初めて同世代が多い職場に来たということもあり、契約書を書きに来た日は皆歓迎してくれた。
ここならしばらくやっていけそうだし、正社員登用もあるから正社員もアリかな。と考えていた。
アイツがくるまでは。
正式に配属されてから数日後、副店長と初めて会った。挨拶をした所、こちらの顔をじっと見た後何も言わず自分のデスクへと向かっていった。
私の働いていたゲーセンには大きく分けて2つのコーナーがあり、クレーンゲームコーナーとメダルゲームコーナーの2つに分かれていた。
副店長はクレーンゲームコーナーを担当しており、メダルゲームコーナーで働く人間のことは下に見ていた。
それだけではない、副店長は何よりも自分の仕事を優先する人間であり、客に呼ばれても他のクレーン担当のスタッフに対応させ
また、クレーンゲームコーナーは自分の領域なので自分のお気に入りのスタッフだけで構成したいという思いがあったようだ。
私が入社した翌月、新たにクレーンゲームコーナーに配属された女性がいたが
よほど気に入らなかったのか、スタッフ同士での連絡に使うインカムの使い方を教えてもらおうとしたら目の前にいるにもかかわらず
インカム越しで大声で怒鳴られその女性だけならず全スタッフの耳にダメージを与えた。
そういったパワハラめいた行為が繰り返された結果、女性は治りかけていた精神疾患が再発し退職を余儀なくされた。
こんなのが副店長でいいのか、と思われるかもしれないが、スタッフ間ではなぜか一定の支持を集めていた。
副店長は女性であるが、人をひきつけるカリスマ性がある。また良い言い方をすればパワーに溢れている。
そんな姿に惹かれるのだろう。スタッフ内で1番の常識人とも言える人でさえ辞めた女性に対して"もう少し我慢してくれればね"と漏らしていた。
そういう私はどうなのかというと、基本的に相手にされなかった。
面接をしたのがメダルゲーム担当の方だった影響もあるのだろう。クレーンゲームコーナーには1、2回しか入ったことがなく
ほとんどメダルゲームコーナーにいたため勤務中副店長と顔を合わせる機会がほとんどなかったのだ。
2年目になり、状況が変わった。
副店長はこのリーダーを特に気に入っていた為、しばらくの間職場はかなり荒れていた。
次に、私がカードゲーム大会の運営、管理を任されることになった。
リーダーの退職により、前述した常識人のスタッフがリーダーになることになった。
このスタッフが今までカードゲーム大会の運営、管理を行っていた為
リーダーになるとこの業務が出来なくなり、スタッフ内で1番カードゲームの知識があると言われていた
私にバトンが回ってきたのだ。(実際、休日はよく同僚と遊んだりしていた。)
信頼している同僚からの頼みでもあるため、快く引き受けた。
だが、この仕事を引き受けたことが退職へのきっかけへとなった。
まず、2年目になりカードゲームとメダルゲームの売り上げがかなり落ち込んでいた。
その責任を背負うのは私達ではないと思うが、メダルゲームコーナー担当のスタッフへの風当たりは強くなり
両替機トラブルなど、社員でないと対応できないトラブルの対応をお願いしても来ない。ということが起こるようになった。
また、カードゲームの大会の日程について店長に相談すると「もう大会やめない?」と言われるようになった。
こっちとしてはいつやめても別に構わないのだが、自分に決定権があるわけじゃない。
「決定権は自分にはないので。」と告げて日程の調整を続けた。
冗談に聞こえるかもしれない。しかし実害が出ているのでここでは新興宗教として扱う。
今まで仲良くしていたある同僚(以下A)は、副店長の事を尊敬していた。
その尊敬の念が暴走し、「私はN(副店長の名前)教を作る。」「私、N教の信者だから」と口走るようになった。
自分はもちろん、周りも冗談で言っているものと思っていた、が、数週間後にその本気度を知らしめることになる。
突然、同僚が退職すると言い出した。普段から副店長に嫌われていた同僚だ。
帰り道が一緒なので、建物からある程度離れたところで理由を聞いてみた。
すると、1つミスしたことで副店長とAから休憩の時間を割かれてまでずっと説教されていたというのだ。
それだけでは終わらず、それから退職を決める日まで毎日副店長とAから怒鳴られ続け、
実際、Aの立ち振る舞いはN教を作ると言った日からがらりとかわっていた。
副店長の真似をし、常に副店長といたいから持ち場を離れ副店長がいる事務所で仕事をしていた。
Aはメダルゲームコーナーの担当もしていたが、私と一緒にメダルゲームコーナーを担当する日は
Aがメダルゲームコーナーのフロアで接客をする事はほとんどなかった。
開店準備を終えたら即事務所に戻り、副店長と話をしながらパソコンでなにやら作業をしてる。
お客の対応もあるので目の届かないところもあるだろう。
Aは時折フロアに戻っては「~が汚れているんだけど。」と文句だけを言いに来る。
埒があかないとわかると舌打ちしながらまた事務所へと戻っていく。
Aの気分の問題だろうと思っていたが、事態は予想より深刻だった。
ある日、翌日の大会の準備を行っていたところその翌日が休みである事に気づいた。
大会の進行自体は翌日担当できるスタッフがAを含め複数いたため
準備だけを行い、社員の人に明日が休みなのと大会の進行を他の人にお願いして欲しい旨を伝えてその日は帰宅した。
何の用かと思い行ってみると壁際に追いやられ、店長、副店長、社員、Aと4人に囲まれる。
「何で昨日大会があるのにこなかったの?」
休みだから来ないのは当然だ。「休みだったので、準備だけして○○さん(引継いだ社員)にお願いしてました。」
すると、「大会やるなら休みでも来るのが普通なんじゃないの!?」と大声で怒鳴る副店長。
周りも同調し全ての責任を私に押し付けてくる。別に大会が開催できなかったわけではない。準備もしていたので。
ただ、大会担当の私が公休だから休んでいたのに大会の進行をしにこなかったという理不尽な理由だった。
この時よく心が壊れなかったなと思う。ただ思っていたのは"もうこんなところ辞めよう"という一身だった。
この出来事がきっかけで、全ての大会は終了。私は「大会の日にサボった人間」という謂れのない濡れ衣を着せられたまま
しばらくして、今度は常識人のリーダーが退職する。と言い出した。
お互い時間があったので、食事に誘ってみたところ快く来てくれて、
一緒に信頼できる数少ない後輩も同席してご飯を食べに行くことになった。
「あの人が全てを狂わせている。これ以上ここにいても腐ってしまうだけだ」とのことだった。
せっかくなので、先日自分が受けた大会開催事件のことも伝えた。絶句していた。
一緒にいた後輩もややN教よりの人間だったが、リーダーと私の話を聞いて目が覚めたようだ。
「これからは周りに注意してみます。」とまだ働く意思は見せていた。
退職の意思を伝えてからも職場の対応のひどさはかわらずだった。
引き止められたものの、この時も転職するという理由で拒否した。嘘ではないが。
しかし、これまで残っていた有給の消化は認められず、最後の最後まで搾り取ろうと
お人よしが過ぎる性格が災いし、そのまま最後まで働き制服はクリーニングして返した。
その後、異端者が居なくなった職場では異端者を作り上げることが横行したという。
後輩がその異端者として作り上げられ、行き場を失い退職したと連絡をもらった。
しかし異端者狩りをやりすぎたのだろう。求人を出しても人が来ず、
-時は流れ現在、私は実家を離れ他県で正社員の仕事をしている。
当時親交があった同僚や後輩とも今でも連絡を取り合っていて
地元に戻った時は一緒にご飯を食べに行ったり遊んだりしている。
肝心のゲーセンはというと、人手不足が深刻化しメダルゲームコーナーが閉店した。
副店長にとっては喜ばしいことだろう、きっと。
しかしそんな副店長やN教信者と顔を合わせることはもうないかもしれない。
大型商業施設の中にあるゲーセンなので、寄ったついでに覗きに行くが