ヴィジュアルロック=「社会を否定するため、あらゆるメッセージを拒否(現実からの逃避)」
ということで、形は違えど「社会的な影響を受け、それに反発するためのムーブメント」だったように思うのです。
以下、もう少し詳しく。
まずパンクロックがなんぞやというと、60年代後半から80年代に入るまでにかけてのイギリスの経済停滞による社会の鬱屈感と、同時期に複雑化しすぎたロックミュージック、両方への反発として生まれた若者中心のカウンターカルチャーの亜種であり、それまでに流行していたファッションに対しても反発する個性的なスタイルをとっていたことも特徴のひとつ。
対してヴィジュアル系は、特に社会に対するメッセージなどはなかったが、歌舞伎役者ばりの白塗り&奇抜なメイク、カラフルな頭髪、中世の雰囲気を取り入れたり、ハードロックのバンドマンが着ているものを参考に、さらに派手に彩った衣装などとにかく凝った外見と各々独自の世界観をもつことが特徴であり、音楽性については特に定まった様式はなかった。(強いて言えばバンドサウンドが基本にあり、ハードロックをベースとしているというのが共通項かもしれない)
で、ここから本論なんだけど、ヴィジュアル系には「メッセージ、主義、主張」ってのは一切なかった。(一部例外を除く)
あるのは、自分たちのビジュアルはこうだ!っていう世界観だけ。
これって実は、
メッセージを全く持たないものを信仰する=メッセージを押し付けようとする社会を全否定する=パンク的
当時の社会情勢としては、まず80年代後半にX JAPANが登場。時はバブル絶頂期。景気の良さも手伝ってか沢山のフォロワーが誕生する。(ちなみにヴィジュアル系の起こり自体は70年代後半までさかのぼれるが割愛。)
次に90年代に入りバブル崩壊。この時点でも世の中はそこまで暗い雰囲気でもなく、ヴィジュアル系は徐々にその勢力を大きくする。後に成功するバンドたちはこのあたりで結成されたケースが多い。
そして90年代中盤。いわずもがな、就職氷河期のスタート。不景気による世の中の停滞、鬱屈した雰囲気から逃れたくて、若者は縋るものを求めた。そこに、今までの価値観と全く異なるものを体現したカルチャーが表舞台に現れた。それがヴィジュアル系だった。メジャーにも多くのヴィジュアル系バンドが台頭し、大きなブームになった。それに伴い一層先鋭化した個性的なバンドが現れたりもした。が、所詮は一過性のブームであり、そう長くは続かなかった。
90年代後半。勝ち残ったバンドは僅かだった。そしてその代表格であるのがGLAY。だがこのGLAYこそ、じつは本当の意味でのヴィジュアル系ではないと筆者は考える。なぜか。彼らは「メッセージをもったバンド」だからである。
もちろんそれは社会や体制を批判するようなメッセージではない。恋人や友人に語りかけるような、いわゆる普通のポップスやロックの世界観の上に、ヴィジュアル系の要素を軽く味付けしたしたバンド。それがGLAYであり、その普通さ故にブレイクし生き残ってこれた。
皮肉にもヴィジュアル系ブームで最も恩恵を受けたバンドがじつはヴィジュアル系ではなかったことが、音楽業界では王道的な価値をもったものが生き残るということを証明したのではないかと思う。(GLAYが最も影響をを受けたというBOOWYもビジュアル系ではなくロックバンドである)
ここから更に話は飛躍するが、このGLAYが最もブレイクしたのと同時期に、ヴィジュアル系のような独特の世界観を持ち、GLAYのような身近なメッセージで大ブレイクしたものあある。ご存知「新世紀エヴァンゲリオン」である。
既存のロボットアニメからは大きく飛躍した独特のヴィジュアル、言い回し、中身があるようで無い、複雑でわけがわからないけど「なんかすごい」と感じられる世界観。しかし実際テレビシリーズの中で伝えられたのは、視聴者同様の思春期によくある悩みを抱えた主人公・碇シンジの成長物語という、とてもシンプルな内容であったことが、この90年代後半の「何に希望を見出したらよいかわからない世代」に対するヒットの要因であったのではないかと考えられる。(細かくはそれ以外にもたくさんあるんだろうけど専門外なので割愛)
さて、時代は回って2016年。この時代を代表する音楽文化とはなんだろう?ぼんやりとした括りではあるが、それは「アイドル」ではないかと筆者は思う。
AKB,perfume,ジャニーズ、地下アイドルetc、、、それぞれにスタイルは異なるが「メンバー個人に対して熱烈なファンがいる」「楽器の演奏ではなく歌とダンス、パフォーマンスが主体である」「ライブ以外に活動する場所がある」というあたりが共通項と言える。
そしてアイドルは、社会に対する反抗者への、「癒やしと共感」なのではないだろうか。
我々は失われた20年の間に大きく傷ついた。後退した。その傷を埋めるために「つらいのすごくわかるよ」「一緒にがんばろう」というメッセージを発したのがアイドルたちだった。それは、理由もわからず暗い時代を過ごすことになったゼロ年世代にとってとても甘美なものだったに違いない。
アイドルに求められる像というのも、昔は「憧れの存在」であったものが、いまやバラエティ番組どころか街角の中まで進出し、アイドルという唯一の存在でありながら「身近なお兄ちゃん、妹」のような共感を得られる人がヒットしているのもそれを後押ししている。
さてここで気になるのは大ヒット中の「君の名は。」である。これもエヴァの考察がヴィジュアル系のそれであったように、アイドルの「癒やしと共感」というキーワードで紐解くことができるだろうか。
そろそろ書くのめんどくさくなったので終了。
誰か気が向いたら続き書いてくれると嬉しいです。
その通りだと思うよ。 V系は「社会への反抗」を体現したジャンルなんだけど、歌詞のレベルでは特に「社会への反抗」をわかりやすく表明したりはしていない。 その理由だけど、美し...