2020-04-22

エンタメ自粛について考えた結果心が折れてしまった件

エンタメ業界で働いている。

一部の熱狂的なお客様のいるジャンルの娯楽を作っている。 

4月中頃からリモートワークに切り替わり、今は自宅で日々を過ごしている。

先行きが見えないので当然で、出来る仕事は限られている。

一体どこから自分給料が捻出されているのか不思議で仕方ない。

こんな状況で生活が長く保つ訳がない。

 

SNSで、

エンタメ業界補償を!」

文化を維持するために救済を!」

という有難い声を見掛ける。

自分も、自粛まりかけ(休校要請あたりの頃)は、

「なんでマラソンはやってるのにエンタメ自粛なんだ!?

オリンピック開催の為の生贄じゃねーか!」

政治家が会食してんじゃねーよ!」

「#自粛給付はセットだろ!(例のタグ)」

などと憤っていた。

 

会社の問い合わせ電話口で「何故この状況でイベントを中止しないんだ」と一銭も落としていない奴から言われたときは、「じゃあお前がその分支払ってしてくれるのか?」と言いたかった。

結果的にそのイベントは中止になり、当然赤字となった。

散々叩かれていたK-1イベントもとても他人事には思えず、悪者のように取り上げていた報道には本気で殺意が湧いた。

「こんな時だからこそ無料配信します!」という大手エンタメ企業の波に焦りを感じていた。そんな体力はうちにはなかった。

このままでは経済的に死んでしまう。

そうこうしているうち、ウイルス封じ込めは失敗し、ライブエンタメ以外の自粛も始まり、今に至る。

憤っていた頃には分からなかった深刻な状況を理解しはじめ、「自粛したこと意味があった」と分かったことでやや気持ちが救われた。

ご存知の通り、エンタメ特にライブエンターテインメント業界は、いま瀬戸際状態だ。

弊社の名前エゴサしたところ「●●は大丈夫だと思うけど…」と言われていたが、そんなことは全然ない。貴方推しが散々世話になっているあの会社この会社も、明日潰れてもおかしくはない。大手の状況は知らんけど。その大手も雇っている、個人仕事を受けている大勢の裏方スタッフは、更にままならない状況下だと思う。

では、これからエンタメ業界はどうしていくべきか?

どうしたらクリエイタースタッフキャスト関係会社社員派遣アルバイト生活していけるのか?

三密を避けながら、これまで通りエンタメ本業として続けていけるのか?

 

恐らく、今後ライブエンタメから配信に乗り出す会社は増えていくだろう。

この状況でも(この状況だからこそ、の方が適切だろうか)Netflixは売上が上がっていて、そのほか配信界隈は好調のようだ。これから音楽ライブは勿論、お笑い声優ミュージカルダンスコスプレといった専門的なライブエンタメジャンルに特化したサービスが本格的に参入してくると予想している。家に居ながら提供できるもの模索していく流れにならざるを得ないのは事実だ。

 

しかライブから配信に切り替えるといっても、ドラマの収録も出来ず、ワイドショーリモート出演のこの状況では、以前と同じクオリティを保ったコンテンツを配給していくのは困難だ。ヘアメイクスタイリストカメラマン、照明、音響編集作家ディレクター…そういった本来多くのプロの手で作られていたものが、現状の急場しのぎでやっているものと同等のクオリティであるはずがない。

 

そして「餅は餅屋」というように、既に何年も配信の実績があり生業としているプロが既に居る。これだけ溢れている配信コンテンツの中で人気者になるには、そのための研究や才能といった何かしらのチカラが必要なはずだ。

配信は気軽」かもしれないが、「気軽に配信プロにはなれない」のではないかと思う。配信主はこれまでの生業での人気という貯金を切り崩していくことになるだろう。

 

また、キャストクリエイター独自に発信することは可能だが、裏方スタッフには仕事が回らない。稼働出来て、ヘアメイクスタッフスタイリストくらいだろうか、それにしても三密の環境は避けられないだろう。劇場ライブハウスで働く技術スタッフに関連させることは更に難しい。無観客イベントをするにしても、スタッフキャストは三密不可避だし、何より採算が合わないだろう。

 

最近話題に上がる再放送については、作品権利を持ってる会社には利益が入る可能性があるが、裏方スタッフにまでロイヤリティが入るという契約は聞いたことがない。

クラウドファンディングで有志から資金を募るにしても、不可抗力によるクオリティ限界が知れてしまっている状況では、これはもはや善意募金のようなもので、健全商売とは言い難く、このコロナショックの不景気最中では長続きしないと思っている。打撃を受けているのは何もエンタメ業界だけでなく、これまで応援してくれていたファン生活自体が危ぶまれている状況なのだから

公的補填なしに、これまで通りのエンタメの存続は難しいだろう。

現在エンタメ補償現実的ではないことを理解した上での、自分結論だ。

 

じゃあ、実際にエンタメ税金補償するとなった場合

何が基準となるのか?

文化価値優先順位妥当補償金額。これらを定義するのはとても難しいと思う。

 

エンタメ業界に限った話ではないが、天才、凡人、善人、クソ野郎、いろんな人がいて、才能がある者が必ずしも人格者ではなく、どうしようもない人間ほど人気があったりと、労力を掛けた分の報酬があるわけではない。

「この人は素晴らしい作品を創る」と思うこともいれば、「しょーもない作品創りやがって」と思うこともあった。

これはあくま自分感想であって、正反対感想を持つ人もいる。

人の数だけ感性があり、エンタメに何を求めるかは人それぞれ。

から文化価値本来平等であるべきだと思っている。

 

…という、自由度が高く将来性が未知数というエンタメ特性は、公的保障ととても相性が悪いと感じる。

もちろんエンタメが全くない社会ヤバい

でも、正直、逼迫しているこの状況で、これまで存在していたエンタメ全部が必要か?と言われると、そうじゃないんじゃないか

「この状況を乗り越えられない小規模エンタメは淘汰されるほかない」というのは、信条には反するが、そうかもなという気持ちもある。

アイドルはジャ●ーズ、お笑いは吉●、音楽は●●レコードアニメスタジオ●●、演劇劇団●●…というように、好き嫌いはあれど大多数の人が知っている国民存在社会エンタメを担うのはそれなりの体力のある会社に託されることなのかもしれない。

 

 

そして。そして何より。

 

現在進行形で、危険に晒され身を挺して社会を支える人がいる。

安全なところで文化的な活動をする人と、危険地帯生活を支えている人と、どちらがお金をもらうべきなのかは明白だ。

いま、限られたお金社会を成り立たせるために今最前線で戦っている人は、十分な恩恵を受けられているのだろうか?

 

病院患者を救おうとしてる人

支援必要なひとを預かってくれる人

生活必需品を届けてくれるお店や宅配の人

社会インフラを保つために働いてる人

困った人の相談対応をしている人

 

この人たちとエンタメ作ってる自分たちが、並び立って「お金をください」と言えるのか。そして、今後国から支えてもらうだけの社会役割を果たすことができるのか。

 

最後自分が考えるきっかけになったツイートを貼らせて頂く。

(すみません、埋め込み方が分からないのでURLです)

https://twitter.com/Pkn2zVN6iC1DHmX/status/1250599556472958976?s=20

 

知恵や技術物資での支援が難しい状況下、いま苦しい人の為になるものは何だろう。

絵? 歌? アイドル? Nintendo Switch? 総理大臣が自宅で寛ぐ映像

 

誰にとっても有難いのはやっぱりお金だ。あなたはこれだけ価値のある仕事をしてくれたと一番わかりやす可視化されるものだ。経済的だけじゃなく、精神的にも救われる。

 

昨日スーパースタッフ急募張り紙の時給を見て、混雑したレジをさばく店員さんの姿に「割に合わない」と感じてしまった。

この労働を「感謝気持ち」で済ませてはいけないのではないか

見合った対価を払わず人の良心に付け込んでいるだけではないのか。

 

もし自分最前線で働いてる立場だったら、安全なところで自分のやりたいことやってる文化人が国から補償が貰えるってなったら、「その金俺に回せよ!」ってブチ切れると思う。

 

これまでお世話になってきたエンタメ業界が辛い中踏ん張っている中、水を差すようなことを言って本当に申し訳ない。

自分自身、エンタメ業界しか経験せず年を取りつぶしが効かず、生涯独身のつもりだったので結婚の予定もなく、正直これから生活には不安しかない。

 

でも、いまは「エンタメ補償を!」と言う気持ちになれない。

 

たくさんの人に感動を届けたい。そう考えて就職して、作品を作った。

でも、本当にこれからも、必要なのだろうか。求められている活動なのだろうか。

自分たちの経済的事情ばかりを気にして、エンタメという文化を笠に着て、安全地帯に留まっているだけではないだろうか。

 

今一番辛い立場の人が元の生活に戻れたと感じる日まで、この気持ちは続く気がする。

その日まで自分エンタメを続けているだろうか。

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