2023-08-06

在りし日のメイルゲーム(主に遊演体)を説明してみる

メイルゲームを知らない人に、辞典的な通り一遍説明ではなくその魅力を説明するために書いてみた文章なんだが、

知らない人にわかやすいか、興味を持ってもらえそうか、みなの意見を聞いてみたい。

メイルゲームPBM)とは90年代アナログゲーマーの間で人気になった、郵便を使った物語形式大人数参加RPG一種である。最盛期には1ゲームで5000人以上の参加者を集めた。

メイルゲーム主催が用意した世界プレイヤー自分分身になるキャラクター登録するところまではインターネット上のオンラインMMOに似ているが、メイルゲームでは当然リアルタイムではなく、プレイヤーは1か月に一回の締め切りまでに自分キャラクターの行動を所定の行動計画書に記述して運営会社に送ると、運営会社ゲームマスターたちは各PCの行動同士を突き合わせ、行動結果を判定して、ゲーム中でのPCの実際の行動と生じた事件小説形式リアクションと呼ばれる)にして各プレイヤーに返送する。

これを一般的12回(12ターン)繰り返して1年で一つのストーリーが終了するのが一般的だった。

メイルゲームの(MMO比較した)特徴としては以下の点があげられよう。

時間は拘束されないが期間が拘束される。

1ターンは通常1か月で、プレイヤーは行動結果小説を受け取ってから2週間のうちに情報を集めて仲間と行動計画相談し、締め切りまでにPCの行動を決めなければならず、かなり忙しい。とはいえイベントでもない限り時間配分は融通が利き、拘束されることはない。行動提出した後は、今度はマスター陣が2週間のうちにPCの行動判定をして、小説化して、発送する。その間、プレイヤー特にすることはないのでのんびり待つことになる。

しかし、一度参加するとゲームを中断しない限り1年間はゲーム時間を取られることになる。

キャラクターの取れる行動にシステム的な制限がない

MMOであれば、PCゲーム中で取れる行動はある程度決まっている。自由度が高いゲームでもキャラクターは事前にシステム実装されている行動しかとることはできない。

しかし、メイルゲームでは「状況や能力が許す限りで、行動用紙に書ける内容であれば」大抵の行動はとることができる。チームを組んで複雑な行動をしようとすることも、新興宗教を立ち上げようとすることも、敵の親玉を口八丁で騙して罠にかけようとすることも、地球担保に異星人からロボット兵器の購入を試みることもできる。

ただし、その行動が成功するかはマスター陣の判定次第。行動内容が目的達成にはに不十分と見なされれば失敗するし、多くのプレイヤーの行動が相互に影響を与え合うため、時に誰も想定しなかった結果になることも多い。

例えば、【興味を引けそうなよさげな事例はないか?】

このように、問題解決において他のプレイヤーとの根回しや行動の創造性がかなり影響する。

情報分散して提示される

返送される小説はそのPCか、同じグループ視点から知りえることしか書いていない。同じ場所にいて同じ事件に遭遇しても、そこに書かれる情報は大きく異なる場合もある(あるバージョンでは突然起きた正体不明事件が、別のバージョンではその内幕が詳細に書かれているなど)。

プレイヤー自分の受け取った情報を他のプレイヤーに伏せておくこともできる。が、その場合プレイヤー同士の情報交換に参加することが難しくなる。どれだけレア情報であっても、全体からは局地的な一事件情報しかない。なので、ゲーム全体の動向を知ろうと思えば情報交換に参加する必要があり、自分が受け取った情報をどこまで・誰に公開するかが重要駆け引きになる。

ゲーム必要な最低限の共有情報はプレイヤーに毎月送られる冊子に書かれているけれど、それも「真実」が書かれているとは限らない。真実を知るにはやはりいくつものバージョン収集して突き合わせるしかない。

特に参加者が多く情報戦重視の遊演体ゲームでは、1ターンに200バージョンを超える種類のリアクション小説が発行されていた。このため、2週間の「プレイ期間」には速報同人誌が発行され、情報収集プレイヤー同士の作戦会議のためのプレイヤー主催イベントが盛んに行われていた。

④全体を貫くシナリオタイムリミットがある

MMOゲーム内ではシステムアップデートでもない限り大きな変化はないが、メイルゲームでは12ターンの間に解決せねばならない問題が設定されていて、さらにそれが最初は隠されていることが多い。そうした課題は一人では解決不可能で、多くのPCの協力が必要になる。プレイヤーたちは期間内に、自分たちそれぞれの課題解決したり足を引っ張り合いながら、隠れた課題を見つけ出して集団解決することを求められる。

例えば90年の「蓬莱学園冒険!」では、巨大学園都市に新入学したPCたちが、最終ターンで「地球空洞世界」の危機と学園独立騒動解決して終わる。

わず12ターンの間にゲーム構造が変わってしまうほど状況の変化が速いことも、情報収集必要になる原因である

この「シナリオ」は予定調和的なものではなく、隠された大まかな仕掛けのようなものプレイヤーの行動次第でどんなストーリーになるかは全く変わってしまう。

なので、もしプレイヤーがこの問題解決に失敗するとバッドエンドも普通に発生する。93年の「夜桜忍法帖」では人類がほぼ絶滅阪神タイガース世界制覇、95年の「鋼鉄の虹」では対立し戦うプレイヤー所属国が両国とも第三国に攻め込まれ滅亡した。

PCゲーム社会への影響力が大きい

数千のPC相互作用するゲーム世界は一つの社会であるMMOでもプレイヤー同士の相互作用はあるが、メイルゲームはそれに比べても相互作用の強さや範囲はかなり大きい。

さらに、NPCがいる。メイルゲームNPCは「むらびと」や「モンスター」ではない。ゲーム上の重要キャラクター操作するのがプレイヤーゲームマスターかが違うだけで、PCの動向を観察し、時に主体的PCに関わろうとしたり、PCの影響で行動を変えたりする。

このため、自分の考えたアクションによってゲーム状況に大きな影響を与え、重要情報を得たPCは、数千人のプレイヤーに知られた「有名キャラクター」に成り上がることもよくある。中には総集編の表紙の中央を飾るほどの出世を遂げたPCもいた。

MMOだと(ブロントさんのような「話題になるプレイヤーはいても)ゲーム世界の行く末に影響を与えるほどのPCはまず出てこない。

Twitterもない当時ではこのレベル自己実現欲求承認欲求を煽る娯楽はなかなか無かった。

もっとも、その地位や影響力は一時的もので、1~2回的を外した行動を取ってしまうと失われる流動的なものにすぎない。しかし、それが余計に競争心や射幸心を煽ることになった。

こうした「メイルゲーム」のプレイ感覚は、今なら成田良悟ライトノベル小説(「バッカーノ!」「デュラララ!!」など)を読むとわかりやすい。実際、「バッカーノ!」は遊演体メイルゲームこうもり城へようこそ!」のサブストーリーの一つを元ネタにしている。

ホビーデータ遊演体でもこうもり城以降は③④⑤をそれほど重視していないとか、ネット88ははじめは小説リアクションじゃないってのはわかっているんだが、まあ許してほしい。

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