2022-11-10

小説 野崎まど know

氏のSF小説は二作目かな。

情報社会が実現した未来身の回りの全てから大量なデータが取られる世界でその処理を補佐する装置をほぼ全員が装着し、いやおうなく収集されるプライベートや秘匿情報は多情報に加え他人を見れる・自分を見られない(隠せる)上位と情報制限されさら他人を見られない・自分を見られる(主語がないと日本語って難しい)下位という階級制度ができあがっていた。

そんな世界でおおむね一般人の最高階級であるクラス5(大臣級が最高位の6)の主人公はありえないような情報を扱う能力を持つ…いわば"クラス9"の少女出会う。

みたいな。話。知識とは全知とはといったモノがテーマです。

知るknowと脳の同音異義語の単純なお遊びがタイトルっすね。

んー感想としては面白かった!でもあっさりだね!なんかちょっとはぐらかされた気もするぞ。

全知の果ての結末があれとリンクするってのはとても興奮した。

主人公少女にわざと情報を渡さなかったものがあったからそれをもってして全知の欠けとして引き止めるのかと思ったらそれを渡して送り出すのはそっちかぁぁぁぁ!となりました。

中盤でクラス*というキャラがでてきて謎の概念バトルが始まってですね。なんだか描写とある魔術の禁書目録みたいだなぁと笑った。気が抜けた…のがマイナスといっていいか。一回こっきりだったけど。オマージュだったのかな?息抜きにはなった。

他、好きなシーンは坊さんの知識をちゅうちゅう吸い尽くすシーン。問いに答えているテイがいつの間にか無理やり知識を吐き出されている関係に変わり本人はそれに気付かず疲弊していくっていうのが好き。吸智鬼って感じ。

全知の表現は他に、十分な情報とそれを処理する能力があれば未来予測したり人格再現できるってものもある。あと他者に何か決定的な予感を抱かせるなにかもありそう。

未来予知はどちらかと言えば決定論寄りな立場なんじゃないかなぁと思った。それでいて仏教悟りとか聖書比喩ったり日本神話時代古代史に触れたりちょいちょい宗教的な部分が入る。門を開くシーンはもう奇跡を起こす、啓示をもたらす聖人みたいな書き方じゃなかった?


結局、全知な人間なんて書けないわけですよ。だから全知な人間思考言葉は全知でない一般人には理解できないってことにして最後の対談はまあ置いてけぼりにされてちょっとスカされた気分になったよね。それで行き着く先が聖書のアレ。日常的な情報を全て知れる全知の人間が求めるのが宗教的未到達点や古代の秘匿情報というのはわかるんだけども。誰もわかってないか描写も誤魔化せるし。だけどもね。

うーん…そっち行っちゃったかぁ。という残念な気持ちがある。結果的古代聖書のアレが比喩として使えそうなことに偶然なった。と言い訳はできるけどこれはフィクションから作者が聖書のアレを使かおうとして逆算でこうなったわけで現代人よりはるか情報が少なかった古代聖書情報の、人の到達点で起きることを予期されていたってのはSF的にNG感はあったかなぁ。

人の脳が「量子コンピューターの性能10倍以上の差」を覆すのもね。量子コンピューターって…!もっとこう…!すごいものだろ……!!!みたいなイメージがある。あった。

それを人類の秘めたる力で覆されちゃう科学の信奉者(でもないけど)としてはがっくりくるものが多少はあるよねー。

展開的には燃える、熱い、そうくるのかぁー!となるんだけどね。納得できない自分10%ほど含有されています

これガンダムニュータイプ覚醒最後に全部かっさらちゃう感じに似てる。ってZとユニコーンぐらい?Z見てないや。適当書いたかも。

(全知すら知らない人類の未知の分野を書かないで済ますというのもしかたないけどずるいぞ兄ちゃん!ってなるよねー。結局、全知の彼女から読者の自分が受け取った全知者特有の何かってないのかもしれない。だって作者は全知じゃないから…。でもなんかこんなんだったよー!っていうフィクションが見たかった!)

それはそれとしてライトノベル重要なのは少女ヒロイン度だよね。

もちろんクラス9である彼女大人である主人公より圧倒的に情報を持ちまた扱えるわけで。そこで重要なのが少女少女性だよね!

すごい人間だけどいかにただの少女の部分があるかってのを魅せるのが大事大事

その点はまあ成功してたんじゃないかな。極端な幼さは見せなかったと記憶しているけれど節々の立ち居振る舞いは可愛かったよね。ドレスを選ぶシーンとか好き。

それとサブヒロイン?出番は極小で居なくても問題ないキャラなんだけど、上司主人公が嫌いででも能力は認めてて多分身近で一番の主人公理解者で嫌いだけど好き、固執してるってポジション女性。ツボです。一言で言える言葉ができてジャンル化しねーかなー!!!!!!

ナウシカクロトワ、ブリーチの七緒?古典部伊原?左門くんとてっしー?

昼行灯相方ツンデレは違うなぁ…。

こういうキャラをどしどし摂取したいものである

…だけどマジで本筋に一切絡まないとはね。ラストの展開は大好き。





結ぶと、この物語は終始、彼女情報収集能力と処理能力でもって最初から導き出された未来へひたすら突き進むものだった。最後の未知の領域でさえ彼女、彼のそうあってほしい、できるはずだという希望的観測予測を見事に引き寄せた。ただただ予定調和物語だったわけである

それを退屈だと論じる自分もいるけれど、大部分の自分はこれは面白かったと言っている。

未来世界、謎、ヒロイン性。どれもが十分であった。ならば面白くなかったといえば断じて嘘であろう。

しかし、しかし。それは作者の筆力で飲み込まされたものではなかろうか。「もしこの作品野崎まど以外が書いていたら」初めて読む作者だったらつまらなかったと言っていた可能性がないわけでもない。が、どうあがいても野崎まどが出した作品であるし、私は野崎まどファンなのでknowは面白いという結論に変わりはなかったのだ。



あ、最後に。主人公はそんなに好きじゃないかなぁ。童心は好きなんだけれど、適当女性と一夜限りのメイクラブを楽しんで雲隠れするって属性がなぁ。またそれが14歳少女に手を出せる理由付けって感じのお話の都合上の属性っぽくて作り物クサい。

目指せと言われてクラス5になったんだから彼も何がしかなしえてたら良かったのにね。彼自体空っぽで好きになれなかったです。ある意味彼がかわいそう。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん