2024-11-16

朝六時になると妻は素振りを始める

妻は毎朝六時になると素振りを始める。

気付いたときにはリビングの端に、見たこともないバットが一本壁に立てかけてあった。

新品のバット

きっかけはバッティングセンターに行ったことらしい。

初めてのバッティングセンターはとても緊張したらしく、それでも非常に楽しかったのだと言っていた。

上手く打てなかったんだよね、でも一球だけ打てたの!と妻は嬉しそうに話した。

とっても気持ちよかった、と妻。

それ以来、妻は朝になると素振りをする。

ブン、ブン、ブン、とリビングで鋭い音を立てる。

その音を、寝室にいる俺は耳にする。

猫は怯え、俺の傍から離れない。

バットが握りにくいから、と妻は指輪を外している。

シンクには洗っていない食器が山積みだ。

ブン、ブン、ブン、と鋭いスイングの音が聞こえてくる。

あのバットは、いったい何を打とうとしているのだろうか

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