2021-01-04

[]創の軌跡の感想、あるいは愚痴

 まず始めに。私は空の軌跡からファンである。そして、私は本作を数十分ほどプレイしてこのシリーズに”ようやく”見切りがついたつもりだった。ライターの紡ぐテキストの非常に強い癖が全く変わっていなかったかである

 「はは」「ふふ」「くく」を、まるで接頭辞の如く頭に付けて応酬される会話には、もはや嫌悪感さえ抱いていることをハッキリと自覚してしまったのだ。ここまでしつこいと、もはや冗句領域である

 また、「寿ぐ」のように書き言葉と喋り言葉区別がついておらず、辞書を引いて気に入ったから多用しているでは、と疑うほど拙さを感じる用い方は、逆に語彙が少ないからだろうとしか言いようがない。キャラ個性として利用されているのであればもちろん有効手法ではあるが、作中ではまるで流行言葉であるかのような扱いである。この点に関しては創では大幅に減ったとはいえ、やはり健在ではあったのだ。

 流行言葉のように使われていると言えば、「届く」もまた同じだ。これは武人共通認識なのであろうが、いくら何でも多用しすぎであるピンポイントで使えば閃の軌跡シリーズ特有の味にも思えるだろうが、現状ではあまりにも軽く、鼻につく言葉になってしまっている。

 現状を打破する論理的道筋を立てる前に、とかく精神論を展開するのもいい加減キツいものがある。精神の未熟な少年少女ならまだしも、リィンやロイドはそれぞれ教官警官といったいい大人だ。既にそれが許されるような立場でも年齢でもないだろう。こういうのは要所でやるから響くのであって、常にそのような”醜態”を晒すのは見るに堪えないものがある。

 このような価値観がまかり通るのは、全ての物事主人公であるリィンやロイドを中心に考えているからこそだろう。その歪んだ価値観は新・旧7組という言葉に端的に表れている。登場人物は皆、何故か新・旧と呼び分けているが、本来であれば現7組以外は7組という括りで呼ぶ必要はないのだ。もっと言えば、現7組の人間に対し、新7組と括るのは無神経というものであろう。リィンさん。あなたはこの子らの担当教官なのですよ、と言いたくなってしまう。

 原因は既に述べたように、世界の中心をリィンだと思っているかである。リィンから見れば彼の生徒は新であり、級友は旧なのだから、確かに彼が世界の中心であれば皆そのような呼び方をするだろう。そして、それが実際に行われているのである。だからこそ登場人物ライター操り人形しか見えない。リィンが好き過ぎて彼個人に設定が堆く盛られていくのも、書いていておかしいと思わないのだろうか。

 これを強力に補強しているのが好感度システムだ。これはあらゆる関係性を主人公にのみ閉じる呪いである。サブにも何かしら関係性が見えるのは空から登場人物ばかりなのは本当に酷い。これは何も皇子結婚アガットティータのような恋愛模様だけを指しているわけではない。紆余曲折を経て家族になったレンとカシウスの微妙距離のように、時と共に関係性が進んでいるのはシステムライターの作り出した価値観により雁字搦めになっていないキャラに限られているのだ。

 リィンの級友、または教え子達の横の繋がりなど、あってないようなものなのはプレイ者なら分かることであろう。端々に会話が交わされている場面は申し訳程度にはあるが、誰と誰の仲が良いのか、などというのは全く感じられない。リィンを通してしか付き合いがないのではないかと疑うほどである例外システムの軛から抜け出せているユーシスミリアムぐらいであろうか。

 展開のワンパターンさ加減にもうんざりであるゲーム後半で、敵に援軍を呼ばれる。そこに駆けつける意外な仲間。という展開があるのだが、これをきっちり3ルート分やるなど正気の沙汰ではない。しかもその意外性というのが、全てあえて敵側に潜り込んでいたというものなのだ。そう、3ルート分全てである。ここでは本気で頭痛を覚えたものだ。プレイヤーを馬鹿にしているのかとも思えたのだが、一体どういうつもりでこういう展開にしたのであろうか。素で燃える展開だと思っていたのだろうか。是非聞きたいものである

 さて、ここまで読んだのであればお察しの通り、無事投げ出さずにクリアまで遊べたのだがその理由はCルート存在に尽きる。決まり切ったテンプレ展開と、森羅万象主人公収束する精神論ありきの価値観支配されておらず、真っ当に面白いものだったからだ。テキストの癖も完璧に抜けている。危うく完全に積んで、今度こそ本当にシリーズにも終止符を打つところだったのだが、せめてCルートまで進めてからコントローラーを置こうと予め決めていたのが幸いした。

 あからさまに下敷きに某アニメを使っているし、何処かで見たような要素が目白押しではあるが、上手くミックスして、さらルーファスキャラを壊さずに馴染ませてある。いつものライターが書いていればやはりルーファスしか矢印が向いていない関係しか作れなかっただろうが、このルートは別のライターが書いているためそのようなことは一切ない。

 このルートはウェットすぎないのが心地良い。印象深いのが、人形達の中から本物のラピスを見つけるという場面だ。まるで直感奇跡のパワーで分かったかのように思わせておきながら、実は発信器を付けていたから分かったのだというのは(本当であっても照れ隠しであっても)ルーファスらしいし説得力もあって非常に好感を持った。ライターセンスにだ。

 惜しむらくは、他の2ルートリソースを吸われて明らかに尺が足りていないところだ。人形の中から探す場面も、欲を言えば一緒に旅をしたという体験プレイヤーと共に積み重ねてこそより輝いたはずである。これは最終局面に至るまで響いている。また、スウィンとナーディアにはしっかりとした背景が設定されているのが読み取れるのだが、尺の都合でそれが披露されるのはかなり限定的ものになっている。思わせぶりな台詞だけで半ば放置に近いと言って良いだろう。積み重ねさえあればもっと良いシーンになったはずだという箇所が多く、惜しい気持ちで一杯である

 私は軌跡シリーズで紡がれる政治劇には、多角的視点を持たずに作品自体クロスベル独立こそ正義だと一方的に主張すること以外は一定の評価を与えているので、大まかな流れ、つまり起きた事件はこれで良いのだが、実際に描くのはCルートだけであれば間違いなく良作になっていただろうと確信している。

 3つのルートが合流すると、あからさまにいつものライター節になってしまっているのも良くない。Cルート残滓など欠片も残らず吸収されてしまっている。合流後のルーファスなどもはや別人である本来の彼が再び顔を出すのは本当に最後最後局面だけだ。

 全体を通した部分で改善したと思えるのはロボット大戦の大幅な抑制だろうか。いや、むしろまだ完全撤廃を諦めていなかったのかとも言えるのだが、極々限定的になったのはありがたかった。システム的にもお話的にも全くもって面白くも何ともない要素で、あまりにも邪魔すぎるのだが、この設定は次回作にも持ち越すつもりなのであろうか。せっかく作ったモデルを(次回作ではエンジンモデル一新するので)最後活用たかっただけだと信じたい。

 不満は多々あれど、Cルートに見た光明でまた見限ってしまうことが出来なくなってしまったのは良かったのか悪かったのか……。ただ一つだけ言えるのは、もう予約買いをすることはないだろうな、ということだけである

P.S. キャラの登場時にCVと書くのはもうそろそろ辞めてくれないものだろうか。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん