その時々で綴ったので似た内容の重複もあります。
プレイ前に、ジョエルの死、嫌われてしまった新操作キャラの存在、ポリコレ的な要素の追加での世間からの批判、を知ってしまった上での感想。
ジョエルはもうキャラクターとして動かせない存在だったのかもしれない。
前作あれだけの出来事があったにも関わらず、また再び戦うジョエルを描かれてもどうかなとは ちょっと思う。
前作後のジョエルなら戦う動機は救出以外あり得ないだろうし、それなら前作のラストパートの焼き増しにしかならない。
その点、これだけの人間同士の戦争を描きながらも、徹底して人間と戦うジョエルの姿を見せなかったところは良かった。
ジョエルはもう人を殺せない。前作はそれくらいの覚悟がいるラストだったと思うし、だからこそ綺麗だった。
殺されるシーンでジョエルが抵抗する姿を描かなかったのも、その辺を意識してのことなのかな。
操作したかったしアッサリ殺されたのは勿論ショックだけど、ある意味で絶対的な存在にはなった。求めてはいない形だが。
製作陣は、ジョエルがキャラクターとして嫌われないようにすることにかなり気を使ってるように感じた。
ただそれと引き換えに、というか対として、死と他のキャラへの嫌悪感の仕組みが沢山組み込まれてたんだと思う。
それぞれのキャラの心情は、理解はできても納得はできないくらいのバランスで、変に短略的で生々しくヒステリック。
欠陥とかじゃなく、色々と考えられた故での本当に性格の悪い構造。
前作プレイヤーを不快にさせる要素、手段、手法、順序が、綿密にかつ分かりやすく詰め込まれてる。
超人気タイトルの前作主人公を、序盤からぽっと出のアビーに殺させてヘイトを爆稼ぎ。
その後もプレイヤーの復讐心を煽り続ける為に、徹底的なジョエル上げとアビー側下げがゲーム中随所に盛り込まれてる。
過去編ジョエルは常に悟った聖人の様な振る舞いだし、アビー側は結構感情的な人が多い上に現代人が多様化する故に難しくなる要素の塊。
そんなキャラ達を用いて復讐心を煽りエリーとシンクロさせた後に、最大限までヘイトが溜まった所でアビー側の立場に変えてもう一回同じ日々を繰り返す。
このアビーというキャラのメインの目的は、同情じゃなくてエリーがしたことの異常性の確認じゃないかな。敵側のキャラの心情の理解ってより、細かい生活を見せてる印象。
アビーの父親の掘り下げについても根源的なヘイトの対象をマーリーンから移されてるだけだから、アビーに同情させる気なんかさらさらなさそう。
アビーへの不快感は消えないように残しつつも、動機は理解させるくらいな感じ?
そこからアビー操作のままエリーとの戦闘をさせ、プレイヤー的には何が勝ちで何が負けなのか分からん状態で一旦旅は終了。
こんな胸糞悪い精神状態でも、せめてラストくらいは復讐のカタルシスを得られるかと思えばそんなことはなく、
色んなものを捨て、色んな感情や立場に挟まれながら、殺しもせずスカッと許しきったりもせずでアビーを逃して終了。
エリーとプレイヤーは、胸糞悪いモヤモヤを抱えたまま沢山のものを失って終わることになる。
多くのプレイヤーが救いとして求めていたであろう和やかな探検パートから、エリーが不信感を抱き決別するまでの様を描いて不安を煽って、
最後には互いに今まで隠してた覚悟や本音をぶつけ合って、二人のわだかまりの解消の糸口を匂わせる。
ただ同時に、寸前で終わってしまったそれが、序盤の大事件の直前でもあると気付くと本当に救いがない気持ちになる。
最後の最後で、序盤の死にダメージ上乗せするんだからタチが悪い。
全世界のプレイヤーが望んでいる展開を理解しているからこそできる構成。
不快感を高める為の道順が清々しい程完璧で、しっかりと悪意を持って確実にモヤモヤするよう作られたストーリー設計。
キチッと復讐したり、スカッと許したほうが幾分物語を作るのも簡単そうなのに、わざわざ遠回りしてモヤモヤさせてる。
誰の得も垣根もなくフラットに嫌悪感を味わえるし、誰もが怒って良い内容のゲーム。
ストーリーの好みでの批判は理解できるけど、フェミだのポリコレだのに屈したって批判は理解できなかった。
権利の主張とか政治的正しさとかみたいなことを、軽い気持ちの綺麗事で入れてはいないように感じた。
キャラの人種や思想の多さも、配慮とかそんなぬるいもんじゃなくて、
誰もが誰かにどこかしらで差別や嫌悪をする様な装置として入れているのかなって思う。
ジョエル以外のどのキャラにも嫌なところや異常なところがあった。
どんな人も認めよう!的なことじゃなく、むしろもっと嫌味ったらしいものに感じた。
世情を捉えてはいるけど、屈してはなくない?
まあもちろん色んな人物を盛り込んだのは、リアリティの追求って側面もあるだろうけど。
ちょっと脱線するかもけど、他のゲームでもゲームにそういうリアリティは要らないって批判あるけど、ラスアスに限ってはここまでのリアリティはあって良いと俺は思う。
内容自体は極めて真剣に悪意を持って綿密に練られてると思うから、欠陥とか中途半端って批判も違うと思った。
嫌なものを、嫌な手法で、嫌な順に、嫌なタイミングで的確にぶつけてくるから、ちゃんとムカつくし、ちゃんとモヤモヤするし、ちゃんと嫌いって主張したい内容。
ラスアスでやるなって意見もあるだろうけど、ラスアスでやらないとここまで出来ないことでもあるとも思ってしまう。
ある意味では完璧に徹底して作られてる様に感じたし、その上でマジで胸糞悪くて死ぬほど終わってる内容だと思った。
ビジュアルやゲーム性、音楽も含め総じてめちゃくちゃ丁寧に作られた作品だから、雑なレッテル貼りだけの批判で済ますのはもったいないと思う。
前作ラストのやりとりで、エリーはジョエルのした事について、具体的でなくてもなんとなくは察しがついているものだと思ってた。
今作過去パートで追っていく会話からは、思ったよりも何にも気づいていなかったんだなって印象。
エリーがどういう嘘と認識してたのかがわからなかったし、決別がやや強引だった気がする。
「誓うよ」「わかった」のやりとりの重みが少し薄れてしまったように感じる。
「君を失ったら、我を失ってしまうだろう」
復讐をするエリーはジョエルのことを考えていないし、助けに向かったジョエルはエリーのことを考えていない。
一生許せない(許しはしたかった)とジョエルに言ったエリーだけど、復讐寸前に自己矛盾に気付いた。
結局ジョエルを許せていないままの自分が同じことをしているのでは?と我に返り、アビーを殺しも許しも出来ずに逃してしまった。