はてなキーワード: リンクシェルとは
【サブタイトル】たかがゲーム、されどゲームw 数年前の話です。
私は誰かのサポートをするのが好きで、会社でもそういった仕事を求めていました。
あんなサポートこんなサポートをしているうちに、構築をやっている彼と知り合いました。いいカップルだったと思います。
彼の趣味であるMMORPGを一緒にやるようになりました。私自身別のMMORPGは経験者でしたが、このゲームでは初心者です。彼はサーバーでもトップ5に入るプレイヤーで、初心者の私は彼からいろいろ教わりました。
彼と同じギルドというかリンクシェルというか血盟というかいわゆるそういうものに入りました(分かりにくくなるのでギルドということにさせてください)。彼とはレベルが離れていたので、最初期は一緒にも遊べませんでした。リアル彼女というのが知られると人間関係が面倒になりそうなので、私はネカマということにしました。彼からはアイテムやゲームの中のお金も貰わないでゲームを進めました。
サポートが好きなので最初はサポート職に就きましたが、同じ頃ゲームをスタートしたメンバーの中ではアタッカーが足りなかったのでアタッカーに転職しました。
この頃彼はゲーム初期からのメンバーで、私たち後発メンバーの目標であり憧れでもありました。
二人のデートは普通にデートすることもあれば、ネカフェのペアシートで同じゲームにログインし、別々のパーティーで別のダンジョン攻略をしたりしていました。他人の画面って意外とおもしろいので、これは私は好きでした。彼がよいアイテムをばっしばっし引き当てるのも面白かったです。
彼と付き合い始めて1年半(ゲームを始めて1年半でもある)経ったころ、会社で「お客様を支える仕事を直接しないか」と言われて、私は構築に回りました。構築だと手元を離れてからお客様に密着していなくなるのがさびしいですが、それでもこの仕事も楽しいと思っていました。
ゲームでは後発組の私たちもがんばって先発組に近づいていっていました。やったことがある人は分かると思いますがMMORPGの進捗は情報量に左右されます。先発である彼からゲーム内の相場のノウハウと効率のよい狩場を教えられた私、そして私のはいっている後発グループは、他の後発グループに比べて成長の著しかったと思います。ようやく彼と一緒に遊べるレベルになってきたのです。
同じ頃、彼とゲーム初期から遊んでいたメンバーがぽろぽろとゲームを引退し始めました。理由はリアルだったり、別ゲーが面白くなってだったり、ゲーム内で知り合って付き合いだした子と別れたからだったり、よくある話ばかりだと思います。ギルドの中で後発組が後発だといわなくなり始めた時期でもあります。
その頃から彼がギルドでのパーティーは彼が仕切るようになっていました。タンカーは彼で、アタッカーは私でしたが、回復が足りないときは私にその役割が振られました。パーティーの今のメンバーで足りないところを穴埋めする役割ができる=真の意味でのサポートなので私としてはうれしい限りでした。
ところが、彼が出張で3週間、ゲームにつなげない状態になりました。ゲームの中での3週間はリアルの3ヶ月以上に値します。ギルド唯一のタンカーの不在で、毎日の狩りに支障がでました。そこで穴埋めとして私がへたくそながらタンカーをすることになりました。彼が帰ってくるまでの仮のタンカーなので装備もいまいち、腕もいまいち、行かれる狩場も限られていましたが、なんとかギルドでの生活をまわしていました。回復が足りないときは他のギルドの友達を応援に呼んでいました。
彼が戻ってからは即、彼にタンカー職をお願いし、これまでどおり、難易度の高い狩場に行かれるようになり、私としてもほっとしていました。
そこでギルドのみんなから、彼から私にタンカーとしてのスキルを伝授させてほしいという話になりました。
ギルドチャットで彼は快諾し、私をタンカーとしていつ狩りに行くかの相談となりました。
そこに携帯にメールが来ました。彼から「SKYPE起動して」と一言。ゲームの最中は二人でSKYPEすることがほとんどないので、なんだろうと思って起動しました。
彼「無理だから」
私「え?」
彼「君にタンカーなんかできるわけないじゃない。向いてないよ。」
私「そりゃあなたほどうまくないから、不在の間だけレベルを下げた狩場でやるつもりなんだけど。」
彼「俺がいない間、どうやってたの?」
私「私がタンクで、回復足りないときはAさんやBさんにお願いしてきていただいていました」
彼「・・・後発組中心で?」
私「はい」
彼「下手なメンバー見せると、他のギルドから『あそこのギルドは効率の悪い狩場に人を借りて行かれる、儲からないし経験値もよくないし、迷惑なギルド』って思われるよ。そういううわさが立つと、ボス攻略のために人を借りるとかできなくなるから、下手なやつ等と行くときは外部呼ぶのやめて」
私「でもそれだと、ハントに行かれなくて、みんなギルドやめちゃうかも」
彼「(長い無言)とにかく、君はさ、回復でさえあの程度なんだから、もっと回復うまくなってからアタッカーだのタンカーだの考えたほうがいいよ。
タンカーがいなくて困らないように、俺が毎日タンカーやるから」
その日は一応私がタンカーの練習をさせてもらいました。それまで回復職でしか行った事のない一番難易度の高いダンジョンに行くことになり、どういうわけかクリアできてしまいました。
が、それ以降は私の練習話になっても、「練習より短時間で何度もクリアしてアイテムを取るほうに力を入れよう」と彼が方針を決め、私の練習はなされることがありませんでした。
そしてその日、ギルド内のダンジョンアイテムの配分ルールが変わりました。それまでダンジョンで出たアイテムは職業に関わらず欲しい人がくじ引きをして勝った人が受け取っていました。それを「現在の職業に適したものを渡す」ことになったのです。
私には回復用の装備だけがまわされ、アタッカー用タンカー用の装備は回ってこなくなりました。ルール変更に際し、彼は自分がそうした装備がほしかったらお金をためて買えばいい、本気でやりたいならそのくらいするだろう、と言っていました。
彼は他のギルドからアタッカーを引き抜くようになりました。私のアタッカーでの参加はどんどん減っていきました。もう回復ばかり。装備も回復用としては最高位になって、他のメンバーに譲るばかりに。けれどもアタッカーは新しく入るのであまることがありません。またタンカー装備はアタッカーの中で有望な人に渡され、私にはやはり回ってきませんでした。
付き合い始めて2年が過ぎる頃、彼が構築からはずされました。何があったかは同じ社内ですので知ろうと思えば知ることはできました。でも、私はそれをしませんでした。私は彼が異動したということしか知らない、そういうことに私たちの間ではなっていました。
ゲームの中では、他のギルドから回復のうまさで有名な人が入ってきました。
ある日のこと。パーティーを組み始めて、いつもどおり、一番最後に私の役割が割り振られます。今回は何ヶ月ぶりかのアタッカーでした。
がんばって買いためてきた装備を身に着けたキャラで戦って、1戦終わったところで、彼からSKYPEに呼び出されました。
「あのさ、火力たりなくない? そもそもなんでそんな動きなの? ソロじゃないんだから。パーティーでのアタッカーの動き、覚えてないの? それにその装備、なに? 前のダンジョンで装備とっきてないの? その装備じゃこれ以上の狩場無理じゃないかな。なんでそんな装備なのかなぁ」
私はPCの前で凍りつきました。
何ヶ月ぶりのアタッカーで、動きが悪かったとは思うのです。装備も悪かったとは思います。でも、でも・・・装備がない理由って、それは・・・
涙が出そうになったのですが、ゲームごときで泣くのも悔しいと思い直し、冷静に返答しました。
「そうですね、火力も足りないし役割も担えないのでギルドを抜けますw」すると、いきなり抜けたらみんなが動揺するのでそれは困るといわれました。
何を言われているのか分からない。
その日そのあとどうしたか、ショックが大きくて一切覚えていませんが、彼に言わせると「いきなり落ちるといってゲームを落ちてギルドのみんなに迷惑をかけていたよ」だそうです。
職場で会っても、私は彼に話しかけることができませんでした。もっとも構築の私は会社に戻る頻度がすくなくて、社内で彼と会うことも少なくなっていたのですが。
ゲームでは、帰宅してから彼がパーティーを組み終わる頃にわざとログインするようになりました。もしくはログインしても放置のふりをしてみんなとは別の場所でひっそりと遊び、ギルドの主だったメンバーがパーティーを組んで出かけてから、人手の足りない他のギルドのパーティーに加えてもらって狩りに出かけるようになりました。
その後、よくパーティーに加えてくれるギルドから来ないかと誘いが来たので、そちらに移りました。
彼は会社を病気で退職しました。私も友達が設立したITとはまったく関係のない会社に誘われて、そこで総務から経理からPC関連から、とにかく穴埋めとなるべき場所全般を担当して働いています。仕事が本当に楽しい状態です。
ゲーム内では2年以上前に彼とは無関係になりました。リアルでも、もう彼とは何ヶ月会ってないでしょう。
私は、移り住んだ新しいギルドで楽しくやっています。ミスや装備の関係で効率が悪くなっても、今のギルドマスターはおおらかで、長い目で見てくれています。それでも時々、装備の悪さや不慣れな動きでパーティーの効率を悪くすると精神的にぐちゃぐちゃになりそうになります。今ここで見ているわけのない彼からSKYPEで何か言われるのではないかと思ってしまうのです。突然、精神的に萎縮して、ごめんなさいを連発し始める私に、ギルドマスターたちは困っていると思うのです。なのでなるべく冷静になるように努めています。が、それでも突然、SKYPEで装備のこと立ち位置のことDPSの値のことを言われたらどうしようと思ってしまうのです。
今年になって、モラハラについて詳しく知る機会がありました。
私がやられていたのは、モラハラだったんですね。
やることなすことすべてに、上から正しくない正しくないといい続けて心を折り続ける。
彼はそれがわかってやっていたのでしょうか。そうではないことを信じたいです。
彼には、早く完治していい仕事を見つけて、そしてできることならばモラハラしないで付き合える彼女を見つけてくれることを心から祈っています。