2020-05-14

あんさんぶるスターズにおける天祥院英智発言問題について

作品内で天祥院英智(以下、英智)が「リベンジポルノを撒き散らす」という発言したことにより、先日よりTwitterをはじめとしたSNS界隈で炎上している。

これに対して色々な意見が述べられているが、どうも「何が」問題なのかという点がズレてきているように思えたので、一個人としての考えをまとめさせてもらいたい。

この投稿を見ている人で、あんさんぶるスターズ!!(以下、あんスタ)をプレイしていない人ももちろんいると思うので、英智がなぜそういう発言をするに至ったか簡単にまとめておく。

Crazy:Bというアイドルユニットが、他のアイドルたちの過去捏造して公表したり、センセーショナルに煽ったりしたことで、アイドルへのヘイトが集まるようなパフォーマンスをした。

彼らの行いを放置することは、アイドル業界にとってよくないことだと判断した英智は、彼らを大人しくさせるための対抗策の一つとして、Crazy:Bのメンバー情報を集める。

その際、英智は「やられっぱなしでは癪に障るからね。(中略)彼らの弱点を掴めたということだよ。だからもし、『Crazy:B』が【アイドルロワイヤル】での卑劣戦術を繰り返すようなら、同じように僕たちも彼らを破滅させるために手に入れた情報を公開する。彼らの、恥部をね。毒針ならぬ釘を刺してあげるよ。目には目を、歯に歯を、ヘイトクライムにはヘイトクライムを。悪評を立てられたら、その報復としてリベンジポルノを撒き散らすよ (アンサンブルスターズ!! メインストリー 第五章 第百三十八話より引用)」と発言している。これがどのような情報であるのかは、メインストリー上では明確にされていないが、少なくとも、Crazy:Bにとっては触れられたくないような話であることは匂わせている。

さて、ここで問題となっているリベンジポルノとはどういうものなのか。

リベンジポルノとは、離婚した元配偶者や別れた元交際相手が、相手から拒否されたことの仕返しに、相手の裸の写真動画など、相手が公開するつもりのない私的性的画像を無断でネット掲示板などに公開する行為のことである(wikipediaより引用)。日本でもリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律案)が制定されており、犯罪行為である

これを踏まえて、今回の問題点は大きく分けて二つあると筆者は考える。

一つ目は、校閲が甘かったという点である

そもそも文脈から考えると英智の行動は、リベンジポルノではないと言える。

今回、彼が示した対抗策は、簡単に言うと「ライブ会場やネット上で誹謗中傷を受けたので、こちらもCrazy:Bが嫌がる情報を公開してやろう」ということである。今回のCrazy:Bの行動も、英智が用意している策も、リベンジポルノ名誉毀損であることには違いないが、Crazy:B及び英智の行動は「性的もの」ではないため、リベンジポルノという例えが当てはまるかは疑問である。著者である日日日が、何かの理由を持ってこの表現を用いたのかもしれないが、少なくともその説明作品中で行われていない以上、適切な表現ではないだろう。

また、リベンジポルノという単語の使い方が適切でない以上、会社や作者が性犯罪に対して鈍感であると捉えられても仕方がないように思えてしまう。ただでさえ、日本外国と比べて性犯罪に対する認識が甘いと言われいる。エンターテイメント上での表現とはいえ、十分な配慮を持って使用するべき単語であることは間違い無いはずだ。膨大なテキストを公開しているあんスタであるが、しっかりと複数の目を通して校閲していれば、そもそもこの問題は起きなかっただろう。(他の文章でも所々、使い方がおかし文章や、誤植が多いことから普段から校閲が甘いのだろうというところではあるが)

二つ目は、倫理観配慮に欠けていたという点である

SNS上では、あんスタは、そもそも現実世界と同じ基準で考えるとおかしいところがたくさんあるからあんスタはあんスタ世界独自ルールに基づいている、と考えているので気にしない。という意見も見られる。フィクション現実乖離について弁えていることは大切なことであり、否定はしない。しかし、今回の問題はもう少し配慮するべきところが隠れているのではないだろうか。

問題となった「悪評を立てられたら、その報復としてリベンジポルノを撒き散らすよ」という台詞についてであるが、もしも「悪評を立てられたら、その報復として彼らを社会的に殺すことも厭わない」と表現されていたらどうだろうか。この表現は、簡単に言うと「相手の行動により名誉に傷がついたので、相手にも傷をつける」と言っているようなものだが、そう表すことで、眉を顰める人はもっと多くなるのではないかと筆者は考える。倫理的対応ではないからだ。

SNS上では、「リベンジポルノ被害にあっているのは女性ほとんどで、その女性がメインユーザーゲームなのにその単語を使うのはどうなの」だったり、「実際にリベンジポルノが原因で自殺したアイドルがいるのに配慮に欠けている」だといった意見も見られるが、個人的にはアイドルもの作品リベンジポルノという単語が出てくることに対しては構わないと思っている。もちろん、先にも述べたとおり、単語の正しい使用や、道徳倫理的配慮を十分にした上でのことである

また、フィクションから、といった理由暴力的表現や、唾棄されるような単語を許容してしまうのは危険であるゲームという大衆にむけた作品である以上、物語上の出来事であるとはいえ世界の何処かに、その言葉、そのストーリーに傷つく人がいるかもしれないのだから、その存在考慮しないことは、あまりにも視野が狭いと言わざるを得ない。少なくとも傷ついた人に向かって「気にしすぎだ」などといった対応をとるのはあまりにも人の心に対して鈍感だ。

あんスタはスマートフォンアプリダウンロードして楽しむゲームであるが、その対象年齢には制限がない。中高生はもちろん、下手をすると小学生だってプレイ可能ゲームである常識を弁えており、ある程度の道徳倫理観を持った大人がこの話はフィクションから、と判断することは構わない。しかし、情操を養っている最中の子供たちが触れるゲームとしては、あまりにも過激ストーリーになってしまってはいないだろうか。今回の炎上は、昔からあんスタで過激表現されていたところが改めて問題となって浮上してきたため起きたのではないだろうか。今回のことをきっかけに、対象年齢や、作品としての方向性を今一度定義し直すべきではないか個人的に思っている。

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