多分親戚縁者の中には戦争に行って亡くなった人、
空襲で亡くなった人、
成人するまでに病気なりなんなりで亡くなった人がいる。
小学校は新制かな。
教師は戦時中に教育を受け軍国主義を叩き込まれてたのに戦争が終わってGHQによってそれまでの価値観すべてを否定された人たち。
もう教育勅語は教えてはならん。
但しせっかく教育した子どもたちを戦争に送り出さないと非国民扱いされる恐れがなくなりホッとはしてるのかもしれない。
そんな人たちに教育される。
家に帰ったら食べ物はない。
焼け野原などに勝手に作った畑で家族総出で作った野菜と闇市で着物と交換してきたお米ばかり食べて成長する。
遊びといったらお金持ちの家ならおもちゃも多少あっただろうけれど、
兄弟にも食べ物を分け与えなくちゃならないからいつでもひもじい思いをしている。
ただそこらに落ちている不発弾を小さくて何もわからないから触ってしまって死んでしまう近所の子はいたかもしれない。
とにかく国には何もない。
外貨がない。
海外旅行は許可されていないどころか、明日生きていくためのお金もない。
ただ活気はあるし人でも足りないから、戦争を生き残れた壮健な父親の働き口ならいくらでもある。
父親が戦争から帰ってこなかった家ならお母さんは働き口に困ったかもしれない。
それでもなんとか仕事を選ぶことはできないけれどそれでもやっとこさ見つけた仕事をこなして帰ってくる。
父親の場合は仕事の後は軍隊式の上下関係が残っているから飲み会に誘われたら飲めなくても参加しないわけにはいかない。
そんな家族に育てられるので、ちゃんとした家庭教育なんて受けられない。
近所のお兄ちゃんお姉ちゃんたちにずっとかまってもらったりして日が暮れるまで外で遊ぶ。
生き残ったお年寄りが親代わりなこともある。
新制中学に通うことになる。
多分義務教育が長くなったことで家族からごちゃごちゃ言われてる。
その高額な費用はどこから出すんだって話でまた親から嫌な顔をされる。
もしかしたら近所の人やお兄ちゃんからのお下がりで我慢させられたかもしれない。
世は高度経済成長。
中卒でもなんとか頑張れば給料がもらえる。
よほど気に入らないのでなければ所帯を持った。
所帯を持ってしばらくすればなんとか関係も安定させられる。
子供も戦争で人口が減ったのだから増やさないといけないから嫌でも作る。
子供には自分が経験できなかったことをすべてやらせてやりたいので、
塾も行きたがるだけ行かせてやる。
自分が本当はやりたかったことだというのは言いたいけれど言えやしない。
そのうちに子供が反発し始める。
自分が反抗期の頃はもう就職していたから自由に物を言うのもわかるが、
お前はまだ親のすねをかじっているのに何を言うのか?
(おしん並感)
せっせと働いて大学まで出してやる。
同僚は定年までに成人病で何人か死んだ。
もののない時代に食べられなかったものを食べすぎたといえばそうだが、
企業戦士として働き詰めでようやく楽ができるようになるというのに、
定年前に死んじまうとはな…
俺もあと何年生きられるのかわからんが、
せっかく平和な世の中になったのだし、
生きられる限りは頑張りたいものだ。
部下の首を切れというのか…
みんな真面目に働いてきた奴らだぞ…
なんで首を切らねばならんのだ…
労組は何をしているんだ!
孫は可愛い…
もう二度と戦争なんて嫌だ…
ん?なんだ?
『老害』とは何のことだ?
俺たちのことを言うのか…!
平和で勉強も自由にできて欲しいものも買える世の中に生きているのに、
まだ足りないというのか!
時代が変わったというが、
誰が変えてきたというんだ!
今は若くて何でもできるだろうが、
人生は短い、
お前だっていつか年を取るんだぞ!
年を取れるんだぞ!
そこまで生きていたくてもできなかった者たちのことも考えたことがないのか!
今どきの若者は何を考えているんだ!
以上戦中派の親から聞いたことなどをもとに想像した仮想の80歳の男性の人生ですが、
世代ごとに苦労する内容が変わるだけで、
まあ誰だって余裕がないときにはそこまで考えられないでしょうけれどね。
また自分の考えも伝えられたら、
という思いをほんの少し持てたら素敵だとは思います。
ジョーカーがヒットするくらいですし 共感性や想像力を持っているのでしょう