2024-11-07

あげまん」って伊丹十三造語だよな?

Wikipediaにも何やらそれっぽい語源説が書かれてるけど、1990年伊丹十三映画あげまん』以前に「あげまん」なんて言葉はなかったよな。

男にツキをもたらす女、古来人々はそれをアゲマンの女と呼びならわしてきた・・・

なんて、いかにも昔からある言葉のように演出したら、みんながそれを信じちゃったってことだろう。

ただし、同じ意味言葉として「福マン」というのはあって、これは1970年代ごろから使われていたようだ。

1970年雑誌小説宝石』に掲載された伏見太郎『男が知りたいズバリ女の感度めぐり 男よ、おかめを探せ』に「福マン」の解説があるのが、調べたかぎりでは最も古いか

男子の「運」というものは、ほとんどの場合、それを齎らす女性によってつけられるものなのである。斯く申せば、諸君は、ではそうしたツキを齎らす女性とは、いかなる女性であるか、大いに知りたいと思われるであろう。私はこんなところで、決して諸君に気をもたしたりはしない。ズバリ言おう。それは「福門」を有する女性なのである

筆者註 モンは往々マンと訛る。従って福モンは福マンと読み、かつ解すべきである

「解すべき」というのは、つまり「門というのは女性器のことだと解すべきだ」という意図だろう。

この筆者は、おかめ顔(お多福)で体毛(陰毛)が薄い女性こそが「福マンである、としており、逆に濃い陰毛を持った女性は「厄マン」だと述べている。

その前年1969年の『週刊サンケイ』では「福マン」ならぬ「運マン・貧マン」が紹介されている。

男どもは世にこの貧マンのあるのを、意外と知らないで、ただひたすらミミズ千匹、タワラ締めなどを求め、めぐりあっては随喜の涙を流し、かくて、ろくでもない運命をつかんでしまう。

当然、この反対に運マンがある。これは、接触すると、とにかくよくなっちゃうのである。ある男がいた。これが、女が見てもうらやむほどの、ものすごい美人結婚した。しばらくすると仕事が順調に伸びだし、たちまちにして、その世界でひとかどの人物になってしまった。

概念自体は「福マン」あるいは「あげまん」と同じようだし、またミミズ千匹だのタワラ締めだのと明らかに女性器を意識して名付けられてもいる。

また1970年野坂昭如好色覚え帳』には「福チン」が登場する。

「そりゃ、きっとその先生が福チンなんだなあ、福チンが勝ったにちがいねえや」という、福チンとはなんぞや、庄助考えこんでいると、「福の神のオチンチンですよ、定奴の貧乏おそそと、勝負して福チンがやっつけちまったんだねえ、だから定奴にも運が向いてきたんですなあ、あれだけの先生なら福チン持ってて不思議はないやね」

「おそそ」は女性器のことなので、「貧乏おそそ」は「厄マン」的なものだろう。

さら1972年オール讀物』の永六輔『妻を考える』では、

世に「福マン」「福チン」「損マン」「損チン」と呼ばれるモノがある。

などとして「福・損」「マン・チン」の組み合わせを取り揃えている。

あげまん」については「女性器のことではなく『間』が転訛したんだ」といった説明もされるが、こうして見るとやはり女性器のことだと考えるべきなのだろう。

そして伊丹十三は、こうした「福マン」「厄マン」的なものから着想を得つつ、元のイメージから切り離すためにちょっと字面を変えて「あげまん」としたんだろうな。

追記

申し訳ない。

1980年刊の『或る馬賊芸者・伝 : 「小野ツル女」聞き書より』にて「上げマン」「下げマン」を確認した。

特に奴(やっこ)が生きてきた芸妓世界では、ことが多過ぎた。貧乏性で相手を必ず破滅へと落し入れる女、何人もの男の命を奪い取る女、逆に男を出世させる女など…。上げマンとか下げマンという言葉も残されている。

というわけで「上げマン」「下げマン」は伊丹十三造語ではないし、もとは花柳界隠語だったことも確実のようだ。

伊丹十三にあらぬ疑いをかけてしまたことを陳謝する。

  • あげまんって聞いても揚げ饅頭しか思いつかない

  • メディアの記録に残ってないだけで俗語として伊丹の周辺では使われていたからタイトルにされたんじゃないの

    • それ「伊丹十三の造語」が「伊丹十三の知人の造語」になるだけじゃん

  • くさまんは?

  • マジレスするけど、ご飯作るところを台所っていうじゃん? 経理するところを政所(まんどころ)っていって、黒字を上げ政(あげまん)、赤字を下げ政(さげまん)っていうだけなん...

  • 言葉というのは 現実で使われる言葉 文書で残された言葉 音声メディアで使われた言葉 膨大な過去の時間と空間で使用されているので 誰が考えたとか初めて使われたなどを調査し結論を...

  • 伊丹十三の造語だろうね 花柳界で使われてたっていうけど証拠はないし、それも伊丹側が流した話だと思われる 花柳界のことに詳しい人なんてそんないないし 聞いたこと無くても、他...

  • あにまん?

  • 映画以前からさげまんという言葉は知っていて逆のあげまんもあるんだなと思った記憶はある

    • ほぼ同意。 実際に「あげまん」と言うのも何度か聞いたこともあるけど、さげまんからの類推で使用した/聞いて理解した、という空気だった。 「劣後」みたいなもんだと思っている。

  • いたみ じゅうぞうって早死したっていう記憶があったけど、じつは自〇なんだね・・ A6輔なんて甲高い声がうるさく感じられてしかも鼻につくおじいさんだったな これも地獄におちてく...

  • 「まんこ」が入ってる言葉が一般メディアで堂々と使われてるのってどう考えても異常だろ、って思うのだが、何でこんな受け入れられてるの?「キチガイ」は駄目でも「釣りキチ」「...

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