はてなキーワード: リボルケインとは
SESの人売り社長は、頭のねじが飛んでる狂った別次元の人間という認識がネットでされてるが
まぁ間違いではないんだが、そんな人格破綻者なんてごく一部で、実際は彼らなりに悩みがあるということを、俺は新卒の時に知ったので語りたい
前置きをしていくと、俺はそういうブラック企業やるような社長なんて、死ねばいいと思ってるし、社会のガンだと思うし、言っては悪いが反社の一員と分類してもいいくらいじゃないかとさえ思う
今は亡き社長も、そんな人間だったが、それに至るまでにはいろんな人生の挫折とかがあったということを知った
供養がてらに「仮面ライダーになれなかった男の人生」を知って、何か考えてもらえればと思う
今でこそ、ちゃんとした会社に入ってエンジニアとしてたくさんの経験を積ませてもらって
それなりな人生を歩ませてもらってるが、ITエンジニアのお定まりの通り、俺も新卒の頃は今思えばヤバいと言っていいような底辺人売りSESにいた
まぁ絵に描いたようなSESのブラック企業の社長って感じで、面接のときだけ人当りはよく、すっとぼけてレガシーな現場に送り込んでピンハネ三昧、営業活動と称してキャバクラ風俗ハシゴして
気に入らなければキ〇ガイの様に発狂してあたり構わず喚き散らし、物に八つ当たりをして威嚇する、反社との付き合いをほのめかして自分を大きく見せようとする、そんなオッサンだった
俺も最初は理解不能のキ〇ガイかと思っていたが、やめるまでの半年間付き合ううちに、早く死にたいからそんな無茶な暴飲暴食や、奇行を恐怖からやっていたということがだんだんとわかってきたんだ
都内の貸しビルの一角みたいな、SESお定まりの金のかからない殺風景な社長のオフィスには、パターゴルフセット、開けて中身見れば風俗やキャバ嬢ばっかの名刺入れとかそんな中に似つかないように、仮面ライダーBLACKRXのフィギュアが置かれていた
社長はその仮面ライダーが好きだという、子供のころからのファンで、仮面ライダーみたいな正義のヒーローになりたかったんだという
おりしも社長が若いころには就職氷河期、Aラン大学でバリバリの計算機科学を学んだ社長は、今は見る影もないが、当時は凄かった国内大手の某IT系企業に入ることができたそうで、順調にエリートエンジニアコースを歩んでいた、南光太郎の様な格好いいヒーローを目指して、エンジニアとして頑張っていたそうだ
ところが、おりしもリストラブームから00年代初頭の、地獄のようなブラックIT業界旋風、その中で社長は理解のある上司から、パワハラ上司の下へと転籍となってしまったところから、歯車が狂ったのだという
いじめ、暴言、いやがらせ、今やれば刑事事件で捕まりそうなレベルのいびりを受けて、とうとう社長は身心が壊れてしまった。体の震えや動悸が止まらなくなり、躁鬱で泣き出したり激高したり、今の性格の基礎がこの時の後遺症でできているようだった。
社長は会社を辞めた、というより辞めさせられたというのが近いのかもしれない
辞めていくエンジニアたちが集まって、自分たちが派遣するという形で特定派遣の企業を立てたそうだ(今でこそこんな有様だが、当時は社長や経営層がみんなエンジニアで、自ら客先常駐して稼ぐ特定派遣だって結構多かったのだ)
めげずに何度も諦めないで立ち上がろうとした社長の心を支えていたのは、子供のころからのヒーロー、仮面ライダーBLACKRXだった。
だが、大手企業の看板もなく、おりしも法整備が追い付かずリアルヤクザまでもがエロゲー作って売ってたくらい無法地帯だったIT業界、野比YRPの軍曹日記のようなことは日常茶飯事で、社長も足元を見られ、無茶振りをさせられ、下請けいじめによってどんどん身心を疲弊させていった
一人、また一人と一緒に会社をやめて合流したかつての同僚や仲間たちが、IT業界に見切りをつけてやめていく、当時はまだみんな30代とか、定年間際、第二の人生を歩める余裕があったのだ
だが、社長はそれでも最後まで諦めようとしなかった、逃げるのは悪いことだ、と最後まで責任を持ち続けた
結果、倒産、多額の借金を背負わされ自己破産、とうとう社長は壊れた。
それからは坂を転がるようにヤクザ者と付き合い、ブラックSESでドナドナ人売りで稼ぎ
営業と称して昼間から飲み歩く、かつて仮面ライダーになりたかった男とは思えない、人間のクズにまで落ちぶれていったそうな
社長は既に重度の内臓疾患だか癌だかを患っていたようで、治療もまともにせず、そんな破滅的な生活を続けていた、不起訴になっているが、警察沙汰にだって何度もなっていると聞いた。
俺が入って辞めるころには、社長だって死ぬ間際だと悟っていたのか、マトモな人間は(俺もすぐ辞める予定だったけど)離れていき、もう人売りするだけの人間さえ寄り付かず、完全にご破算状態の中で、気弱になった酒の席で、俺だけにその生い立ちを打ち明けていた。
思えば恐怖と寂しさがあったんだと、今に思う。その時俺は、ムカっ腹が立っていたので「どうでもいい話すんなよ、いい年こいたオッサンが未だに仮面ライダー仮面ライダーって頭おかしいんじゃねえのか?俺をこんな目に遭わせやがってとっとと肝臓がんで死ぬほど苦しんでからくたばれよ」と思っていたが
社長は俺の態度で察しているのか、この世のものとは思えない、俺も二度とあんな顔を拝むことはないだろうというほど、絶望に突き抜けた表情をしていたのを、ハッキリと覚えている、社長は、息ながらに地獄に堕ちたんだろう。
そして会社辞めて紆余曲折あって数年、いい人たちといい会社に恵まれていたころ、社長が肝臓のガンだか疾患だかで死んだという報せを聞いた。
口から血を吐いてもがき苦しんで、今までの早く死にたいがためにやっていた滅茶苦茶な行動のツケを払って最後まで苦しんで死んでいったという。
正義のヒーロー仮面ライダーにもなれず、開き直ってショッカー怪人や暴力団やヤクザにもなれず、ITエンジニアとしても中途半端で、どこにも居場所がなくなった社長は、何物にもなれず、死んでいった。
嘘松とか主語がデカいとか、何を言ってくれてもいい、ウンチだとかでもきもくて金のないオッサンは…とか言い出し始めてくれてもいい
IT業界の影で「仮面ライダーになれなかった男」の話を、頭の片隅に忘れないで欲しい
そして、社会でそんな風に無軌道な生き方をしている半グレだとかDQNだとか、ブラック企業の社長や滅茶苦茶なことを言う学者や政治家や芸能人、ユーチューバーだってそうだ、それらは完全に頭が狂った人間でなく、ただの小心者な普通の人間で、自分の悩み多き人生を少しでも早く終わらせたくて、自分を傷つけるようなあんなムーブをしているのだと、俺は思う
彼らもまた「仮面ライダーになれなかった男たち」なんだろう
誰からも嫌われて行き場をなくした社長の形見の仮面ライダーBLACKRXは、俺の部屋でリボルケインを掲げて、社長の変わりのように悪に対して今日も正義のために戦っている