2019-08-12

追記あり古市憲寿さんが芥川賞選考委員にいろいろ言われちゃってる件

10日発売の『文藝春秋』に芥川賞の選評が載っていて、二回連続落選した古市さんがいろいろ言われている。

候補作は単行本出版されているが、まだ読んでない。だが、高学歴なのにビルの窓の清掃員をやってる主人公の話で、参考文献が詳細にあげられているらしいことは、なぜか知っている。

参考文献については、前回だったか候補作の剽窃問題があって、その辺の対策らしいと噂されていた。

で、選評である

まず山田詠美はこう書く。“(参考文献の)木村友祐作「天空絵描きたち」を読んでみた。

そして、びっくり! 極めてシンプルで、奇をてらわない正攻法候補作よりはるかおもしろい”

候補作が真似や剽窃に当たる訳ではない。もちろん、オマージュでもない。ここにあるのは、もっとずっと巧妙な、何か。それについて考えると哀しくなって来る”


続いて川上弘美。“結論からいいますわたしは悲しかった。木村友祐さんの声がそのまま「百の夜は跳ねて」の中に、消化されず、ひどく生のまま、響いていると、強く感じてしまたからです”

古市さんのおこなったことは、ものを創り出そうとする者としての矜持にかける行為であると、わたしは思います


吉田修一。“本作に対して、盗作とはまた別種のいやらしさを感じた”

あいにく『天空の…』の方は書籍化さえされておらず入手困難であり、まさにこの辺りに本作が持ついやらしさがあるように思う。”


堀江敏幸。“他者小説の、最も重要な部分をかっぱいでも、ガラスは濁るだけではないか”(原文では「かっぱいでも」に傍点あり)




要するに、古市さん、文芸誌掲載されたが出版されていない佳作を探してきて、うまいこと翻案して小説書いたようである

いや、具体的にどの程度の参考具合なのはかめてないので、なんとも言えないが、当代きっての作家先生方が、かなり憤っておられるようなので、相当なものなんだろう。

是非比較して見たいところだが、「参考文献」の方は、『文学界2012年10月号、だそうなので、確かめるには、図書館バックナンバーを出してもらうしかなさそう。

にしても、古市さん、お忙しそうなのに、純文学文芸誌まで必死にあさって「参考文献」集める努力は大したもんだが。

まあ「情報集め」は嫌いじゃなさそうだしな。

まさかとは思うが、担当編集者うまいこと見繕って選んだのを古市さんに読ませてるとか、そういうことじゃないよね?





参考文献問題に触れてない選評にしても、あまり芳しくない。

島田雅彦曰く“ナルシスト的私語りが中心で、リアリティ構築に必要な細部も情報パッチワークに終始しているのが気になった。”

宮本輝は“他の登場人物たちがみな類型の寄せ集めなのだ。”

どうやら評価したのは奥泉光だけで、“今回自分が一番押したのは、古市憲寿氏の「百の夜は跳ねて」だったが、選考会の場で評価する声はほとんど聞かれず、大分弱った”そうである

“外にあるさまざまな言葉コラージュして小説を作る作者の方向を、小説とは元来そういうものであると考える自分肯定的に捉えた”そうだ。

ここには、小説における“オリジナリティ”とは何か?という問いが含まれている。

ま、小説なんてそもそも「すでにある言葉」の組み合わせでしか書けないじゃん、というのはある。

で、ありものコラージュでも新しいものが生まれればいいけど、山田詠美は「参考文献」の方が「はるか面白い」って言ってるしなあ。

吉田修一は、「参考文献問題」以外にも手厳しくて、“凡庸差別的価値観主人公小説で書いてもいいのだが、作者もまた同じような価値観なのではないかと思えるふしもあり、とすれば、作家としては致命的ではないだろうか”なんて言っちゃってる。

これは、社会学者にして人気コメンテーター(タレント?)としての活動にも少なからず影響しそうな評価だと思うけど、ま、芥川賞の選評なんて、今時の世間に影響力なんかないのかな?




古市さんという人、本をちょっと読んだことがあるのと、時おりメディアでお見かけするだけで、どんな人か詳しくは知らない。

ただ、妙に芥川賞を取りたがっているらしいという噂は聞く。

なんでだろ?

“気鋭の若手社会学者”も“テレビ毒舌が人気の論客”も、実に空虚脆弱肩書きで在ることに、ご本人が一番気づいているということだろうか?

そこで、「学者として研究に力を入れる」ではなく、「いい感じの小説を見つけてきて、うまいこと翻案して芥川賞ねらう」って辺りが、実に薄っぺらいけど。

テレビ知名度得た人が芥川賞狙うって図式では、又吉直樹といつ成功例がある。

あの「火花」という作品が、そこまで傑作かどうかはともかく、この人は本当に、太宰治を筆頭に、文学というものが大好きで、おそらく文学に救われたという経験を持っていて、文学リスペクトしていることが端々から伝わってくる。

文学に対して真摯謙虚なんたろうな、と感じられるのである

片や古市さん、文学とか小説とか、本当にお好きなんだろうか?

あんまり文学とか語ってるのを聞いたり読んだりした印象がないのだが。

前回の選評では、「ナルシシズムが過ぎる」とか「自己肯定というより自己過信」とか、これまたかなり厳しい言葉が並んでいたと記憶する。

単なる自分語りの舞台として小説を選んでいるのだとしたら、ずいぶん旧い、日本文学における「私小説偏重文学観をうすっぺらくなぞっただけかもしれないが。

なんだろうなあ?

社会学者コメンテーターも、ありもの言葉を組み合わせつつ、持ち前の地頭センスと要領でなんとなく現在地位を掴めちまったっぽいだけに、「小説? これくらいなら、ボクでもかけるじゃん」とか思っちゃったんじゃないかなあ、という疑いを禁じ得ない。

で、今後も小説は書いていかれるんだろうか?

追記

えらくブクマついてる。文藝春秋なんて読んでないけど、中身は気になるって人は多いのかなあ、と思ったり。

「参考文献」の著者、木村友祐さんがtwitter発言されておられるので、追記しておく。

本件、「古市さんが窓拭きに興味をもち、取材依頼があり、応じました。窓拭きの達人を紹介しました。古市さんはその取材をもとに書いてます。」そうだ。

選評からの推測で「翻案」などと評したのは、勇み足だった。

お詫びしたい。

なお、「窓拭きの細部以外は、ぼくの作品古市さんの作品は別のものです。そしてぼくは、〝知名度がないゆえに作品を利用されたかわいそうな小説家〟ではありません」とのこと。

にしても、選考委員先生方は、どの程度経緯をご存じの上で選評を書かれたのかは分からないけれど、えらく憤っておられるようで、なにがそんなに山田川上吉田各氏に火を着けたのか、検証してみたくはある。

二冊並べて売ったら、「出版ビジネス」としては面白いと思うけど、難しいのだろうか。

  • anond:20190812012815

    宮本輝さんも何回か前の選評ではポリコレ違反と見なされかねない表現で糾弾されまくっていたが、今回はそうでもないようで安心した

  • anond:20190812012815

    結構な言われようだなあ。 古市、あれだけ「芥川賞ほしいキャラ」を出したり「書きたいことはまだまだある」とかテレビで言っちゃってるので、ここで撤退はしないと思ってたけど、...

  • anond:20190812012815

    芥川賞の、権威性を高める為の生贄に選ばれた。 又吉氏の受賞で被ったであろう大衆迎合路線批判へのバランスをとる意味でも、大衆の目をひきつつ、芥川賞の方向性を示す為のわかり...

    • anond:20190812132517

      ほんとなあ それこそ綿矢りさの昔から大衆迎合しすぎていい加減権威なんてあったもんじゃねえのに、なんで今更キマリは通さないみたいなこと言い始めたんだろう

      • anond:20190812140659

        綿矢りさの受賞作は良かったけどなあ。

        • anond:20190812205031

          綿矢りさよりも横山秀夫の方が良かったのに芥川賞貰ってないのがおかしい

          • anond:20190812205326

            「綿矢りさよりも横山秀夫の方が良かったのに芥川賞貰ってないのがおかしい」 すごい馬鹿をみた。文学賞どころか小説にさえあまり興味もってないんじゃ。

  • anond:20190812012815

    古市って人は、小賢しい学生がそのままきちゃったような人なんで、偶に気の利いた分析は書くのだがそれはたぶんどっかで読んだやつだと見てわかるし、自ら何かを切り開こうとかリ...

    • anond:20190812135713

      将来有望な学生 - 将来 = 有望な学生

    • anond:20190812135713

      脳みそで汗かいて新しいものを考える学者でも、必死に汗かいて経験を積む実業家でもなく、大人になっても机上の空論をふりまわす変な人って感じ。 小賢しい中高生みたいな感じある...

  • anond:20190812012815

    文壇なんてその程度の酷評って昔からザラじゃない? 気にしない気にしない

    • anond:20190812140424

      確かに 芥川賞、直木賞から酷評なくなったら価値なくなる

  • anond:20190812012815

    参考文献の木村友祐「天空の絵描きたち」ってノンフィクションのドキュメンタリー本かと思ったら、普通の小説だったのね 小説を参考文献に小説書くってどうなのって感じだな(引用...

  • anond:20190812012815

    木村友祐ってWikipedia見たら単行本化に恵まれない人なんだなぁって思った 「イサの氾濫」2011年すばる掲載で三島由紀夫賞候補とかになっても集英社から単行本化せず5年経って未來社と...

  • anond:20190812012815

    ここで指摘されてる「盗作でもオマージュでも剽窃でもない嫌らしさ」ってネットでよく起こるパクリ炎上問題と通じることだな ネットでのパクリ指摘に対して、だいたい良識派名乗る...

  • 古市さんのダサいところ

    とある小説が面白かったんで、有名人パワー駆使して原作者に会いにいってネタ元まで紹介してもらって、そこで聞いた話をモチーフに自分なりの小説かいてみたんだけど、「参考文献...

  • https://anond.hatelabo.jp/20190812012815

    出版社が計画生産した著作多すぎってとこなんかな。

  • anond:20190812012815

    選評しか読んでないのでこういうことを言うのはずるいかもしれないが、 これがそもそも候補作になること自体の妥当性はどうなの???

  • anond:20190812012815

    青葉「無名作家の応募作からのパクり問題はもっと社会で認識されるべきだし、許してはならない」

  • anond:20190812012815

    あっおもしれーなで参考文献にして一応自分でも調査して書くって学生がやることって感じ 参考文献文献1つなら論文にはなれないだろうけど、論文に書く手法に似せてやったものが文学...

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