2015-09-20

「心が叫びたがってるんだ」はまさしくライトアニメファン向き

連休初日という事で、一つ映画でも見ようかという事で「心が叫びたがってるんだ」を観てきた。

長文なので、ブログにでも書けばいいんだろうが、私のブログは極めてテーマ限定したもので、書くところがないので、増田に書くことにする。


あらすじを超ザックリ言うと、幼い頃のトラウマで上手く喋る事が出来なくなったオカッパと、空気マン、空気ガール、怪我で夢破れた金属バットが、地域交流会の出し物でミュージカルをやる事になって、その過程でそれぞれの問題と向き合っていく、みたいな話である


意外とよかったので、皆さんの連休の過ごし方の一つのヒントになればと思い、見所と気になった所を列挙していこうと思う。


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見所1

描写のエゲツなさ」

基本的には上記あらすじから想像できるような、爽やかな青春群像劇である

しかし、随所にエゲツない描写差しまれてくる。


まず、4人の主役の1人であるカッパ、順のエピソード物語冒頭で語られるのだが、それが画に登場した瞬間に、「こんなのイヤな予感しかし無いじゃん」という不穏さから、「うわー、これ見たくない見たくない」と見事に展開していくのだ。

序盤でいきなり物語に引いてしまうか、「ん、これは創った人、凄いぞ」となるか決まると思う。


次に、キャラ描写も「うわあ、妙にリアルでやだなあ」と思わされる。

ここでは、重要人物、順の母、泉を挙げよう。

泉は序盤とそれ以降で人の弱さを見せつけるように、結構キャラが変わる。

それが、「まあ、そうなっちゃうのもわかるよ・・・」という感じで、さらに妙な厚みを持たせるのが、彼女職業だ。

一応、割愛するが、見た瞬間「うわ、有りがち!」膝を叩き、その職業であるだけで、なにか彼女の抱えている事情説明するオーラのようなものが見える気がするのだ。

これは若い頃、その職業の方とイマイチうまくいかかった私自身の偏見かもしれ無いが。


もう一つあげると、作中で出てくる「怪我をする描写」だ。

ここは画の力が凄い。

見た瞬間に「うわあ、イタタタ」となるし、絵面が容赦なく汚く、怪我一つでその後の憂鬱さまで伝わってくる。


他のレビューで、「変に生々しい」というのを見かけて、その点は同意なのだか、その方の、「アニメなのに現実に引き戻されて乗れ無い」というのと、私の評価は逆で、ここら辺でグイグイ掴まれしまった。



見所2

構成の上手さ」

作中で登場する劇中劇が、本筋とうまくリンクしていく。

順と、主役の1人、空気マンである所の坂上が劇中劇ストーリーについて話し合うシーンがあるのだが、終わってから振り返れば、これがまあまあ重要伏線になっている。


また、後半でこの劇中劇と本筋が同時進行するシーンは、私調べでは最大の見所と言ってもいい。

クライマックスは「それは読めるよ〜」というベタ演出なのだが、「でもそれしか無いよね、待ってた!」という形になるのだ。


それというのもフリが効いているからで、「おっ」と感心させて、その上でクライマックスに期待を持っていかせる構成うまい



見所3

秩父の美しさ」

やたら西武線ポスターを見かけるのはそういう事か。

管理はされてるがちょっと古びた神社や夜中にポツンと浮かび上がるコンビニは妙な実在感がある。

北関東の豊かな自然と貧しい娯楽、少ない溜まり場が、閉じて煮詰まりがちな人間関係をうまく演出していると思う。



見所4

主人公格の2人の歳なりの幼稚さ」

主人公格4人の中で、オカッパ順と、金属バット田崎は、わりとナイーブに描かれる。

感情的になったり、恥ずかしいシーンが多い田崎は、「まー無理もないかなー」と思わされるくらいには置かれてる状況がちょっと気の毒な感じなのだが、順の方は「おいお前さ」と言いたくなる幼稚さで大問題を引き起こす。


しかし、それがいい。

映画に登場する高校生は「そんなまとまった思考するか?」となりがちで、「大人が考えた高校生である事が多いように思う。でも、本来高校生なんて劇中の順くらい自分が整理できて無いもののはずだ。

から、一瞬「それ無くねえ?」と思わされる順の行動も、「いや、高校生はこれでいい」という風に感じられる。


物語に協力する為に大人な台詞回しや行動を強制されがちな「劇中のティーン」だが、これくらい幼稚な方がリアルだと思う。



見所5

キャラの小物」

順の小物に注目したい。

彼女は今時ガラケーを使う。

そのショートメール機能コミニュケーションをとるのだが、小さい彼女一生懸命ポチポチやるので、さらに小ささが強調される。

また、彼女リュックを背負っているんのだが、これがいい感じのダサさで、彼女の「他人コミニュケーション出来ない」事をビジュアルでうまく説明しているように思う。


他にも空気マン坂上の高校生にしては小慣れたファッションや、田崎の中途半端ワイルドファッションも、こだわって創ったキャラを感じさせる。


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というわけで、本筋も良いんだが、その周辺も結構楽しめる。

では気になるところを。


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気になる所1

セリフ説明的」

バケモノの子」ほどでは無い。

でも、やっぱセリフ説明しすぎな気がする。

この話のテーマの一つは「言葉」なので、勢いセリフ重要なのはわかるのだが、それでも心情に関わる所では、「ここは絵でほのめかして、あとで言葉にしてもいいんじゃ無いかなー」という点は感じられた。



気になる所2

「仁藤のキャラが薄い」

ここまで言及されなかった最後主人公空気ガール仁藤だが、彼女キャラが薄すぎる。

ナイーブな順、田崎と、空気を読む坂上、仁藤が対称をなす中、坂上の空気っぷりに関しては、劇中で説明がなされ、そのことでキャラが立ってくる。

しかし、仁藤に関してはパーソナリテイの描写が薄い。


劇中で言及される「彼女特有のいやらしさ」や、仄めかされる「弱さ」について、もう少しエピソードがあれば、俄然魅力的なキャラとして立ち上がってきたと思う。

彼女基本的はいい奴なのだから



気になる所3

クラスメートがみんないいヤツすぎ」

いい意味で幼稚な順や田崎が、物語を混乱させて見せ場を作る中、じゃあクラスメートはどうかというと、これがちょっとブーブー言うだけで、物語の進行に非常に協力的だ。

特に順に対する寛容さ、というか子供の世話でも焼くような態度は、「いや、高校生なんてもっと聞きわけ無いでしょう」と思ってしまう。

こんな高校生活、送りたかったよ、ホント



気になる所4

主題歌

ここは評価真逆に分かれそう。

私も気になるとしたが、全面的ダメってことでは無い。

主題歌の内容は映画の話と似ていて、両方とも「言葉によるコミニュケーション」を主題としている。

そこらへんは放送作家出身の、作詞家秋元康らしいところで、企画ありきで行ったのだろう。


問題は曲のスピードで、テンポが急に早くなるように感じられるのだ。

直前までスタンダード名曲ミュージカルをやって、それでこの早い四つ打ちの主題歌はいるので、「え、そんなスピード感ではやってなかったでしょ」と戸惑う。


ユニゾンも綺麗で、まあまあハマってるんだが、そのスピード感だけ、入った時にちょっと違和感があった。

ただ、観客で立つ人はかなり少なかったし、大枠では大多数を不快にするような違和感ではなかったんだろう。人によってはどハマりという評価を下せるくらいの微妙ラインだと思う。


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さて、鑑賞後の気持ちが冷めないうちに見所と気になる所を挙げた。

この作品の売り文句が、「あの花スタッフが送る青春群像劇なのだが、私はあの花という作品を「存在している」こと以外知らない。

で、アニメは好きだが、最近アニメありがちな萌え声演技が苦手で、俺物語からも脱落してしまったくらいの、アニメライトファンである


そんな自分からしたら、「思ったより全然いいじゃん」と感じられる作品だった。

果たして、先輩レビュアーが挙げた、「コアなアニメファンには覚めちゃうが、一般のライトファンには受けそう」という評の、肩翼を担う形になった。


さて皆様はどう評価するだろうか。

連休に空きのある方は是非、映画館ウォッチしてはどうだろう。

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