2020-02-24

The Last of Usクリア(若干ネタバレ

語り尽くされていると思うのでゆるく。

ものがたり

おっさん少女ロードムービーですが、おっさん過去子供をなくしており、少女も周囲の人を全て無くしています。この状態に導いたのはなんとキノコ。煙さんが吐くアレです。ともかく街中がキノコ人間だらけになっている。そして例によってキノコに噛まれるとゾンビゲーのようにキノコ人間に早変わり。なのでこの二人の過去結構悲惨だったんですね。キノコに違いない! と早合点した兵士(というかその上司)におっさんの娘は殺されます(この娘はスタート時のプレイアブルキャラで、伏線化するのかと思ったら写真以外に全く登場せず終わります)。

で、その悲惨状態希望の光が灯されます。なんとおっさんが知り合った少女抗体の持ち主だというのです。おっさんは運び屋としてサイコな知り合いたちとやんちゃやらかしながら旅を続けます。途中トラップを仕掛けまくるシャイニングジャック・ニコルソンばりの禿げ上がった人や、ラッパーっぽい兄ちゃんたちと殺し合ったりもします。なぜかといえば、抗体を持つ少女医療機関へと預けるためです。お届け先は荒廃前の世界政府敵対していた『ファイア・フライ』と呼ばれる連中でした。

メッセージ

ところがだんだんおっさんは命を守りたいがあまり殺人鬼化してゆきます。言ってしまえばシェイクスピアとかそういう歌舞劇テーマにある葛藤劇の一種と言えるでしょう。一体何が正しくて何が悪いのかという疑問を常にプレイヤーへと投げかけるわけです。例えば一番安らぐキリンさんのシーン。これは途中で人間がいない都市部で、すっかり緑地化した中心地にてキリンが草をはむというものです。人間がいないからこそ楽園のような光景が繰り広げられるという、チェルノブイリ原発の赤い森をモチーフにした名シーンと言えましょう。こうしたシーンは常に何かを引き換えに何かを手に入れる、という構造の徹底により表現されます。それはゲーム内の1エピソードである鹿肉取引一つにおいても、車を入手する際の貸し借りに関しても理解されることです。主人公おっさんは中盤の後半付近で「生きるためには殺さなくてはならない」と述べます。このような出来事から、「何かを得るためには、引き換えに何かを捨てる」といったテーマが浮かび上がります。この何かをするための対価が強くメッセージとして打ち出される理由は、荒廃後の世界貨幣に変わる価値があるとすればなにか、という疑問が制作側にあったと仮定できます。この仮定に寄って立つならば、それはもう一つのテーマである命の軽重にかかってくると思うわけです。つまり暗に「金なき世界で命より重いものがあるとしてそれはなにか」、あるいは、「命が最も重たいはずなのに殺し合っている」、というメッセージ性を背負っていることになります。そして作中で命は安易取引材料として扱われますアメリカ代表とした世界荒廃物語ブームポストアポカリプスでしたっけ)は結局金に疑問を持つアメリカ人がユートピアどころか、カタルシスであるディストピアを夢見ているようにすら思えて来ますもっとも今作に限っていえば、だいぶ警句的な気もしますが。

追記:完全ネタバレ

ゲームラスト数分になると、少女の中にいる菌が抗体によって抑えられているのではなく、共存していることが知らされます。この菌糸の絡まった脳によって世界中の人々を治療する因子となるか、少女を殺さずに人類を見捨てるか、という選択を迫られたジョエル少女エリーを救い出します。仕組みとしては菌類が発生させる電子連絡手段、クオルモンをヒントにしているはずです。この少女の脳という仕組み自体そもそも共存というテーマで締めくくられており、実は上記で述べた「取捨選択」の答えは小さな少女が持っている、というラストになっています

そして頭蓋を開ける行為パンドラの箱連想させます。やや飛躍しますが、彼女パンドラのツボ(本来は箱ではなくツボ)であったと仮定した場合、災厄の中心にいる女という役割をきっちり演じきっていることになります。生い立ちは不幸で、彼女自身自分身の回り人間はみな死んだと告白します。そして彼女のせいでホスピスファイアフライ結果的に大量殺害されました。彼女は災厄と幸福の鍵を脳内というツボに温存しており、全人類にとっては全く救いにならない生き方ジョエルにより強制させられてしまますもっとジョエルにとっては娘と重なる彼女こそ救いそのものであり、エリーにしてみればジョエルは自らを許容し、許す存在であったに違いありません。事実ラストでこの裏付けは取れます。つまり二人の間には共存というよりむしろ共依存関係存在していることになります

共依存関係の裏側は「弱さ」です。そういえばファイアスフライの女リーダーも疲れ切ったという手記を残し、打算的にエリーを殺そうとしました。ジョエルの弟も当初は保身のあまりエリーを届けようとはしません。モブの連中は自分たちが生きるために他人犠牲など問わない生き方します。全て各人の弱さからもたらされた結果であり、一種超人的な人間であるジョエルもまた、娘を失った空疎記憶から立ち直ることができません。

ゲーム

ドラマでもいいです個人的には。洋ドラでもまあいいかなという。

ゲーム性としては一本道かつクローズドワールドステルスシューターですからプレイ感は他ゲーと似た感じにはなります

難易度中は同タイプゲーム基準にすると難易度イージーくらいなので、撃ちもの苦手でもどうにかなるかと。

序盤はおっさんを隠して仲間に撃たせて弾丸節約もできますし、おっさんの殴りが強いので、殴り続けてるだけでも中盤まで進めることができます。多分映画のようなストーリーに没入できればいいと考えてるからこそこの難易度なんだろうな、という印象ですかね。

サバイバルモードでは緊張感が上がった、もはや別ゲーという声もあるそうですが、ハードモードってもともとそんなもんかと思います

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