ラジオ「Session-22」書き起こし。https://www.tbsradio.jp/319359
"大学生のデート経験率は過去最低" 草食化とも報道された「青少年の性行動全国調査」その結果から読み取れる本当に大事な事とは?
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荻上:
今回、データから見えてくるものと、それを解釈するために社会の外側の変化を見ていくもの、まぁいろんなやり方があるんですけれども、今回取った調査の中で、例えばそのセックスをしなくなってきている、より厳密に言うと若いうちにセックスを経験するという人が減っている、ということの要因として何かピックアップできるようなものはあったりするんでしょうか?
永田:
ちょっとまず丁寧に行きたいのが、「分極化」なので若いうちに経験する人はまぁいます、一定数。しかしながら遅く経験する人がそれを上回る勢いで増えているので、結果として低下傾向にあるっていうことになるっていうのが分極化ですよね。
荻上:
はい。
永田:
それを踏まえて、経験しないっていう理由としてなんなのかっていうことを考えてみた場合に、今までの議論だとリスク化っていうことが言われてたんです。
そのリスク化っていうのはどういうことなのかっていうと、例えば妊娠するのが怖いとか、感染症が不安だとか、そういう風な事をまあ根拠なんじゃないのかっていう風に言われていてるんですけども、ちょっと今回調査で見えてくるところは、それだけではちょっとうまく説明できないのかなっていう風に言われているところではあります。
それに代わる理由として、相手がいないとかね、早すぎるとかね、あるいは特に理由がないとかね、そういうのが割と性交を経験してこなかった理由として、上の方に挙がっているんですけど、面白いのは「(性交の)相手がいない」っていう風に答えている人のうち、現在付き合っている人がいるのに「相手がいない」って答える人が大学生で40%、大学生で30.8%(注:聞き取った結果ママ)。
荻上:
うーん、なるほど。
永田:
南部:
定義が違う、ってことですか?
荻上:
ネット上とかで言われてる「自分非モテだから」とかじゃなくて、何か別の定義で「相手がいない」と言う人が増えている、と。
永田:
荻上:
あるいは、まだその年齢ではないからというような、まだ大人じゃないから、みたいな、そうした理由を挙げる方もいますよね。
永田:
結婚でも結構そうで「今付き合ってる相手いて、結婚したいなと思ってるけど、でもちょっとまだ結婚は……」ってよく聞くでしょ?(笑)それに置き換えてイメージすると割と分かる。
南部:
そうかぁ。
永田:
ちょっと古い価値観で言ったら、交際している相手がいて、25、6になったんだったらもう結婚するだろうっていう価値観で、ある時期の日本って動いていたんだけれども、もうそうじゃなくなってきて、別に付き合っているからといって、あるいはある程度の年齢になったからといって即、結婚するとは限らないと。
荻上:
ふーん。
永田:
で、その構図が今度は恋愛にも持ち込まれているっていう風な状況かなっていう風に見ることができるかなと思いますよね。
荻上:
平均が何回のデートかってのは分かりませんけれども、たとえばまぁ10回くらいデートしたらそろそろ行く場所もなくなってきて、でも一方で親密さは深まってきて、そろそろじゃない?みたいな印象があるかもしれないけれども、別に今たとえばチョイスはたくさんあるわけですし、なおかつ、しなくても楽しいんだったらそのままの関係で継続できるということだって当然あるわけなんですよね。
ある意味ではセックス至上主義、セックスがゴールとかではない、みたいな感覚が緩やかにある人たちも増えてるということなんでしょうかね?
永田:
そういう流れかなっていう、それがその新しい世代の考え方なのかなという風には思います。
面白いのが「大人になるために必要な事って何ですか」っていうことに対して、性交経験があるっていうことを答えた人は結構少ないですね。
荻上:
はい。
永田:
そうではなくて経済的に自立をしているとか、あるいは親から自立しているとか、そういうところをやっぱり挙げる人がかなり多くて、何て言うのかなその、恋愛しました、性交します、っていう手前のところに、もっと経済的に自立しようとか、しっかりした人間になってからそういう風なステップに行こうっていう風な考え方が挟まってるっていう風な状況として見ることができるんじゃないか、っていうのが今のとこの見立てですね。
荻上:
なるほど。
大人になるには「やらなきゃね」みたいな価値観って、だんだん後退していると。
逆に今あの気になったのが、例えば80年代90年代は学生も親の財力などで今の若者たちよりも余裕があったと思うんですね、経済的な。
となると、むしろそういったものにアクセスするための期待値みたいなものだけが維持されている結果、働いて自立しなければセックスとか結婚ってしちゃいけないものだという風になっているのかどうか、この辺りはどうでしょうか?
永田:
性交に対する価値自体が減じているわけではないとは思います。それはやっぱりすごくいいものとして、まぁ結婚と同じですけど、キープされていて、大事なものであるからこそ、しっかり準備が整って相手との関係に確信を持ててからそっちに行きたいと。
それが確信持てないような相手だったら、別にあの最終的に性交に至らなくてもいいし、交際しなくてもいいっていう風な基準になってきているっていうことかなっていう風に思いますよね。
荻上:
ということは恋愛とかセックスに対するある種の価値観、ポジティブさというのは変わらないのが上昇してるのが減少してるのか……
永田:
そうですね、性交の理由を聞いた時に、なぜ性交に踏み切ったのかっていうこと考えて、古い考え方だと「なんか恥ずかしいから」とか「経験したいと思ったから」とか、そういうのが多いかなって感じなんですけど、結構前の調査からそうなんですが、やっぱり「相手のことが好きだったから」とか「愛があるから」とか、それがやっぱり大きいんですよ。
愛と性と交際みたいなものの一体感みたいなものは失われてはいないということだろうなという風に思います。
それは結婚もそうで、性と愛と生殖が三位一体だっていうのって、ずっと前から指摘されてることなんですけど、なかなかこれ三つはバラバラになりにくいと。
それと同じような感じで恋愛においても愛情と性行動と「モノガミー規範」って言いますけれど「一対一で付き合っている」っていう風なことを大事に思うっていうことは、これは分かちがたく結びついているということだろうなと思いますよね。
荻上:
そのあたりは結構不思議で、僕は例えば分極化していくのであれば、そのモノガミー規範が弱まっていく、つまり一人が複数の人と恋愛していても合意してあればいいじゃないかであるとか、あるいはそのセックスをしているっていうことに対してわざわざ人に言わなくてもいいし、そうしたコミュニケーションを取らなくてもいいじゃないかとか、あるいは「この人とはセックスだけ」「この人とは恋愛まで」「この人とは結婚まで」とか、結婚というものが別にゴールじゃないし、そこも多様化してバラついてもいいのかなと思いきや、そこは割と強固にむしろセットになったまま、タイミングが遅れているっていうところが、気になったポイントというか、意外。
永田:
それ面白いとこですよね。まさに海外の結婚とかそうなんですよ。
つまり日本の場合だったら戸籍上の婚姻関係という選択肢一択しかないんですけれども、別姓もまだ法制度化されてないような状態なんだけども、例えばフランスなんかだったら色んなバリエーションがあるとか、その中で自分にとって何が一番いいのかと選んでいくっていう風に、選択肢広げる方法に多様化っていうのが進んでいくっていうパターンが一つあるんですけども、日本の場合にはなんとなく「多様になるよね」っていう風なことは知ってはいるんだけれども、実質的な選択肢が一個しかないから、つまりがっつり付き合うと最終的には結婚に結びつくような恋愛がちゃんとした恋愛である、っていう風な選択肢が一つしかないような状態になっているから、いまチキさんが言ってくださったようないろんな選択肢の中で自分がどういう風な生き方を選んでいくのかっていうところまで、「まだ」至ってないのか、まあそういう文化なのかはちょっとわからないとこなんですけども、面白い状況だなとは思います。
荻上:
そうですね。これがなんかちゃんとした恋愛と、あるいはその「遊び」とか「捨てられた」とか、そうしたワードって今でも飛び交っていたりするわけじゃないですか。そうした規範意識みたいなものがむしろ強化されているというのはなぜなのかということも分析対象になってきますよね?
永田:
それは私もとても関心があるところですね。
あのつまりコース料理しかダメだって感じなんです。ビュッフェ形式で色々多様なんだから自分が好きなものをたくさん取ったりとかしてもいいじゃない、で、アラカルトで色々頼んでもいいじゃない、ってなるかと思いきや、いろんなメニューがあるのは分かったけど自分はコース料理を食べます、っていう感じでみんなそれを選んじゃってるっていう状況です。
荻上:
今までは「1時間で食べようね」というものだったものが、なんとなく2、3時間でゆっくりと、というような状況になっているわけですね。
永田:
そうですね。
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ラジオ「Session-22」書き起こし。https://www.tbsradio.jp/319359
"大学生のデート経験率は過去最低" 草食化とも報道された「青少年の性行動全国調査」その結果から読み取れる本当に大事な事とは?