はてなキーワード: 恋わずらいとは
どんな女性かは省く。特徴を書き並べてみると自分がお花畑状態なのがはっきりわかる。
あっという間に舞い上がってしまい、身なりや容姿、体力や性機能が気になりだした。情けない。
ちょっと口に出したくない妄想と衝動が起こっては理性が押し止める。
憂鬱な気分になり食欲が減退した。
とにかく理性が押しつぶされて間違いを起こしたら家族に顔向けできなくなる。それだけは避ける。
伴侶がいるのに良い年して恋愛がしたいとか肉体関係を持っている恋人がいるとか、そういった手合はまったく馬鹿にしていた。くだらないと。
モテることなんてまったくなかったためか恋愛感情については、苦しくて非合理で厄介なものだ、という屈折した認識。恋の駆け引きとか、そういう概念がまずアホだ。
運良く結婚できてからは、これからは恋愛しなくて済む、と安心すらしていた。
そして結婚してからこのかた、妻以外の女性に対して好色な目で見ることはあっても特別な好意を抱くことなんか一切なく、今後も全く無いだろうと思っていた。
それがこの無様。
最初、音がごちゃごちゃしていてうるさくってナルシスティックでなんて気に触る曲だろうと思った。
でも音の抜き方が絶妙でおしゃれでどうしてもやるせなくてかっこいいと思ってしまった。
ベスト盤を借りてきてひと通り聞いてその一枚で充分で、ほかのバンドと同じようにそのまま記憶の隅に眠ると思った。
それでも他のデータがウォークマンの残り容量を食っていってもたまに取り出しては聴いて、私は椿屋四重奏を消せなかった。
彼らを見つける前の話をする。
もし音楽に物心がつく時があるならば私の場合志村正彦に出会った時だ。
シンプルなのに予想と異なり期待を上回る音が大好きだ。だからこそ限られた曲をすべて聴く勇気が今でも出ない。すべてが予想通りの志村正彦の音楽になってしまうのが恐ろしくて堪らない。
必死になって代替品を探した。彼のルーツ、好きだと話した音楽、同年代の音楽。分かったのは私はロックがあまり好きではないということと同じものはないということ。
閑話休題。
月日は経ちひょんなことからノイジーな音楽が入り用になった。私のウォークマンの中で一番うるさいのは椿屋四重奏だった。周りの音を掻き消せば事足りた。
深紅なる肖像、薔薇とダイヤモンド、TOKYO CITY RHAPSODY、CARNIVAL。
アルバム一枚分ずつ椿屋四重奏がウォークマンを侵食していった。彼らは欲しい音を激しい音も穏やかな音も確実に鳴らしていった。
孤独のカンパネラを鳴らせ、一枚だけが残っても躊躇はなかった。その名の通り椿の落ちるような鮮やかな解散はただただ美しく見えた。
椿屋四重奏が残した映像はあまりにすくない。音も画面もバキバキでみにくかったが中田裕二の歌だけは際立っていた。ナルシスティックに聞こえた歌は、つぎはぎだらけの架空のかっこよさではなくそのまま彼から出ているものだということを数年ごしに知った。
もっとその声が欲しくなってしまった。中田裕二は生きているから。怖々と私はソロの楽曲を試聴した。椿屋然とした曲は最初なじまなかった。それでもやわらかであでやかさを増した楽曲達は椿屋四重奏よりもずっと好みだった。
椿屋四重奏と同じ数だけのアルバムがウォークマンに収まる頃には私は椿屋四重奏よりもむしろ中田裕二に魅入られていた。
いつから手遅れになったのだろう、とたまに思う。
ギターの弾き語りだとその声がよく引き立つことに気がついた時から?
école de romantismeのさみしさを孕んだうつくしさに聞き入ってしまったから?
ライブごとに曲のアレンジを変えた最高の状態で演奏しつづけるさまを見せられたから?そもそも椿屋四重奏をきいた時からだろうか。
春あたりに一年に一回のペースで出るフルアルバムとそれに伴うバンド編成によるツアー、全国での弾き語り、年によってはトリオなどのトリッキーな編成のツアーをこなされたらほかに気がうつる暇もない。去年はひまだからなんていって二作品もアルバムを出してしまった。
ワイン、ウイスキー、日本酒と忙しなく熱を注ぐのを見てしょうがない人だなと思う。調味料の話します!と話してもの足りなさそうに切り上げるのを見て面倒な人だなと思う。
でも、アルバムが出るたびライブを見るたび、何度でも魅入ってしまう。最高の演奏の後、これからも好きなようにやりますとへらへらと笑っているのを見たらお願いだから好きなようにやってくれと心から思うのだ。
まるで炎のように常に揺らめいて姿を変えて魂ごと取り込まれてしまいそうなほど、見入ってしまう。
血を吐き出すようだった椿屋四重奏という季節に囚われないでいい。
でもたまに歪んだエレキギターをかき鳴らすのも聴きたい。
おだやかなPredawnも激しい群青も全部等しく愛している。
昨日、夢を見た。
自分が生まれた場所は田舎で、文化の伝搬が一年遅れで来るような辺境だった。
ただそんなところでも人並みの青春は送れる。部活だったり、恋だったり。
夢で会ったのは、好きだった人だ。
小学生の頃からの友人で、気づいたときには恋愛対象として意識していた。
中学生に上がった頃、その人を想い眠れなくなったことがある。
朝日を迎えたときは我ながらバカだと思ったが、今になってそれが恋わずらいなんだと気づく。
その人は鬱屈し性格に難のあった自分を、真っ向から批判し、優しく諭してくれた。
両親にすら信用されていない自分は、まるでその人のことを聖人のように感じていた。
そんな人と一生過ごせたらどんなにいいだろう。
それはきっと幸福で、どんな苦難でも乗り越えられるのかもしれない。
そんなことを考えて、その人に告白をしようとした。
そう、告白はしなかった。いや出来なかったというのが正しいか。
臆病だった自分は「好きな人いるの」と告白の前にいってしまった。
そのとき初めて、自分のよく知っている人とその人が付き合っていることを知った。
そんな相手と夢で久しぶりに会った。
懐かしい制服。当時は凄く嫌っていたのに、今はとても愛おしく感じる。
そして目が覚めた。
目が覚めると、自然と涙がこぼれた。
もう何年も帰っていない故郷へ、久しぶりに帰ろうと思う。