私は思春期の数年を海外で過ごし、大学入学とともに帰国した、いわゆる帰国子女だ。
そしてたぶん、機能不全家族育ちだ。
色々あって、自分がわからなくなって、人と会話が難しくなった。
世の中の帰国子女といえば自信に溢れてきらきらと活躍している人が多くて、自分との格差にどんどん自信を失っていく。
相談しようにも、相談できる人も、同じような境遇の人も、そういったことを専門にされている方とかも見つからなくて、誰かいないのかなと思ってすこし書いてみることにした。
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インターネット上で、機能不全家族とか毒親というワードをよく目にするようになった。専門家の方が書いた本を読んだりネットで当事者の話を見ている中で、自分の生きづらさの正体が分かってきた。
海外赴任などで家族で移住する場合、子にとって家族の関係が良好であることはすごく重要だ。学校生活が完全にアウェイな状態から始まるのだから、心の退避所たる家庭が安定していることに越したことはない。
私の家庭はたぶん機能不全家族で、家の中での母国語のコミュニケーションもままならないのに、海外に行った上に現地の学校に入学してしまったものだから、家の外でも言語的に孤立してしまっていた。
家では母国語でOKだが健全なコミュニケーションが少なく、外では言語が不自由でコミュニケーションに苦労した。
苦労して、挫折したのだけれど、親は放任主義であまり助けてはくれない。というかそもそも私の家族には会話が少なく、「相談する」という文化もなかった。日本にいた時から学校での出来事を聞かれることもなかったし、話そうと思うことも少なかった。「授業はわかる?」とか、「先生はどう?」とか、親の側から声をかけてもらうことがなくて、それが当たり前だと思っていた。
最悪なのは車社会で学校も遊びも親による送迎で行動しなくてはならなかったこと、ビザの関係でアルバイトも出来なかったこと。金銭的にも自由がなくて、意識を外に向けることが出来なかった。ひたすら学生として最低限の通学と勉強だけをして、帰国を夢見ていた。帰国さえすれば、昔の友達に会って、働くことも出来て、言葉の心配もいらなくて、、
外国でひとりで外を出歩くのは危ないと思い込んでいたし、学校⇔家のガチガチに固まったループから抜け出したいという思いをもつことも悪いことのように思えていた。
今あの時の自分と話せたら、「外はそれほど怖いところじゃないし、ネットで調べてどこにでも行きな!やりたいことやっていいよ!」とか言ってやりたい。
滞在中は「このつらい滞在を耐えて日本に帰りさえすれば楽しい日々が戻る」とひたすら思っていたのだけど、いざ日本に戻ってきたらコミュニケーション経験が乏しすぎて浮いてしまい、それを気にして自意識過剰になり、鬱になり、家族関係が悪化し、なんとか取り戻そうと情報を集めたり考えたことをノートに書き留めたり新しい場所に飛び込んで沢山人と会ったり通院したりカウンセリングを受けたりしてみたが、どんどん悪くなるばかりで帰国後10年近く経った今 ほんとうに人と会話ができなくなってきてしまった。マズイ。
なんだかもうよく分からないのだけど、本当にコミュニケーションが上手くいかない。
返答が思いつかないし、思いついてもしっくりこないのだ。
人との会話で、些細な雑談でも一言ひとことの返しに「適切さ」を求めて、すごく考えてしまう。
海外生活の中で外国語で発言をする時「どういう表現をしたらいいんだろう?」とか、いちいち考えながら喋らなくてはいけなかったのも一因かも。
「こう言われたらこう考えてこう返すべき、というパターンがある筈なのでそれを探して返さなくては」、っていう思考に取り憑かれてしまった。
正解のパターン候補として幾つかの振る舞いのパターンが脳裏に浮かんで、その是非を検討する。
「教科書通りのような会話ならこうかな?(自信はない)」「憧れのAさんだったらこうするだろうけど私がそうしたらこの人はびっくりしてしまうな」「この間同じような場面でBさんはこうしていた」……
自分に素直になりたい!とは思うんだけど、自然に浮かぶはずの「自分のきもち」がなかなか出てこない。
「ありがとう」「ごめんなさい」「恥ずかしい」くらいは出てくるんだけど、どうしても咄嗟に無難な答えを作ってしまう。
加えて帰国後は、帰国子女いじりを気にしすぎたせいで、「普通ならどうするか」、「相手がどんなことを期待して接してきているのか」を考えるようになっていった。また、母国語で考えている時と第二言語で考えている時で性格がすこし変わってしまうことに気づいてから、日本語でも外国語でも口にすること全てが自分の本心ではない気がしてきて、ますます自分がどういう人間なのか分からなくなってしまった。
この表現力の問題は鬱になってからさらに悪化した。頭が回らなくなって、少ないながらも以前は使えていた語彙さえも出なくなったし、とっさの逃げ道の冗談なども思いつかなくなった。
いまでは相槌を打つのが精いっぱい。
人と話す時、フルオートでにこにこしてしまうし挨拶くらいは出来るので第一印象は良いらしいけど、味気のない相槌しか打てないし話題も振れない。たまに話せても的はずれなことを言っていたり、浮いたことを言っていたり、無理してる感じがしてたり、そんなつもりは無いのに帰国子女感のあるドヤ顔発言みたいになっているみたいで脳内反省会が白熱してしょうがない。
だれとも一線を引いた付き合いになってしまって、どんどん孤独になっていっている。
この文章もかなり絞り出して、可能な限り本心に近づけて書いた。自然に出てきたものではない。
こういう人いない?いないの?
こういうのってどうやって解決していったらいいんだろう?
ネットにいる機能不全家族とか毒親持ちの方は何だかんだで結婚されていたりして、自分の居場所ができていて羨ましい。
私もなんとか実家は出て経済的にも独立したけど、家族と距離を置く中でいよいよ社会から孤立してしまった感じもする。
しかし、これを書いていて改めて思ったけど、自信のなさとか心の弱さは生まれつきな気がする。
海外生活なんて貴重な経験させてもらったのにな。なぜ活かせなかったのか。
早く安心したい。
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たまたま見つけました。古い記事なのでもう見ておられませんかもしれませんが。 私も全く同じです。 なかなか同じ境遇の人に出会えることも少ない事例ですので、とりあえずお伝えし...