2016-02-21

劇場版ラブライブ!批判考察

http://anond.hatelabo.jp/20160221211517

 ブログではその後、キャラクター描写観点から批判が展開されている。自分アニメラブライブキャラクター描写について感じたことについては既に言及した部分が多いが、この部分の論述についても内容的には概ね同意できるものである

 ただ、だからそそう考えるのであれば、突っ込みたい箇所がある。

以下では、以上で書いてきたのと本質的には同じことを別の観点から論じてみたい。それは、キャラクター描写という観点である

(中略)

このように8人のメンバー主体性が奪われてきた一方で、それと反比例するかのように各メンバー薄っぺらキャラ付けは強化されてきた。(中略)

たとえばこの劇場版において花陽が最も目立つシーンは、花陽がいつも通りにお米キチガイであるということがこれでもかというぐらいにしつこく描かれるシーンである。この劇場版において、花陽がどういう想いでアイドル活動をやっているのかとか、メンバーとのあいだにどんな新しい人間関係が生まれたのかとか、そういうことは全然描かれない。その代わりに、とにかく花陽はお米が大好きで白米が食べられないと気が狂ってしまうほどだということだけが強調されるのである。端的に言って、この映画を作った人たちは小泉花陽バカにしているのではないかと思う。


キャラ付けにおいては現実アイドルだってそんなもんじゃないかと思う人がいるかもしれないが、そうではない。たとえば、いつもカメラ目線を絶やさず満開の笑顔視聴者アピールする「まゆゆ」という優等生キャラクターがなぜ魅力的なのか。それは、ファンがそこに渡辺麻友の野心の大きさと意志の強さ、そして完璧アイドル像への執念を見て取るからであるスキャンダルで名を売ったり、アイドルの殻を破る破天荒な行動を取るメンバーたちが人気を集めるなかで、それでもなお自分が信じた理想アイドル像にこだわり、それに徹しようとしている。アイドルファン距離がぐっと縮まった現代において、完璧アイドルを演じ続けることの困難さ、時代遅れさを自覚しつつも、それでもなおその道を貫こうとしている。その職人気質ストイックさ、生き方が人を惹きつけるわけである。このように、アイドルキャラ付けは表面的にわかやすものであると同時に、その人の人生や信念と深く結びついたものでもあるからこそ、見る人の心を惹きつける。アイドル人間からこそ、魅力的なのだ


翻って劇場版ラブライブ!』において、我々は花陽の白米キチキャラに何を見ればいいのか。あるいは、一様にニコニコとして歌い踊るμ'sの9人のその笑顔の裏に何を見られるのか。それこそが問題なのだが、今の制作陣にそのような問題意識はまるでないようで、判で押したような浅薄キャラ付けを毎度繰り返すばかりである。もちろん、判で押したようなキャラ付け普遍的に悪いと言っているわけではない。そういうキャラクターが適している作品だってある。しかし『ラブライブ!』は、元々はそういうキャラ付けをする作品ではなかった。それなのに作品人気が高まりファン層が入れ替わるにつれて、人間を描こうという当初のスタンスがすっかり失われてしまった。雑誌連載時代そして第1期の頃に比べて、μ'sメンバーの魅力がめっきり減ってしまったように感じられるのは本当に残念なことである。『ラブライブ!』を、こんな消費の仕方をするための作品にしないでほしかった。(以下略)

 この批判においても現実アイドルである渡辺麻友比較対象に出されている。AKBについてはあまり詳しくはないので渡辺麻友が実際語られている通りのアイドルなのかは分からないが、ここで語られている渡辺麻友の魅力を読むと自分にはかつて存在したあるスクールアイドルの姿が思い起こされるのである

 言わずもがな矢澤にこである

 アニメ以前の矢澤にこプライベート含めて完璧アイドルに近い存在として描かれていた。また、本人も最高のアイドルになれる器だと自覚し、なろうと努力を続けている存在であったし、その姿勢ポテンシャルメンバー尊敬を集めたりしてもいた。(公野櫻子原案鴇田アルミ作画漫画版過去CDドラマ参照)

 そのようなにこのキャラクター性、物語性が人気と支持を得て総選挙1位も獲得したし、自分などはこのキャラクターもっと様々な舞台で見てみたいと期待していたのだが、TVアニメ以降は大幅な設定改変を行われて、矢澤にこというキャラクターは闇に葬り去られてしまった。

 TVアニメではかつての設定は面白おかしねじ曲げられてネタにされるのみであり、後輩含めた他のメンバーから馬鹿にされることばかりで、本人もアイドルになりたいというよりはただのアイドルオタクという部分が強調され、努力の跡はあまり見られない。

 京極尚彦花田十輝両氏は元々典型的先輩らしさがなかった絵里以外の3年生キャラを先輩らしい役割を与えたかったために矢澤にこ東條希キャラクターを改変したらしい(電撃ラブライブ!3学期参照)が、TVアニメのにこの良い意味での先輩らしさは1期終盤の数箇所くらいであり、他は悪い意味でただ偉そうにするだけの残念な存在として描写されている。その点を抜きにしても適当ににっこにっこにーと言わせておけばいいというように薄っぺらく判を押されただけのキャラクターとしてアニメ以降のファンに印象付けさせられてしまった。

 つまり、前半にも同様の指摘をしたように第1期の時点でキャラクター人間として描こうとする当初のスタンスは失われていたことを指摘しておきたい。

 ブログ著者の批判の仕方はもっとであるが、渡辺麻友をそのように態々例に出して語りながら、矢澤にこをはじめとするTVアニメ以降のキャラクターの改変について無視して語り通すことに違和感を覚えるし、所詮第1期アニメについては盲目的な信者である所以が見え隠れする。

 第1期をはじめとするアニメ版劇場版評価する人の存在も個人の好み故に仕方のない部分だが、2期や劇場版キャラクター性や物語性をあのように初期や現実アイドル比較する論理から批判しておいて1期は問題なく賛美する見方に関しては異議を唱えたい。


 結局批判に近いような形で締めてしまったが、基本的には概ね同意できる内容であるし、劇場版公開間もない頃にはっきりと内容を批判する記事を公開したのは当時は勿論だったが今から考えても意欲的な試みで素晴らしかったと思う。それまでファンアンチ盲目的で説得力と内容のない賛美と批判ばかりがありふれていた中で、ファンに多少は内容に目を向けるように刺激を与えた意味画期的ものだった。

 彼の批判たまたま拡散されたからというのもあるが、個人的に、TVアニメ化以降のラブライブ関係イベントで最も興味深く見る価値があったのはアニメの内容やライブ紅白出場などよりも彼の批判ブログとその反応関係だったのではとすら思っている。

記事への反応 -
  •  一時期、ラブライバー界隈で話題になった劇場版ラブライブ!の批判記事があった。  それは、おりあそ氏による 「アイドルはなぜ魅力的なのか? あるいは、劇場版『ラブライブ!...

    • anond:20160221211019 たしかにμ'sのメンバーは二次元のキャラクターであり、実在する人物ではない。しかし、雑誌連載時代のファンは彼女らがまるで生きている人間であるかのように交流...

      • anond:20160221211517  ブログではその後、キャラクター描写の観点から批判が展開されている。自分がアニメラブライブのキャラクター描写については感じたことについては既に言及した部...

        • http://anond.hatelabo.jp/20160221211019 http://anond.hatelabo.jp/20160221211517 http://anond.hatelabo.jp/20160221211814 に対する kato_19 確かにすごい考察ではあるが・・・楽しめなくて可哀想としか。辻褄や現実に...

    • 表現の自由から最も遠い態度じゃないのか?

    • http://anond.hatelabo.jp/20160221211019 に対する kato_19 確かにすごい考察ではあるが・・・楽しめなくて可哀想としか。辻褄や現実にこだわる理由がわからない。私の感想『『ラブライブ!』は...

      • あのね、君の意見は分かるよ。よく分かる。 行き別れの幼馴染に再開したときの気持ちだよ。分かる分かる。 だからもう無理しなくていいよ。 ラブライブ!は雑誌コンテンツから、子...

        • SIDのコミカライズはSIDの本来の内容を歪めてアニメ化ファン向けにアレンジされてしまっている。 何のためのSID原作なのかという感じだね。 SID自体もアニメ版に設定的に歩み寄った部分...

          • アルミ版はねーわ。 残された剣道部員の気持ちは一顧だにせず、剣道という競技への愛着もリスペクトもないサイコパス穂乃果。 それを全肯定する海未。 小狡いだけのにこ。 複数IPア...

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        • 子供向けなめんな殺すぞ ラブライブみたいなのは中高生向けなんだよ死ね 死ね

      • http://anond.hatelabo.jp/20160330012910 自分はラブライブ!という作品の本来持っていた特別な魅力というのはアニメPVにこそあったと思う。 アニメ・声優系ソングでフルアニメーションを用いたP...

        • 言及して頂いた『アニメとスピーカーと‥‥。 』のkato_19です。 罵倒ではなく、ちゃんと読んでいただいての批判と受け止めて読ませてもらいました。まずはありがとうございます! 私...

          • どうも丁寧にありがとうございます。元記事の筆者です。 kato_19さんの記事よりも個人的に反論したくなるようなラブライブの感想ブログは無数にあり、中でも何個かチェックしていたり...

            • http://anond.hatelabo.jp/20160331015322 元増田に言及してもらったkato19です。 やっぱり遅くなっちゃいましたが、ようやく書きあがりました。 ただレイアウト上の問題と、書いているうちに自分...

              • 元増田です。 またこいつ同じこと長々と書きやがってと思われるでしょうが返信書いてしまいました。 ①②③の3連続記事です。 http://anond.hatelabo.jp/20160413011057

                • kato19です(増田で名乗るのもどうかともいますが) 仕事早くてびっくりしました。下手なブロガーよりよほど書けますね。 例によって遅筆なのでゆっくり読ませていただきますね。 今...

        • http://anond.hatelabo.jp/20160413011057 正負のエネルギー 負のエネルギーの対義語は正のエネルギーなのでしょうか。 正のエネルギーとは必ず正しいエネルギーたりえるでしょうか。仮にそうだ...

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              • 書いた後になって申し訳ないんですが、『絶賛派の負のエネルギーを和らげたい①』http://anond.hatelabo.jp/20160413011057 を見逃してたみたいです!ごめんなさい。読んで改めて追記で補足しま...

              • 元増田です。 ①を見落としていたとのことでしたので、①を読まない段階での回答に突っ込みを入れても…と思い沈黙していましたが、遅ればせながら一応生存報告だけしておきます。

                • すごく遅くなってごめんなさい。ラブライブ!論争が中断してしまいましたが、ようやく補足を書きました。①の方につけちゃったのでご覧ください。 『絶賛派の負のエネルギーを和ら...

                  • https://anond.hatelabo.jp/20160731175620 元増田です。 返信ありがとうございます。 ただ、主に盗作関係についてはやはり何度重ねて説明しても大事な所を読み飛ばされており、そのせいで全体的...

    • ラブライブの映画を見た。1/3にNHKでやっていた。 相変わらずテレビアニメ版と同じ感想だった。 キーワードを挙げると ・意味不明 ・支離滅裂 ・荒唐無稽 ・腑に落ちない。 ・雑 ・コ...

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