2022-01-29

清水ともみ氏「恥じない対中決議を」 ウイグル窮状伝える漫画家

清水ともみさんの漫画「私の身に起きたこと~とあるウイグル人女性証言~」

中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区不条理迫害に直面するウイグル人絶望と悲しみを描く漫画家の清水ともみ氏が27日までに産経新聞インタビューに応じた。漫画ウイグル実態を啓発するツール国内外で使われ、清水氏は在日ウイグル人にとって心の支えといえる。国会は来月1日に中国人権状況を非難する決議を採択する見通しだが、当初案の「非難決議」から非難」の2文字が削除されるなど〝骨抜き〟の内容になろうとしている。清水氏は「日本ウイグル希望の国。恥ずかしくない文章を」と訴える。(奥原慎平)

決議案をめぐる現場のくわしい調整状況は分かりません。良い形で結果が出ればいいなと思い、見守っていました。

ただ、超党派有志の「日本ウイグル国会議員連盟」などは昨年の年明けから決議を目指していたはず。ミャンマー軍事クーデター非難する決議は短い調整期間で昨年6月に採択されている。なぜ対中非難決議はここまで長引いているのでしょうか。

そもそも昨年の通常国会で採択を目指した当初案も中国国名は盛り込まず、名指しでの中国非難を避けました。どうして、そんな〝ご配慮〟をするのか。日本政府にとって外国中国韓国のように声高に無理難題押し付け文句をいう国だけなのか。日本を愛し、信頼し、無言で見守る国や地域のことは考えないのか。

岸田文雄首相林芳正外相にはウイグルが直面する人権侵害行為強硬声明毅然(きぜん)と出してもらいたい。日本政府の要職者が「日本国として断じて許すことはできない」と発すれば、そのメッセージ世界を駆け巡り、家族収容所に奪われ、同胞虐殺に嘆き悲しむウイグル人の心の救いになる。

それでも「被害実態証拠日本収集していない」というなら「欧米諸国が『ジェノサイド』(民族大量虐殺)と呼ぶ人権迫害実態が、本当なら…」と「if」を付ければいい。

日本ウイグルにとって希望の国だそうです。ウイグル自治区では今も中国当局が「日本は悪だ」と抗日宣伝教育をやっているでしょう。でも、出身者によれば、ウイグル人の多くはそれを信用しなかった。中国当局による教育内容にだまされずに、日本人を尊敬してくれている。香港内モンゴル自治区出身者も日本希望を持っている。

なぜか。日本は1904(明治37)年の日露戦争勝利し、19年のパリ講和会議では世界に先駆けて「人種差別撤廃」を提案し、強く正しい国に違いないというんです。

ウイグル人にはこういう言い伝えもあるそうです。「あの時、日本軍が来てくれていたら、東トルキスタン独立していた」。先の大戦アジア諸国植民地から解放した日本軍がウイグルまで到達すれば、49年の中国人民解放軍によるウイグル侵攻が避けられたという見方です。

でも、日本尊敬されているのは、先人のおかげなんですね。在日ウイグル人モンゴル人が「日本なら正しい判断を下すはずだ」と言っている姿をみると、思わず「それは幻です」と言ってしまいそう。

私がウイグル問題最初漫画にしたのは令和元年4月です。中国当局の監視下に置かれているウイグル人漫画『その國の名を誰も言わない』で描き、ツイッター公開しました政治に関心のない人たちにも漫画ならウイグル問題を伝えやすいかと思い、海外メディア西日本新聞などの記事を参考にしました。

私はイラストミュージックビデオを作る仕事をしていますが、ジャーナリストらのウイグル問題リポートを知り、ウイグルの窮状をインターネットなどで調べました。メディアはなかなか報じませんから(笑)。遠くの人のかわいそうな話で終わりにすべきではない。

『その國の名を誰も言わない』を読んだ在日ウイグル人に誘われ、同年7月に都内での証言集会に参加しました。米議会証言したこともある米国在住のウイグル人女性、ミフリグルさんはオンラインでこう伝えました。

理由なく拘束され、死んだ方がましだと思うような拷問を受け、引き離された生後間もない息子の亡きがらを渡された-。

2週間たってもミフリグルさんの証言が頭を離れない。本業のかたわら、1日1時間ウイグル問題に取り組もうと決め、ミフリグルさんの証言をもとに漫画『私の身に起きたこと~とあるウイグル人女性証言~』を作り、ツイッター投稿しました。作品海外メディアで報じられ、米国務省の広報ページでも取り上げられました。日本政府も使ってほしいですね笑

中国に対して抗議の声を大きくすることで救える命があると思います収容所に入れられた人の親族海外で騒いだら、解放されたケースもありました。逆にいえば、外国とつながりを持たないウイグル人は、収容所から解放され、海外に出られる可能性はないともいえるのです。

中国政府はウイグル人への「ジェノサイド」の批判を「デマだ」といっていますね。「デマ」ならウイグル人は無事なのですから、喜ばしい。ここ数年連絡がとれない行方不明の両親を、子供たちを、今すぐ家族のもとに返してあげてください。

私が漫画を描いているのは、今も弾圧を受けているウイグル人を1人でも救うため。そのためには知ってもらうことが大事だと考えています

日本のぞく先進7カ国(G7)はウイグル問題について「ジェノサイド認定をし、「深刻な人権侵害」と非難する決議を採択している。日本は対中非難決議の採択にここまで時間がかかっている。これ以上何を妥協する必要があるのでしょうか。日本に期待と信頼を抱き続けるウイグル人に対しても、恥ずかしくない文章での決議をお願いします。

清水ともみ氏 平成9年に講談社漫画雑誌でデビュー。令和元年4月以降、ウイグル弾圧証言取材し「私の身に起きたこと ~とあるウイグル人女性証言~」など複数作品ツイッターで発表。作品は最大15カ国語翻訳され、ワシントン・ポストなど海外メディア在米大使館ツイッターで紹介される。「私の身に起きたこと」(季節社)「命がけの証言」(ワック)で書籍化された。清水氏のホームページ掲載作品は商用以外の周知・拡散目的ならコピー転載可能。

清水さんはノーベル平和賞日本版に値すると思う

それくらいマンガという表現のわかりやすさでウイグル人権問題を伝えた実績は大きい

その勇気と信念を心から尊敬する

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