2020-06-19

人生の苦境を経験たか精神的に安定している」人の話

トイアンナ氏のこの発言を読んで、癌で死んだ母のことを思い出した。


母はめちゃくちゃ精神が安定していた。どんなことがあっても落ち着きはらっていた。

死に至る病を宣告された日の日記は、「わたしはがんだそうだ。いやだなあ」この一言で終わり。

中卒で本といえば料理裁縫くらいしか読まない母の語彙力では書き表せない思いもあったのだろうが、

しかし私の記憶の中にある母は笑顔いるかそうでなければ私を叱っていて、

彼女死ぬ直前の時期の記憶もあるのだが、まったく普段通りだった。


死ぬ前日も三食母の手料理を食べて、翌朝は母が医者に行くということで父方の祖母に預けられ、その日の夜に母は亡くなった。

死ぬ前に父に家事を仕込み、緊急時の私の預け先を決め、その後の生活のめどを立てて私の小学校転入手続きまでして、立つ鳥跡をきれい掃除していった母だった。まじスゴ過ぎ。


父と結婚して専業主婦におさまるまでの母はたいへんな人生を歩んでいた。

ギャンブラーだった祖父は母が小学生のころに死んだ。田舎地主の娘である祖母はなんと戦前ピアノを習っていたというお嬢様(これはめちゃめちゃスゴいことらしい。父方の祖母が「ピアノを習っていたほどのお嬢様なのに苦労して……」とよく言っていた)で、お嬢様が男っぷりのいいろくでなしに騙されて結婚ちゃうというまあありがちな展開で祖父結婚し、赤貧を洗いまくっていた。

生活力のないお嬢様祖母は夫を亡くしてもちろん実家に泣きついたのだが、親類は祖母を見捨てた。民生(地元高齢者はなぜか生活保護のことをこう呼ぶ。)を受けたりしながら、子どもを連れて他人の家に下宿して(当時は珍しくなかったようだ)祖母は働き、のちには家も手に入れた。

そんな生活の中、母は弟の面倒を見ながら成長し、高校進学をあきらめてデパート就職。二人の稼ぎで弟は高校も出たのだが学業は伸びず就職もうまくいかなかったようで、土方の仕事をしているときに早く結婚。その奥さんよろしくなく、母と祖母が暮らす家に転がり込んできて暴力によってその家を奪ってしまって母たちは再びの根無し草に。手塩にかけて育てた弟は奥さんの横暴についていけず失踪してしまったので、祖母と母の家は奥さん子ども奥さん彼氏が住んでいるという謎の状況に。(ちなみにこの辺の後処理は後に私と私の父でやった。大変でした。なお叔父は見つかっておりません。失踪宣告出すと取り下げられるので生きてるのだけはわかっている。)しか借金も背負わされたそうだ。

再びアパートを借りるなどして暮らしていたところで父と結婚し、借金を父が返し、専業主婦におさまった。父も高卒で決して高給取りではなかったが、節約家の働き者だし子供(私だ)も生まれてなかなか幸せ時間だったのではないだろうか。

しかしそれも数年で死の宣告を受けることになる。つらっ。


母なし子とはいえ不自由なく育った健康優良児の私には大変な人生に思えるのだが、戦後時代にはそこまで珍しいレベルの苦労でもなかったのだろう。この辺の苦労を母からいたことは一切ないし、父も祖母もたいして話さない。雑談の折節に断片的に出てくるエピソードをつなげたのが上記の話だ。さらっと書けばこんな風にまとまってしまうが、想像を絶する暴力と非論理世界


母の不在をふたり祖母が埋めてくれた私は、昔から老人会に入り浸っていて高齢者の話を聞くのが好きなのだが、昔の世界ってものすごく非論理的だったんだなと思う。財産を奪われる、暴力を振るわれる、異性に騙される、病気は治らない、宗教に騙される、親類に奴隷扱いされる……「え、なんでそんな矛盾した行動が許されるの?」よりも、「なんでそんな矛盾した行動を受け入れてしまったの?」という疑問が湧いてくることが多い。警察に行かないの?弁護士を立てないの?それってただのレイプだよ?それってただの詐欺だよ?そんな出来事が、「あんなこともあったわね~」「若かったんだな~」で済まされる。


自分境遇に逆らわずに受け入れるこうした態度も、トイアンナ氏が冒頭のツイートフォローとしていう「自分の機嫌の取り方を自分で知っている人」の強烈な一形態だと思う。

不遇と戦うことよりも、受け入れることのほうが心は波立たない。詐欺を訴えることよりも、被害を受け入れて、こつこつ働いてもう一度お金を貯めるほうがわかりやすくて楽だ。

母が落ち着き払っていられたのは、お年寄りたちが落ち着き払っていられるのは、苦境を経験して、人生に期待していないかなのだと思う。失ってもなんとも思わない。最初からないのだから


母が死んだとき、父は火葬される母を待つときに少しだけ泣いて、後は何も言わなかった。

今になってときどき、母の思い出をぽつぽつ話したりする。


思ったことを書いただけなので、何がいいとか悪いとかの意見特にないのですが、

ただ、花柄デザインの古びた母の日記と、母の丸っこい字で漢字の少ない文章を思い出して、

それから地元のおじいちゃんおばあちゃんたちを思い出して、

生きるって大変で正解がないなあ~~~。と思った。という、日記です。

  • 中卒の底辺は帰ってくれ

  • 祖母が戦前生まれというので自分より少し上の世代なんだと思うが、自分の一家では父母双方の家計ともにごく常識的でreasonableな昔話しか聞いたことがなく、昔の世界はとんでもなく非...

    • 別に何歳で子どもを産むかなんて決まってないのに 勝手に年齢を決めつけるの思い込みの激しいバカって感じでやばい

    • 身内には話さないことってたくさんあるよ。

  • あなたとお父さんと暮らした数年間、お母さんが一生分幸せだったらいいね

  • 逆に言えば昔は加害者側の不安定なやつがもっといて、それが普通だったから安定がどうのこうの言われなかっただけ。 今は加害者も少ないから、抵抗があるやつが育たないのに要求レ...

  • 要約: 「経験を積んで落ち着いている人の内実は病んで上昇志向を捨て自殺願望を育てたメンヘラであり良いことはない」合ってる?

    • 読まずに要約って当てずっぽうやん

      • 「文章がつまらないから飛ばし読みした」の婉曲表現だよ…

        • そうそう。 そういうことなんだけど、若い世代では比喩とか湾曲表現全く理解されないよね。 超わかりやすく可能な限りストレートに書かないと理解してくれない。 欧米でははっきり...

        • つまらない文章を飛ばし飛ばしでも読み終えて当てずっぽうで要約をつくってわざわざレスする奴wwwの婉曲表現だろ。

  • 過去とは押並べて野蛮な時代である

  • 『矛盾』じゃなくて「理不尽」とかですね。

  • これを精神的に安定してると言っていいんだろうか。 俺には精神を壊されたように見える

  • 人生に期待していないというよりかは、 戦争もあったし 人生は努力してどうこうするっていうものではなくただ受け入れる価値観だった世代なのでは。超辺境の山岳民族に生まれてきて...

  • 人生に期待していないというよりかは、 戦争もあったし 人生は努力してどうこうするっていうものではなくただ受け入れる価値観だった世代なのでは。超辺境の山岳民族に生まれてきて...

    • 職場で自分と揉めるのは、禿げてる人ばかりなことに気付いた。殆どの禿とは何かしら揉めており、髪がある人とは揉めていないことのほうが多い。(ゼロではない) 禿は少数派でトラ...

  • 「さよならわたしのおかあさん」という漫画を思い出した 子供には見せない顔ってのもあろうだろうなって思った。

  •  増田のお母さんいい人だな。それはともかく、私ゃトイアンナさんの言うことは自己中心的で好きじゃないよ。伴侶が人生の苦境に遭うのが初めてか数度目かがなんだって言うのだろ...

  • 「首尾一貫感覚」が高いってことだな。   ナチスドイツの強制収容所から生還したユダヤ人の多くは精神的に病んだ。しかし、中には精神面には影響がない人がいて、その特徴を調べた...

  • 精神的安定は、他者から自分の感情を汲み取って大切にされた経験があるかどうかによる。それがあれば苦境を乗り越えやすい。それがなければなんてことない日常も苦しくて大変なも...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん