2023-05-10

現状のAIイラスト恩恵を被る絵描きについて

長くなったので最初に要約する。現状のAIイラスト恩恵を被る絵描きは、次のタイプであると思う。

「長年絵画表現に慣れ親しんできており、基本的デッサン技術習得しており一通り何でも描けるが、表現したい内容の個性が強すぎて多くの人に敬遠されがちなタイプアーティストデジタル絵画表現において個性が強すぎて、多くの人にとって見慣れないバランスであるために技術力の割には敬遠されがちだが、どこを標準的テイストに近づければ「自分理想とする表現の核を見失わずに人に受け入れられる作風に近づけられるか」という判断自力ではつかない人」

自分はどちらかというと反AIだと思われている。学習データ児童ポルノを含むことやディープフェイク等、現行の生成AIについて問題はあると考えている側である

絵と漫画を描く。技術的には資料さえあれば何でも描け、絵を寄せることも可能だが、人物キャラクターにおいて、あまり流行とされるイラストに魅力を感じないので基本的金銭の絡む場合以外においては資料として流行イラストを見ながら流行イラストに寄せて描くことはない。

テストのために自分の絵をi2iに通してみたところ、いくつか発見があった。PCは面倒だったのでモバイルアプリテストをした。おそらくNovelAIリークだろう。

まず初めに「(表現で)勝った」という感情があった。データセットの関係か、生成AI画像自分の絵の方で表現している内容を全く拾えなかった。

自分の絵の方が個性的で、強い感情を表しており、ぐっと人目を引く絵だった。おそらく生成AIが苦手とする類の微妙感情表現からだと思った。そもそもデータセットになるべき絵の枚数自体があまりないタイプの絵なので、今後もそういった表現AIが卓越してくることはないだろう。

そして、生成AIに食われたデータセットについて、無許可使用された挙句、絵柄の作成者のあずかり知らぬところで、他の絵描きから「勝った/負けた」と比較される土台にされるのは不甲斐ないことだと思った。歌い手比較されるミクのように、データセット提供者の許諾とそれなりの対価は得るべきだと思う。

さて、自分表現において「勝った」ことによって、主観的レベルでのイラスト生成AIへの本質的な畏怖が無くなった。

しかし、ここで疑問が残った。AIに追いつけない表現をしたかAIが追い付けなかっただけであり、それらが得意とするタイプモチーフならまた変わってくるのではないだろうか?

そう思っていわゆる自分が描いたアニメ系の美少女の一枚絵をいくつかi2iに通した。といっても、特定の絵柄に寄せたものではなく、自分独自の絵柄で描いた女の子の顔の絵である

ここでかなり気付きがあった。自分標準的だと思っていたアニメ系の典型的美少女の顔は、標準的美少女の顔から縦横比や骨格のバランスがかなり異なっていたということであるAIによって生成された、骨格が異なる美少女絵は同一人物だと思えなかった。

i2iに女の子の絵をかけるまえの当初は、絵柄を変えた自分キャラクターが出てくるものだと予想していたが、出てきたのは同じ服飾とポーズコスプレをした他人だった。そのとき自分が思っていたより自分の絵柄の美少女キャラオリジナリティがあったこと、だからまりウケなかったこと、自分の描いたキャラクターの唯一無二性を理解した。

ここから以下の気づきを得た。

自分が思っていたより自分美少女キャラの絵柄は個性的だった。

ーそして、その強すぎる個性が多くの人を敬遠させる原因となっていたようだ。技術力の問題ではなさそうだ。

自分脳内人物像を知っているのは自分だけであり、やはり自分しかその特徴を捉えて表現することは出来なそうだ。

実用的な気付きとしては下記のものがある。

ー左右のパーツのバランスの狂い。パーツの一部だけではあるが、「上手い絵」の生成AIの顔画像と並べて比べることで、絵の狂いに気づくことができた。外連味のある狂いなのか、ただ左右対称に描けずに狂っただけのバランスの狂いなのかが、i2iを通して他人の絵柄に変換されるようになったことで客観的判断ができるようになった。これは絵描きにとっては非常に有益である

ー塗りや色見本のサンプル、仕上がりのサンプルとして非常に有用。これは自分だけかもしれないが、絵柄を寄せられるということは、先に仕上がった先の具体的なイメージがより見えるほうが上のクオリティを目指しやすいということがある。最初に完成図(仮)が見えることで、どちらの方向で内容を詰めていけばいいかの案出しのイメージが初期段階でいろいろ検討できるのはとても有用だと思った。先述した通り、もともとの絵においての表現の強度自体AI生成物は超えられるので、より高みを目指して行けるというか。

ーもともと流行に乗るということがもともと苦手で、10年残る画風を想定に違和感のないバランス模索しているタイプだった。自分の絵のベースを守りつつ

この場合は絵柄の骨格やパーツの描き方等を維持したまま、より多くの人に受け入れられやすい見栄えの良さとフレッシュさを追求したいと思っていた。そこに、自分の描いた構図と色合いのまま、完全に他人の絵柄に絵を入れ替えるというこのAI革命を起こしたと思う。自分の絵柄の標準から異なる部分が非常に明瞭化され、自分の確固たる独自的な表現、そして表現されたキャラクター人物性を如実に表すオリジナリティの部分はどこか、失ってはいけない角の部分がどこかということがより明確に自覚することができた。

守るべき部分、重要な部分がはっきりと可視化されるので、そうでない部分、フレッシュな塗りやディテールの線画の太さ等の表現標準的な絵に寄せることで今まで敬遠されていた層にも好かれやす表現開拓できそうだと思った。

イメージでいえば目指しているのは、ソシャゲグラブルイベント名探偵コナンのようなイメージである。どうみても名探偵コナンだが、塗と雰囲気グランブルーファンタジー準拠していたものであり、グラブル世界観グラブルユーザーにもなじむという絶妙表現になっていてすごいと思った。

今まであまりリファレンス画像を見てこなかったのは、端的に言えば、自分と異なる表現テーマを持った魅力的な絵を横に見ながら描くと、自分意識の方を絵の内容の方に引きずられて自己表現したい内容の温度感を鮮明に感じられなくなるからというのがあった。

i2iの場合は、同じ構図であるうえに、「i2i先の絵には表現したいもの」が存在していないことがわかるため、端的に言えば作者の存在がないため、欲しい部分、つまり塗りや線の太さだけに着目することができる。これはいつも他の人の作品を見るときに裏に作者の存在を読み取ろうとし、そして作者の存在配慮しようとしてしまう癖がある自分にとっては「裏に作者の意図意思のない画風見本」というのはリファレンスとして革命だった。

長々と書いてみたが、要するに「自分の構図で出力される他人の画風の生成物を自分の絵と比べることで、自分の絵の客観視が行いやすくなった」ということである。「自分の絵を客観的自分分析、そしてその分析をもとに自己絵画表現をより深化させるためのたたき台にするためのツールを得られた」という感覚だ。逆に、この一点以外のイラスト生成AI有用性はないと考えている。

なお、AIの生成画像や一部をそのまま切り抜いて使うという使い方については何がいいのか感覚的には全く理解できない。それはただの手抜きツールであって短期的な利益にはなるかもしれないが、便利なものに頼るとその部分の潜在的能力は退化するので、そういった手抜きツール使用したアーティスト個人においての長期的なメリットはなさそうに思う。

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