バイトテロ雑感 - ←ズイショ→
http://zuisho.hatenadiary.jp/entry/2019/02/15/203839
https://p-shirokuma.hatenadiary.com/entry/20190217/1550390275
この二人を読み比べると、自分は完全にズイショ氏の方に同感なのだけど、ブックマークだけだと書ききれないことも多いので、こっちで書いてみる。なお、id持ってるのになぜ自分のブログで書かないのかというと、ブログで書くと情と執着が移るから嫌、というだけの理由である。
自分の仕事は海外出張が多く、実はこの文章も日曜日の昼に外国で書いているのだが、海外で接客業の店員に接すると、日本と比べて驚くほど職業倫理が低いと感じる。コンビニ店員はガムを噛んでスマホを見ながら接客するのが普通であるし、ファストフードで注文をすっぽかされても"Sorry! We will do it now."の一言で終わりである。あるときなど、客の少ない時間帯の大手ドラッグストア(雑貨店を兼ねている)では、店員同士が売り物のゴムボールでバレーボールをして遊んでいた。微笑ましいものである。
また、雇用者の側も、ある程度の「あそび」「緩さ」をアルバイト定員には許容している部分がある。アメリカのマクドナルドのCMでは、就業時間中に「俺、念願だった大学に合格したんだ!!」と言ったアルバイトの高校生を、クルー全員が拍手喝采してお祝い(英語で言う"Applause!"だ)するシーンがある。
これらは、日本であれば炎上したり、あるいは炎上を期待して「拡散」されたりしかねないことである。
などと書かれてもおかしくない。
このような日本の特殊さの元凶の一つは、「先生に言ってやろう」「世間に言いつけてやる」という日本人の多罰的傾向にあると思う。日本人は、クレームを相手に直接言えないチキンな性格なので、自分が受けた不愉快や、自分が感じた不平等さ(例えば「自分は職業倫理に縛られて生きているのに、なんでアルバイトのあいつらは自由にしているんだ?!」という怒り)を、「先生」や「雇用者」や「世間」「マスコミ」に言いつけることで溜飲を下げる。そして、そのような「言いつけてやる」行為が、正義だと見なされている。
ところが、外国(特に念頭に置いているのはアメリカであるが)では、そうはいかない。自分が利害関係者でないのに他人の非倫理的行為を告発して溜飲を下げるのは、どちらかと言えば「卑怯な」行為とみなされる。そんな「告発者」は"mind your own business!"と言われるだけである。また、自分が直接被害を受けていないことに対して、憤ったり「言いつけ」たりしてやろうという発想がそもそもないのである。(逆に、直接の被害を受けたのであれば、その場で immediately に抗議すべきだ。「上」や「世間」に言いつけて叱ってもらうなんて悠長なことは言っていられない)
私は、実害のある「バイトテロ」と実害の無い「アルバイト店員のおふざけ」とは峻別すべきであると考えるし、今後の日本社会が今までのような窮屈な職業倫理をアルバイト店員に求められるような社会ではいられないと考えている。実害のある「バイトテロ」は許されるべきものではないが、それとは全く別個に自分に直接の利害が無いことにまで「世間に言いつけてやって」溜飲を下げようとするその他大勢の人々の行為は意味がないと考えている。なぜなら、彼らのそのような行為は、「自分は職業倫理に縛られて生きているのに、なんでアルバイトのあいつらは自由にしているんだ?!」という僻みから生まれる部分が大きく、自分が強制されている職業倫理の理不尽さについて、使用者や教師に対して抗議して適正水準に是正するという正しい問題解決の道筋から目をそらしてしまっているからである。
たぶん、日本の人口に占める外国人の割合が今よりずっと増えているであろう10年後には、日本流の接客過剰サービスや、サービスの本質と関係ない職業倫理や、感情労働の類は、今よりもだいぶ廃れているものと思われる。外国人労働者は労働に対して合理的な考えを持っているので、お客に実害を与えるわけではないのに、儀式やしぐさを強制されるのは理解できない。おそらくそれらの、「お客様に気を使った」振る舞いは、ガラパゴス的な宗教儀式のようなものとして無意味なものとなっていくことだろう。そしてそうなった時代には、アルバイト店員の振る舞いにはアルバイト店員なりの「緩さ」「適当さ」が許容されるようになり、それがガス抜きとなることで、実害を生むような「バイトテロ」は減っていくのではないかと期待している。
(追記)
なお、諸外国でも「企業」や「有名人」が炎上することはままある。たとえば先日のユナイテッド航空のオーバーブッキング乗客引きずり下ろし事件では、「ユナイテッド航空」が炎上し、多くのSNSユーザが「ユナイテッド航空」の非道さを告発した。だが、実際に乗客を引きずり下ろした客室乗務員や警備員の氏名を特定したり、その客室乗務員や警備員本人を告発したりするような流れは殆どなかったように思う。この展開は合理的である。ユナイテッド航空を告発したSNSユーザは、実際にユナイテッド航空の顧客である場合が多く、自分たちも同じ目にあったかもしれない、ということが想像できるからである。一方、個々のSNSユーザにとって、客室乗務員や警備員本人は、自身の人生で直接関わる可能性が殆どない相手であるから、個々人を「特定」したり「告発」したり「言いつけ」たりしても、意味がないのである。
(追記2)
「バイトテロ」に憤る人というのが、自分には今一つピンとこない。 たとえば、2万店あるうちの1店のセブンイレブンで、おでんのシラタキを箸で口に入れた店員がいた。 事象は、...
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地下鉄サリン事件は同じテロでも今でも言われるし 犬養毅を暗殺するのもダメなのにバイトはテロをしてもいいの どういう理論なん
マジかよ 海外、なかんずく欧米、特にアメリカでは寛容の精神が社会に根付いているな
自己決定の考え方が広く浸透しているだけです 【それは貴方の選択 (It’s your choice.) 】ってヤツ 「貴方は、その店を使う選択も、使わないない選択も、出来る。そして、その結果による...
日本だと存在感がないor胡散臭い扱いの宗教が確実に土着している
元増田は「バイトテロ」について冷静に分析された記事としてとても参考になった。 例えば、こういうところ↓のコメントの数々がなぜ異常で、よくあることなのかを整理することがで...
高級すし店でもないのにバイトがちょっとふざけた程度で大騒ぎするクレーマーがキチガイなんだ