2015-04-25

http://anond.hatelabo.jp/20150425011839

(1) 大学社会科学系の教員をしており、就活支援もある程度経験がある者の個人的見解として。

史学科だから就職しづらいというのは余り意味がないと思う。確かに人文系学部学科学部就職率は他に比べて低い傾向があるが、だからと言って全員が就職できないわけではない。個人的な印象では、修めた専門分野が実学系ではないということよりも、就活親和的かどうかという雰囲気学部学科対応の違いによるのではないかと感じている。いずれにせよ、学部学科の平均的な実績の差を気にして進学先を選ぶよりも、個人として就活に前向きに取り組めるように支援することの方が、遙かに有効な進路支援だと考える。文系場合、専門分野による就職先の平均的傾向の差は確かにあるにせよ、個々の学生就活においてはほとんど無視して良い程度の差でしかないように思う。ただし、教員志望の場合は取得免許が変わる。また公務員行政職などの上級試験を受ける場合経済学法律が科目に入るので、人文系学生は苦労が多くなる。

なお、専門分野が人文系社会系かという差異よりも、どの大学学生かの方が就活には大きく響くと思う。偏差値の高い大学史学科の方が、偏差値の低い社会科学学部よりも就活には有利だと思う。ただこれもあくまで傾向の話にすぎない。

・本人が納得して法学部を選ぶのなら良いが、不本意入学大学生活を歪めることがある。私の勤務校は大半の学生が不本意入学だと思われるが、その管見の限りでは、がっかり感や自己喪失感を引きずっていると成績不振に陥りやすくなり、就活も難しくなると感じている。その意味で、本人が自分でこの進路を望んだのだと思えることはとても大切だと思う。そうでなくても、入学した大学学部学科が彼にとって有意義でありえるように、本人の気持ちをよく聞いてサポートし、「ここに来て良かったのだ」という思いを家族で分かち合ってほしい。就活手段だと割り切るには20歳前後の4年間と124単位の修得努力という負担は重すぎると思う。どの大学学部を選ぶにせよ、本人の気持ち(しばしば青臭くいい加減で甘い幻想に満ちたそれ)をたっぷり聞いてやって、本人が自分意志を整理する手助けになってやってほしい。そうでないなら、全て本人に任せて口出ししない方がいいのではないかと思う。

   

(2) 一浪して今春大学入学した子供を持ち、子供の進路について妻と意見が異なった経験を持つ者として。

増田子供意志を強く肯定したのは良かったと思う。ただ、経済的な面など支援できる限界があると思うので、できないこと(例えば学費が年150万円は無理とか、私大なら仕送りの余裕はないとか)に対して中途半端な期待を持たせるような話はしない方がいいと思う。幻滅させないようにしないといけないけれど。

あと、奥さんとは良く話をした方がいいと私は思う。

うちの事例を少し紹介する。うちは進路問題をよく話し合った方かもしれない。

高校時代から本人の進路希望は二転三転して(音楽デザイン建築人類学→国際文化国際政治法律→……)、そのたびに我々は大いに振り回された。決して本人と進路について深く議論したわけではないが、親の顔色と経済力高校先生友達から情報インターネットなどを材料にして、大いに迷いつつも徐々に自分学力や親の許容範囲などと自分理想との折り合いを付けていったようだ。

妻は周囲のママ友たちと相談しつつ、就職に強い大学・専門分野を推していて、私は職業柄それには反対で、本人の志望通りに受験させればよいという考えだった。本人が進路希望を口にするたび、妻と私は言い争いになった。

から考えると、妻の意見有益だったと思う。本人が自分は何のために大学に行くのかを明確化する圧力になったから。子供は結局妻の観点も取り込んで(もちろんはじめは喧嘩になった)、就きたい仕事イメージ学部大学選びとを結びつけるようになり、それは本人にとっても良い成長機会(トンネルを抜けるまでが大変だったが)になったようだ。

けれども、本人の気持ちをできるだけ誘導しないようにする苦労が必要だったし、我々が本人に気持ちや考えを尋ねること自体誘導圧力になっているということを意識し続けるしんどさや、本人の意欲をくじかないようにする気苦労があった。親の立場子供に話をするとついつい詰問や説教になりがちで、そういう口調や雰囲気子供を地味に傷つけ、意欲をスポイルするので、そこはかなり注意したし、子供を怒鳴りつけられないストレスがしばしば夫婦間の軋轢となって炸裂した。

・本人がいない場所では、夫婦の間では何度も話をした。この件については仕事上どうしても私の方が優位に立ちがちなので、できるだけ妻の話の聞き役に回るよう意識したが、おそらく妻は私が説得不可能な頑固者に見えていたのではないかと思う。

話をするコツ?としては、「時間が解決してくれる」=受験が迫ると夢物語は言っていられなくなるということと、「時間を掛ける」=同じ話題日常生活の中でタイミングを見つつ繰り返し出して少しずつ気持ちをほぐす(うちの場合は皆がそれなりに納得するのに3年ぐらいかかった、つまり高校1、2年の頃からこういう話をしていた)ということかな、と思う。あと、「学問価値」とか「学問に殉じるべき」みたいな話は余り有益ではない。むしろ本人のどのような成長・自立を期待するかという話の方がまだましではないか。うちの場合下宿を認めるかどうかでも争いになったのだが、「子供が自立するタイミングはいつがいいのか」という論点議論がかみ合った。結局、本人の志望大学遠距離だったので、そんな議論とは無関係下宿一択になったのだけれど。

   

率直に言えば、文系ではどこの学部学科に入っても大体似たような就活になるし、そんなに実績の差はないので、そこでこだわっても余り意味はないと思う。ただ、卒業後の進路が気になるのは親として当たり前なので、奥さんの心配不安についてはじっくり付き合って、大いに共感してあげる方がいいと思う。その中で解きほぐせる不安はほぐしてあげればいいし、そうでないものは腹をくくって最悪の事態(?子供挫折してぼろぼろになるみたいな)を夫婦二人で支えていこうね!みたいな気分を作っていくしかないのではなかろうか。で、自分自身としては「あのときあなたが○○と言ったせいで、今こんなに大変なんだから」という愚痴(責め?)を聞かせられ続ける覚悟をしておくという。

記事への反応 -
  • 高校生の一人息子に、大学進学のことで相談をされた。 文学部を受験し、史学科に進みたいと言う。 私は一も二もなく「歴史を精一杯勉強しなさい」と答えた。 しかし事情はいささ...

    • (1) 大学で社会科学系の教員をしており、就活支援もある程度経験がある者の個人的見解として。 ・史学科だから就職しづらいというのは余り意味がないと思う。確かに人文系の学部学科...

    • 基本的には息子さんの意思をそのままバックアップしたほうが良いでしょう。 学問のことなんて何もわからないアホなのに占い師の先生がゆってるから()息子の進路をねじ曲げたせい...

    • コロンビア大学で東アジア史とかやるんだったらいいと思うけど、中途半端な大学だと学問になるのかどうかという問題も……。 アカデミズムがすでに死んでいる日本では、案外、奥さ...

    • anond:20150425011839 専業主婦に見えてる世間はそんなに広くないだろう。 昔のまんまで止まってたりして。 「法学部なら就職に有利」なんてのも、ウン十年前の話かと。

      • 史学科よりはマシなのは確かだろ そもそも息子の偏差値の問題もあるかと

      • 母親が専業主婦だとすれば、史学科出て上手くいかなくても母の跡を継いで専業主夫に収まる道はないのかねぇ。 ニートはまずいが主夫にでもなれば体裁はつく。

    • 就職に有利っていっても、どこへの就職かに依るんじゃ?

    • ペーパーテストが苦手じゃないなら保険で公務員って手もあるぞ。 好きな研究分野じゃ食ってけないから公務員試験受けた とか 難関資格を目指してたけど見切りをつけて公務員試験受...

    • 息子が何を思ったのか、正直なところ読めない。 しかし「父さんの考えは分かった」と答える息子の顔からは喜色が窺えたような気がする。 息子さん、やや内向的な性質があるのか...

    • 奥さんは、息子が人並みにダラけた大学生活を送る前提で、文学部より法学部の方がいいと言ってる 真剣に勉強するなら、当然、本人がやりたいことをやらせるべきだ ただ本気だったら...

    • 偉そうな事言ってるけど、単に親としての責任を放棄してるだけじゃん。 子供を自立出来る大人にするという責任を。 妻の方が遥かにまともだわ。 今までも子育て妻に丸投げで何もや...

      • 挫折可能性を言うのなら、本人の希望無視して親の都合を押し付けるほうがよほど高まるわ低能w まあ本人の本気度合いと、やり遂げられる能力によるよな ちゃんと勉強(努力)で...

      • 親の責任って、本人の希望を無視して法学部に強制進学させることか? ちがうだろ。それは「法学部いれときゃなんとかなる」っていう何一つ考えてない、 ただ親が安心するためだけの...

        • 親ができるのって、そうやって判断の材料と考え方を教えるくらいなんじゃないのか。 いいこと書くよなぁ うちなんて29年一緒に居ても何の考え方も教わらなかったし、2日くらい一緒...

    • 俺ならなぜ史学科に行きたいか、大学卒業後の進路はどうするのか、どう成長し、働き、老い、死んでいきたいかレポート書かせる。 それを母親にも見せて家族会議。

      • 私はこのアイディアに賛成です。なぜ史学かという動機が一番大事だと思うので。ネットにはまりだしてネトウヨ、vipperなどになってしまう高校生男子は結構いますので、「息子さん、...

      • 好きな分野へ行くべきーみたいにブクマコメントで大合唱されてるけど 18歳かそこらの好きなんて 無知や偏見や思い込みやらなんやら由来なので そう簡単に信用しちゃ駄目なんじゃねえ...

      • はっきり言いますけどねオタクの息子さん このままだと間違いなくニートですわ あんたみたいなええカッコしいな父親は子育てにおいて害悪です

    • 大学で歴史を教えてる者ですけれど、大事な息子さんに、そう簡単に、何をしたっていいよ、って親がいっちゃうのは、どうなんでしょうか。 そもそも、死ぬ気でかからなければ、研究...

      • 趣味で歴史を勉強しているものですけど専攻は理数系です。 昔から歴史が好きだったんですが 高校の時点で歴史を専攻していたら、今はくいっぱぐれていたかも。。 理系は何とか食っ...

    • 結論として、大学進学するような歳なら一個の人間として、好きなようにやらせておけばいい。 将来食えなくなろうが、路頭に迷おうが、成功しようが そいつの人生だし、今から予測...

    • 私も昔、お宅の息子さんと同じような状況になったことがある。 父母の見解の相違も大体増田家と似た感じだ。就職できない苦労というものを、女性の方が肌身で感じているのかもしれ...

    • 俺氏、マーチの文学部史学科日本史学卒業。 卒業して10年超えたくらい。 就活していたのは、就職氷河期のラスト。 就活の時は、電機メーカー2社、自動車メーカー1社、コンサル2社...

      • >個人的には、日本の南北朝時代特有のカオスな状況を調べるのに これについて説明しろよ。 って言うか詳しく説明して下さい。

    • http://anond.hatelabo.jp/20150425011839 文面からなんだか母親さんより父親さんのほうがむしろ学問を軽んじている気すらするんだよね。 こういう部分とか >息子がスリランカ史を大学院まで勉...

    • できることはないと思う。 受ける学部決めるのは息子だし、問題が起きるのは母親と息子の関係の問題。 もし、史学科に行って、就職がうまくいかなくて、お父さんがあの時反対して...

      • かと言って史学科に行きたかったのにとブツブツ言われながら学校にも行かなくなってニート→留年→中退コースになるよりは 本人のやりたいようにさせたほうがいいだろ  音楽で飯...

    • 単純に知識を詰め込むだけなら、死んでしまう人間より1冊の本の方が長く残るのだし優秀でしょう。 学んだ知識をビジネスに繋げる戦略を考えさせられないなら、どれだけ学んでも死に...

    • 歴史が好きだけど法学部に進めって言われてるなら法学部で法制史をやればいいじゃんと思ってしまった。

      • 全て丸く収まるのは、法学部行って社会科の教員免許取って歴史関係のビジネスに就くか歴史の先生やりながら趣味と仕事を兼ねて歴史と関わる人生だったりしてな

    • 史学科出身です。進路については息子さんがご自身で決めるでしょう。 むしろ気になるのは、 >卒業後ポスドクにさえなれず、ゴミ収集員になっても構わない。 というコメント。 歴...

    • どこへいっても、就職活動さえ普通にやればなんとかなるでしょう。 史学なら教職へ有利かもしれない。 考えなしに法学部へ行って、いやいや冴えない学部生生活をするよりはよっぽど...

    • 法学部に進学して「法制史」「法史学」「政治史」を学ぶ、という折衷案はどうかね?

    • 法学部に行きつつ歴史学サークルに行くのはだめなの? それが一番充実してると思う

    • そもそも成績はどうか、下宿はさせるのか、私学に行かせられるのか、なんかの受験の前提になる条件によって、史学科に行けなくなる可能性もある うちはそうだった

    • そもそも成績はどうか、下宿はさせるのか、私学に行かせられるのか、なんかの受験の前提になる条件によって、史学科に行けなくなる可能性もある そしてそれは受験前と受験後で大き...

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