ある日突然、作品が消える。
消えたソレはもう二度と戻らないと思っていい。
気が変わったのか。
ジャンルが変わったのか。
転載されることを避けたのか。
いや、消せるのだ。作者の意志によって。
絵描きさんの中には「自分の絵を(PCやスマホのメディア欄に)保存しないで」とおっしゃる方もいる。
しかし私はこっそり、そのかたの名と、ツイッタアカウントをタイトルにしたフォルダを作り、日付を絵のタイトルにして保存している。フォルダにツイッタアカウントまで記載するのは、ハンドルネームが同じ方が多数いらっしゃるからだ。(特に「おもち」という名の方は、各ジャンルにわたって多数いらっしゃるとお見受けする)あと、ふと思い出した時にアカウントで検索できるようにだ。
無論、転載や転用などはしない。ごくごく個人的に楽しむための保存であることは言うまでもない。
時折見返してはニヨニヨする。
ああ、この方がこんなの描いていらしたなあ、と懐かしく思い返す。
もうこの方はジャンルを移動されたんだよな……とおセンチになったりもする。
続きはないのかなあ……と虚しい思いにも駆られたりする。
ジャンルごとに分けてあるから、好きになるジャンルが増えるごとに、ファイルは増える。好き作家さんも増える。もう私のPCの容量はギリギリである(自業自得)。
好きな字書き様がいた。私も字書きではあるが、彼女の作り出す世界観と空気感は私には作れないものだった。ただただ、憧れ、崇拝し、何度も読み返した。
ツイッターを始めた彼女と繋がり、色々と意見を交換した。世代が似ていて、読んできたものも通ってきたジャンルも似ていて、とても意気投合した。
私は狂喜乱舞した。
夜になると毎日のように彼女に絡み、また彼女も絡んできてくれた。
私は浮かれ切っていた。このまま彼女と二人、推しCP(極少💦)を盛り上げてゆこうと思っていた。
しかし。
でも、支部の作品は残しておく――と約束してくれた。私はその言葉を信じた。それからも何度も彼女の作品を読みに、支部に通った。ずっとずっと、通った。
それから数か月後。
支部のプレミアム会員になったので、整理のため一時、作品を非公開にする。表紙を差し替えてまた公開する……とあり、実際彼女はそうした。
それでもいつかは公開してくるものと信じ、私は根気よく待ち続けた。
話は前後するが、彼女と交流があったとき、盛り上がった話題があった。
「小説を印刷して、赤ペンで添削(というか萌え感想)書き合おうか!」
結局それを送り合うことは無かったけれど、私は彼女の当時の最新作を一作、プリントアウトしていた。
そうだ――消える前にこっそり保存させて貰おう。絵描きさんのイラストと同じように。
決して中身をパクったり、文体を真似たりはしない。というかそれは字書きである私のプライドに反する。
私はその当時公開されていた彼女の作品のほとんどを、コピペしてメモ帳に保存させてもらった。
惜しむらくは……推しCPとは別のCPの作品と、パラレル話の保存を後回しにしたことだ。あの作品も本当に好きだったのに……。しかし後悔は先には立たなかった。
しばらくプライベートで多忙にしていて、彼女のアカウントへ訪問する足が遠のいた時期があった。
そして久方ぶりに訪ねてみると――ページはそのままに、中身はガラリと入れ替わっていた。
前ジャンルから殆ど更新が無かったために、放置状態か、別のアカウントでも作ったのかと思っていた。でもそうではなかった。
多分彼女は、別のアカウントでツイッターに復活し、こつこつと別ジャンルの小説を書き、活動を続けていたのだ。そしてこの度、それらを上げるにあたって、前ジャンルの作品をすべて消去か非公開にした―――。
頭を打ちのめされた気がした。
目の前が真っ白になった。
全身から血の気が引いた。
手が震え、唇が震えた。
息が詰まった。
ああ、もうあの作品たちは帰って来ることは無い。
このページに。
私には決して書けない文章。
思いつかない展開。
私が愛してやまなかったあの作品たちは……もうWeb上には存在しないのだ。
彼女の垢を、それでも私は覗きに行った。行っても私の好きだったあれらの作品はもう無いのに。
私は自分が知らない作品や嗜んでいない作品には、いくら仲がよい人のかいたモノでも反応はしない。彼女の移ったジャンルの作品を未履修だった私は、目を通しもしなかったしブックマークもしなかった。また、彼女の現在のジャンルを履修しようとも思わなかった。沼るのが怖かったのだ。私は今のジャンルで(創作の)骨を埋めようと思っていたから。他のジャンルに目移りするわけにはいかないと思ったのだ。
それから約2年後。
半年、という短い交流ではあったが、彼女の性格はその端々にあらわれていた。
潔いのだ。
ダメだと思ったもの、必要ないと思ったものは、未練を残さずバッサリと切る。職業柄、身バレしないため、という自衛もあったろう。既婚者でお子さんもいたが、結婚指輪すら普段着けないからと仕舞いこんで「数年ぶりに出てきた」とおっしゃるような方だった。そんな大事なものにさえ、未練も執着も無いのか……と少々驚いたものだった。
対して、私は未練がましい性格だ。
現在の私の支部のページには過去ジャンルの作品も残っているし、ツイッターのアカウントのフォロー欄も雑多すぎて自分でも呆れる。
私はモノを溜め込むタイプの人間なのだ。四半世紀以上前の同人誌すらも捨てられない。彼女とは正反対の性格なのである。何一つ捨てられない。
思い知った。
消えて欲しくないものほど、消える。
ある日、綺麗に、さっぱりと。
支部の自分のブクマを見返した時にぽっかりと空いたスペースを発見し、息が止まる。
でもタイトルも何も情報が無いゆえに、何が消えたのかわからない。
そういうもどかしい思いを、誰しも一度は経験したことがあるだろう。
好きだったはずの――何か。
心動かされた――何か。
でもそれが何だったか思い出すことが出来ない。
だから。
私たち読者が、イラストも小説もこっそりと保存することを許していただきたい。
決して悪用はいたしません。無断転載も、パクリもいたしません。
ただただ、私の心を満たすためだけの保存です。
公式、二次、共に供給が少ない……いわゆるマイナーと言われる我が推しCPの、数少ない作品たちを……うちのPCちゃんに保存することを、どうか許して欲しいのです。
もう一つ、贅沢を言わせていただければ。
マイナーなCPの民にとって、作品数が減ることは何よりも痛いからです。
この数年の間に推しCPから去られた方、アカウントの更新が無くなった方も多数おられます。その他たちにとって、過去作は黒歴史かもしれませんし、必要ない作品になっておられるかもしれません。
しかし、新規でこのCPに来られた方にとっては、あなた方の作品は、先人の残した宝であります。
私はこのジャンルと推しCPに在住して数年になりますが、公式で連載が終わった後でもこのジャンルのこのCPに来てくださるご新規さまは、いまだ居られます。ジャンルを去られたかたにとっては過去のジャンルでも、ご新規様にとってはいま最も熱い、ホットなジャンルとCPなのです。
かつてお好きだったそのジャンル、そのCPの今後のために、どうか残しておいていただきたい。
無断転載や嫌がらせなどを受けて消去される場合は致し方ないとは思いますが……。
何卒、お願い申し上げます……m(__)m。