2017-07-25

この騒がしい世界の片隅で

生来、大声が苦手で、幼少のころ、親に「そんな勢いで言われても頭に入らない、もっと優しく言って」「文章に書いて伝えて」などとお願いし、理解されなかったエピソードに始まり、今でも怒鳴り声に直面すると、文字通り固まって黙り込むという、コミュニケーションにおける最悪手を取る結果になってしまう。

これは男性罵声であっても、女性キンキン声であっても全く同じ。それどころか、「あ?何言ってんの?」程度の凄んだ声でも必要以上に緊張する始末である

なんというか、何か返さないといけないと思っても、そういう風に言われた直後からしばらくの間、考えがまとまらないのである


日常会話では、某大御所お笑い芸人定番芸よろしく「あんだって?」みたいな聞き取り事故結構起きる。

というか、コミュニケーションは「相手ごとに個別最適化された、些細なことの積み重ね」なのは、読者諸兄もよくご存じだと思う。

しかし、自分はこの「ちょっとした気遣い」が全くできない。

どういうわけか相手言動を観察できず、どうしても一方通行気味の会話となってしまう。

それでも友達らしい付き合いはどうにか可能だが、彼女を作るとか、仕事ステークホルダーと際どい内容を話せるレベル関係を作ることは、非常に困難ないし不可能である

実際、自分恋愛経験アラフォーの今でも毛が生えた程度だし、仕事でもコミュニケーション面は完全に落第点である


歩くときも座っているときもついつい考え事をし、それで誰かとすれ違う時は「お互いが同じ方向に動く」コントみたいなことがたまに起きる。

しか独り言が絶えない。

これは職場上司からウザがられるレベルだったりする。


電車通勤では、相当疲れていないと寝られない。

これって騒音のせい?

そう思ったのが、今回の出来事の始まりだった。


雑音をシャットアウトする手段で、古くからある定番の一つは耳栓だ。

最近はこの耳栓も大変便利になり、ノイズキャンセリング不要な音だけ排除し、必要な音はクリアーに聞こえるという「デジタル耳栓」なるものである

昔ながらの耳栓個人的にあのフィット感が嫌いで、かなり若いときに数回試してやめてしまったが、このデジタル耳栓イヤホンもどきだし、そんな気にならなさそう。

ということで電車の音対策で使ってみた。

その結果は、自身QOLに、想像以上の途轍もない効果をもたらすこととなった。

人の動きに注意が向くようになった

最初電車で使い始めて「あれ、こんなもんか」という感想だった。まあ車内放送は聞こえるし、別にいいけど。

などと思っているうち、よりによっていつも降りる駅近くになって眠り込んでしまった。

それでも、いつもは不思議と車内放送を聞き逃さず、すかさず起きて降車できるのだが…今回はそうならなかった。

実に20年ぶりくらいに車内放送を聞き逃し、乗り越しをやらかした。

やばい、少々急がないと職場到着が間に合わない。

大慌てでいつもの駅に駆け戻り、デジタル耳栓を外す間ももどかしく改札をくぐった。

そこから速足気味で歩き始めて数秒後、いつものペデが、なんだか違うのである


えらい静かなせいなのか、自発的に周りを注意しないと…という意識自動的に働いてしまった感じだろうか、とにかく人の動きがよく目に飛び込んでくるのだ。

それも、周りを注意せず歩いている人なんて一瞬で分かってしまレベル識別できる。

これなら例のすれ違いコントなど起きようがない。

そうなる前に、なんとなく人の動きが読めるのだ。

独り言がパッタリおさまった

上述のように周囲に注意しつつも、それでも考え事がやむことはなかったのに、独り言けがパッタリやんでしまった。

独り言をしなくても、考えたことがスッと頭に入っていく感じだろうか。

この「自己完結感」は生まれて初めての感覚だった。

今まで生きてきて最高の会話を体験たか

数年来の友人と電車内で会話したとき、とにかく相手の話に苦も無く追従できたせいだろうか、彼が今まで話した中で、最も楽しそうに喋っていた…ような気がする。

こちらも、その話しっぷりからコイツの飾らない人柄、すげーイイ奴だ!」などと妙に感動してしまったり。

これってもしかしてちょっとしたこと」ができていたということだろうか。

だとすれば、確かにこの「ちょっとしたこと」は他人に教えられない。

自分コミュニケーションが苦手なので教えてほしいクチだったが、これは文字通りフラット経験から体得するしかないんだなーと痛感した。

怒鳴る動画が平気で見れた

数年前に話題になった、某引っ越し業者幹部ユニオンスタッフを怒鳴る動画最近取りざたされた某女性議員の「このハゲー!!!」で始まる動画、この2つをデジタル耳栓をつけた状態試聴してみた。

確かに「あーコイツやべえ、すっげーなオイ」とは思ったが、さほどビビらなかった。

これなら「あっすみません●●は××にしておきます、あの、ご指摘ありがとうございます」くらいのアクション咄嗟に返す余裕はありそう。

少なくとも、怒鳴り声で感じる威圧感は最小限だった。

世界はこんなに平和だったのか

別に変なクスリをキメたつもりはないのに、デジタル耳栓をしている時間が、極上に安らかなひと時になっている。

とにかく不安感が全然ない。不安になる事を考えていても、である

「満更でもないな」という気持ちが非常に支配的で、安心感が凄まじい。

これが噂の「自己肯定感」ってやつなのだろうか。

ともかく、「人間感情思考も、全て感覚によって形作られる」ことを認めざるを得なかった。

そして、「この世界は俺にとってうるさ過ぎる」とも。


というわけで、なるべく早く、というか可能な限り最優先で、聴覚過敏の専門医受診しようと思う。

確かにデジタル耳栓は快適なのだが、これを今後ずっと使い続けていいのか、そもそも自分感覚異常の正体は…など、色々気になる。


以上、同じような境遇に置かれている方の一助になれば幸いである。

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