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2017-12-22

ネット上で有名になりたければ私小説を書きなさい

あ? 私小説? どうせ、実生活体験の幅が狭い作家が、どうでもいい身辺雑記を延々と書いた文学のことだろ? くっだらねぇ。

というふうに自分は思っていた。

で、私小説をいくつか読んでみた。

食わず嫌いの先入見は、まちがいだった。

私小説面白い

下手なエンタテインメント小説より、全然面白い

なにが面白いか。

私小説は、主人公馬鹿で、下衆で、これでもか、これでもかというほどに生活がどんどん下降していくさまが、ある種爽快なほど露悪的に書いてあること、

そしてこれが事実であるかもしれないという期待を読者に抱かせながら、虚実入り混ぜて物語が展開されること、

ではないかと思う。

主人公失業して貧困に陥ったり、男女関係で泥沼にはまったり、酔っ払って人に迷惑をかけ、誰から相手にされなくなっていくごとに、読んでいる側としては、変なカタルシスを感じてしまうというか。

で、ネット上で有名になって、お金も欲しいという人は、もっと私小説的な文章を発表してけばいいと思う。

ネット上で炎上してきた(している)話題は、当事者主人公にして、私小説仕立てにしてみると、もっと面白くなりそうなものばかりだ。



ネット上の有名人が、ネット以外でブレイクすることを妨げているのは、彼ら(彼女ら)が、小賢しいことだ。

小賢しいとは、自分の失敗や品性の低さを指摘されると、取り繕ったり、反論したりして、自分を分相応以上に賢く見せようとするということだ。

こうすることにより、彼ら(彼女ら)は、いっそう小者に見えてしまう。

まりコンテンツとしてつまらないものに見えてしまう。

コンテンツとして自分価値を最大化したければ、大正昭和私小説作家のように、あるいは現代西村賢太のように、卑小さを卑小さのままに、破綻破綻のままに描き出し、そのことから生じる業を生きるほうが、じつは戦略としては賢いかもしれないのだ。

私小説は儲からないのだろうか。

では、私小説芥川賞を取った西村賢太の近作を見てみよう。

サッパリ自著は売れないながらも、昨年の彼の税務署への申告額は、小説関連の収入と、作家肩書あっての各種アルバイトで、それでもx千x百万円になっていた。汚ねえ身なりをしているからと云って、そう容易く浮浪者を見る目で眺めて欲しくはないのである

(「芝公園六角堂跡」)




これをフィクションと受け取るかどうかは、読者次第だろう。

炎上芸人炎上芸人のままで終わる必要はない。もっとコンテンツとしてのポテンシャルがある。金銭的に報われる可能性がある。自分人生コンテンツとし続けることの業を生き続けるだけの覚悟があれば。

おすすめ私小説


葛西善藏 『浮浪』

http://www.aozora.gr.jp/cards/000984/card3212.html

「近所の借金がうるさくて仕様が無いので、どこかに行つて書いて来るつもりだ。……大洗の方へでも行かうと思ふ」と言い残して主人公東京を出て茨城に行き、知人のつてを頼って旅館に逗留するが、そもそも宿代を持ってきていない。知人が何とか融通してくれるだろうと最初から当て込みながら、居座る。

知人は当然のことながら激昂し、旅館からは宿代をつけにしたまま追い出される。

有り金がないまま次々と宿を変えながら茨城をさまよう話なのだが、最初はちゃんとした旅館だったのに、しだいに宿のグレードが下がっていって、最後ドヤ街の宿のような木賃宿で弟の送金を待ちながら、身につけたものをどんどん質に入れて裸になっていくところが笑える。

嘉村磯多 『途上』

http://www.aozora.gr.jp/cards/000249/card49655.html

馬鹿不細工貧乏であることに強い劣等感を持っている主人公中学時代を描いた作品。恥ずかしい過去を思い出して悶絶するときのシーンはとくに秀逸。

「あツ、あツ」と、私は奇妙な叫び声を発して下腹を抑へた。両手の十本の指を宙に拡げて机の前で暴れ騒いだ。

「何を気狂ひの真似をなさるんです。えイ、そんな気狂ひの真似する人わたし大嫌ひ」


私淑していた葛西善藏の気狂いっぷりを書いた『足相撲』もあわせて読みたい

http://www.aozora.gr.jp/cards/000249/card1337.html


西村賢太 『蠕動で渉れ、汚泥の川を』 『(やまいだれ)の歌』

ミハイル・バフチンカーニバル文学と読んだドストエフスキー作品のように、これ以上ないほど気まずく不謹慎破綻の場面を職人的な巧みさで書ききるようになった著者の近年の作品はすべて必読。

2017-06-29

PUBGをやってて不思議なこと

八角形の建物を「六角」とみんな言ってること。

ドン勝」みたいに翻訳元ネタかと思って調べたがそうでもないらしい。

そこで思いついたのが外見が六角堂に似てて勘違いした説、あると思います

 
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