2021-07-05

ある医師との対話

これから書くのはかなり昔にある先輩医師と久しぶりにあった際、喫茶店かどこかで話したことだ。

一言一句覚えているわけでないのであやふやな部分はあるが、大筋はあっていると思う。

特定を避けるために口調などは変えてある。

こんなことを書いて誰かの役に立つかは分からない。

所詮私の自己満足、いや贖罪に近い独り言だ。

それでも読みたいという酔狂な人だけ付き合ってもらえればそれでいい。

「お前、せっかく医者になったんだからもっと稼げばいいのに。」

「はあ、一応普通サラリーマンよりはかなり収入はあると思うんですが…」

「いやいや、保険診療でちまちま稼いでんだろ?

そんなもん仕事の忙しさからしたら割に合わんだろ。自由診療やれよ。」

自由診療ですか…」

自由診療は楽だし儲かるぞー。」

「でも、患者集めるの大変じゃないですか?」

「そんなもん簡単だよ。SNSとかで見込み客の喜びそうな話をばらまいてやるだけ。」

「見込み客…ですか?」

「世の中にはな、親とか学校先生かいじめっ子とかへの恨みつらみやら怒りやらを

いい年になっても抱えてる奴らが一定数いるんだわ。」

「ええ、それはなんとなく想像がつきます。」

「で、そういう奴らをさ、簡単に囲い込める情報の出し方があるのさ。」

情報の出し方…」

「そう。大きく3つあってな、①常識定説とかの反対のことを言う。

②断定口調。③感情を煽る。これにしたがって出してりゃだいたいいける。」

「…それは具体的にどんな感じなんですか?」

「まず、1こ目な。これが特に大事。見込み客の奴らはさ、権威とか権力とかが根本的に嫌いなの。

多分恨みや怒りのある親やらと重ね合わせるんだろうな。

から政府とか大企業とか医者とか権威のありそうなものには自動的に反感を抱くわけ。

そこで、普通医者がすすめる薬とかワクチンとかは本当は毒だとか、

大体の人間が食べてる○○は危ないからやめろとか言ってやると簡単に信じる。」

「本当にですか?」

理系に明るい奴は引っかからないのも多いけど、物事科学的に考えられない

中高年の女なんかはほぼいけるな。だいたいが、常識的な科学理論にも権威を感じて反感持つし(笑)

「なるほど…。」

科学に弱いだけあってそのへんからキトー理屈あいそうな論文でも拾ってきて、

『ここに書いてある』とかやっとけば『シェアさせていただきます!』とか言って拡散までしてくれるぞ(笑)

「バレないもんなんですかね?」

「まずだいじょうぶだな。査読とかメタアナリシス意味も知らんような奴らだし、

そもそも常識の反対を信じたくて信じるんだからな。」

「信じたくて信じる。」

「そう、奴らは大嫌いな親やらと同一視する政府とか医者とかをを見返したくてしょうがない。

しかも、その気持ちが心の底にあることにすら気づいてないし、見る度胸もない。

そもそもその親やらに自己肯定感を砕かれて劣等感の強い奴らにとって、

普通の人たちは知らないことを私たちは知っているという優越感は麻薬みたいなもんさ。

一度味わわせりゃこっちのもんだな。」

ちょっと怖いですね。」

「いいんだよ、どうせ一生治らねえから。いい気分にさせてやるのもサービスのうち。」

「治らないものでしょうか?」

「ああ、よっぽど腕利きのカウンセラーのとこに気長に通い続けりゃ可能性はあるが、

民間資格カウンセラーなんかは奴らと同類なのが大半だし、

臨床心理士権威を感じて敬遠するし、行ったとしても占い師か怪しいスピリチュアルってのが関の山。」

「そんなものですか。」

「そうだよ。実際うちに来る奴らはチャクラがどうたらとかレイキがどうたらとかに金使ってるバカも多いぞ。」

「…」

「で、2つめな。断定口調にする。そもそも自分に自信がない奴らだから言い切られるとより確信を深めるんだな。」

医学の話で100%って言い切れることなんか…」

「まあほとんどないね(笑)マジメな医者ほど可能性で話す。

そこが狙い目で、言い切らないのは隠してることがあるからだって解釈にするんだわ。

奴らは基本的に心がふらついてるから答えがハッキリしないことに耐えられない。

からすぐに答えが出せるように白黒で考えるクセが染み付いてるのな。断定してもらうとホッとするらしいわ。」

頭が悪いんですかね。」

「いや、意外とそうでもないぞ。話してるとそこそこ賢こそうなのも多い。

結局心になんか抱えてるやつはなんかのポイントをつかれるとまともな思考回路が働かなくなるんだろうな。」

「たしかにそうかもしれません。」

「でもって最後に③感情を煽るってやつな。奴らが根本的に心の底に恨みや怒りがあるってのは話したな。

その感情を代弁するように発信するんだ。」

「それはどんなふうに?」

医者とか製薬会社とかを敵に見立てて口汚く批判したりするのさ。

医師製薬会社利権にまみれていますワクチンなんて毒物を金儲けのためにバラまいてるなんて許せません。』

みたいな感じな。基本冷静に批判しつつ、時々『氏ね』とか言うとめっちゃ受けるんだわ(笑)

「その人たちにしたらスカっとするんでしょうね。」

「そうそう、よく分かってきたじゃん。」

「ええ、でもその人らはよくても家族とか友達とかが横槍を入れてきませんか?」

「ああ、あるある。そんなときには魔法言葉があるのさ。」

魔法言葉?」

「『頭のいい人には逆に分からないんだよ。』ってやつな。」

「?」

意味不明だろ(笑)。奴らはそこそこには頭がいいけど、めちゃくちゃいいわけでもない。

そこにコンプレックスつのらせてるわけ。だから、暗に君のほうが優れているっていうメッセージをやれば

嬉しくなってすぐこっちに戻ってくるって寸法な。」

「ふーむ…。」

「頭のいい人ほど常識に囚われてしまうとか言ってやれば有頂天だな。

『世の中の人間は洗脳されてる。私は真実を知ってる!目覚めた!』とか言い出したらばっちりだわ。」

洗脳とか言い出したらヤバそうな感じはします。」

洗脳されてる奴らほど他人のことを『洗脳されてる。』っていうの面白いよな(笑)

「…」

「そこまできたらこっちに対する信頼度MAXな。

あとは何療法だろうが、グッズだろうが、機械だろうが飛ぶように売れるわ。」

「それはそうですよね…。」

「事前に本でも出しとくと完璧だな。出版社常識と反対のことを書いた本に

ニーズがあって売れるの知ってるからどこかは食いつくぞ。」

「………。ところで先生ワクチン打たないんですか?」

「はあ?打つに決まってんじゃん。俺も家族バッチリ打ってるわ。

薬も必要もの普通に飲むし。私一応医師ですから(笑)

当時話したことはこんなくらいか

ディティールはだいたい合ってるはず。

書き出してみてスッキリしたというのが本音

この駄文が誰かの目に触れるかどうかはもうどうでもいいかな。

読んでくれた人には一応ありがとうございます、とだけ言わせてもらいます

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