ネタバレしまくると思うのでまだ観てない、観ようと思ってる、という方は回れ右。
TLにたまたま流れてきた羊の木の予告を見てこれは面白そうなサスペンスミステリだ!と感じ、観に行った。
観に行く前は、6人の受刑者を受け入れた過疎の町で殺人事件が起こる、全員怪しい!全員互いに面識ないみたいだけど実は…!?同時期に帰ってきた元同級生もついでに怪しい!北村一輝はめっちゃ濃い!どうする錦戸君!みたいな内容だと思っていた。
話の筋全然違うけど、シャッターアイランドみたいな、閉鎖的な空間で起こるサスペンス!スリラー!ミステリー!かと。
勉強不足でこの監督のほかの作品を観た事なかったんだけど、予告で観る限り、画作りは私が大好きな黒沢清っぽい!不穏!好み!という感じだったし、もうハードル上がりまくってた。
なのでそういう意味ではとてもとても期待はずれだった。
画作りはよかった。不穏な感じ、好き。
天候までもちゃんと考察できるような作りになってた。謎がなくなったときに初めて青空が見せる、みたいな憎い作り方してた。(と思う)
北村一輝も濃かった。一人濃かった。
ただ思っていたような内容ではなかった。
6人の受刑者全員登場時は怪しかったけど、そのうち4人くらいは割とすぐに蚊帳の外になった。
途中で、一番品行方正な感じの松田龍平くんを探しに来た怪しいおっさんがいて、その時点で、松田龍平くんがなんか嘘ついてるか話してない事があるんだなということがわかった。
北村一輝、怪しい行動するけど、割とすぐにこの人一人じゃなんもできないチンピラなんだな、そして結構ちゃんと働いてるし、なんだよ濃いだけかよ、ってなった。
話の半分もいってない内に、怪しい人が松田龍平くんだけになり、そこで期待してたミステリ要素は消えた。
そもそも、事件らしい事件が最初の死人だけで、後はもう松田龍平くんが殺している場面を観客は見せられるわけで、ミステリも何もあったもんじゃない。
行く前、TLで「怖かった!」という声を見かけたんだけど、えっと、どこが怖かったんだろう?
松田龍平くんの気持ちが読めないところ?優香ちゃんが出会ってすぐにトップギアで錦戸くんのお父さんにアプローチかけたこと?それとも北村一輝の濃さ?のろろ?
画面から漂うよくわからな不穏さかな?それは本当に上手かったけども。
優香ちゃんが錦戸くんのお父さんと恋仲になり、やくざのおっさんがクリーニング屋の女将に許されたあたりで思った。
それまではあれ?あれ?ってなってた。謎が浅い!話が浅い!ってなってた。
でもヒューマンドラマだと考えればなかなかに上質なのではないか。
元受刑者で気持ちがわかる親父さんはともかく、黙っていればいいのにちゃんと自分の経歴を話しけじめをつける元やくざの老人と人殺しである事を知っても自分の感覚を信じて老人を受け入れる女将さんはこの話の一番の希望だなと思った。仲良くやって欲しい。
優香ちゃんもトップギアに持ってくのが早すぎてアレだけど、錦戸くんのお父さんに出会って新しい一歩を踏み出せたようだし幸せになって欲しい。あと若いお母さんがきたことで介護分担できるようになってよかったね錦戸くん。
市川美和子ちゃんはあんまり描かれてなくてよくわからないな・・・。でも子供と交流もしてるみたいだし、埋めた何かから芽は出たし、心癒されてほしい。
北村一輝もなんだかんだ受け入れてくれた漁師さんとは上手くやってたんじゃないだろうか。じゃなきゃあんな短期間で船を一人で使わしてもらえないよね。ただ結局悪い事をしようとしてたので不幸になったから、そこにこの映画のちょっとした説教くささを感じた。イソップ童話的な。
で、松田龍平くんだけども、彼は自分が得た穏やかな日常をあからさまに壊す人だけを殺してた。
仕事も上手くいってたんだろうな。刑務所入る前友達いなさそうな感じだったから錦戸くんが友達になってくれて嬉しかったんだろうな。
少年院も入ってたってことなら青春時代も平凡ではなかっただろうし、錦戸くんという友達を得て、趣味もできて、彼女もできて、青春時代をやり直したかったんだろうな。
それを脅かす人間は即殺すってなるのがまあサイコなんだけども、逆に松田龍平くんを探すおっさんが現れなければ穏やかに過ごせたんだろうな。あのまま。
私、腐女子なので、松田龍平くんの中の優先度がどうしても錦戸くん>>>(越えられない壁)>>>木村文乃ちゃんにしか思えなくて。
「月末くんが文の事好きだって知ってたら文と付き合わなかったよ」っていうのは本心だと思うし、木村文乃ちゃんは青春をやり直すためのパーツでしかなかったんだろうなって。だって付き合うまでがマッハじゃなかった?
どっちの女も手ぇ早えな!って思ったもん。
話逸れるけど木村文乃ちゃんが錦戸くんからの好意を感じ取りながらもちょっと面倒くさそうにしてたのはなんとなくわかる。ちょっとうざいよね。好意駄々漏れでアピールしてくるのに決定的なこと言わない人。錦戸くん顔めっちゃいいのにそこらへんのうざさ出すの上手かったね。木村文乃ちゃんを前にした錦戸くんは最初から最後までうざかったわ。
だからといってじゃあ松田龍平くんに!となるのがわからない。好みのタイプだったのかな?小さな町で色々自分の事詮索される中自分の過去を知らないそういうこと詮索しない松田龍平くんに癒しを求めたのかな?んーそれにしてもマッハ過ぎた。
松田龍平くんに前科がある事を知って態度変えちゃうとこ見るとそこまで好きでもなかったのかなーって思うし、正直木村文乃ちゃんが一番謎だった。
話を戻して、前科を知った木村文乃ちゃんが態度変えたことで彼女を切り捨てて錦戸くんの元へ行った松田龍平くん。
この時彼には自分が前科ものだと知ってても「友達」だと言ってくれる錦戸くんしかいなくなってしまったのかなと思うと、そして救いを求めて錦戸くんの元へ行ったのかと思うと可哀想だなって思うし、なんていうか、尊いよね。尊いわ~。
またこの後がね、前科を知ってても、そして少年院の事を知っても、自分の前で無防備に眠っちゃう錦戸くんをどういう気持ちで松田龍平くんは見つめていたのかと思うとね。
無防備に寝てるってことは錦戸くんが松田龍平くんのことを、自分を脅かさない存在だと信じているからで、木村文乃ちゃんに怯えられた直後の松田龍平くんからしたらそれは本当に友達ができたと実感できる瞬間だったのではないかなあと。
そんなこんなでのろろ審判に錦戸くんを誘う松田龍平くんなんだけども、沈むのはどっちだと思ってたんだろう?
沈むのは自分だと思ってたのかな。それとも自分が浮かぶと思ってたのかな。。
のろろの裁きで浮かんだなら自分は救われるだろうし、友達の錦戸くんが浮かんだならそれはそれでいいし、のろろ裁きなど迷信で2人とも沈んだのならまたそれもいい、みたいな感じだったのかな。
そもそも「自首して!俺待ってるから!」なんていじらしい事言う錦戸くんに対し「死刑になるだけだから」って返してたから、生き残っても生きる道がないことは分かってたみたいだし、木村文乃ちゃんに「月末くんは俺の隣で寝てるよ」って言ったりもしてたから(言ってない)、俺月末くんと死にます!って言外に宣言してたのかなとか、そう思うと一緒に死のうとしたのかなあと思った。じゃなきゃあのまま首絞めて終わるよね。
そして最後のアレね・・・。
最後に突飛過ぎてびっくりしてそれしか覚えてない映画不動の第一位は模倣犯なんだけども、あれに通じるラストで、アレなかったらな~って思ったけどなかったらなかったで松田龍平くんが捕まって寂しい事になりそうだったのでまあいいのか・・・。いいのか?
(どうでもいい事だけどキングスマンの首飛ぶのとこでわ~模倣犯だ~って思ったんだけど同じように思った人他にもいるよね?)
そういえばのろろ審判の話を錦戸くんから聞いた時一緒に落ちてみない?って腕を取ったら錦戸くん冗談やめて~みたいにキャッキャしてたけど、あれにも救われたのかなあって今これ書きながら思い出した。尊い。
エンドロール、海面からの視点ぽかったけど、あれ誰の視点なんだろうって思うと、それだけちょっと怖かったかな。
予告のせいで途中まで別方向に期待してあれ?あれ?となってたので、もう一度ヒューマンドラマ、そして古き良きJUNE作品として観たいと思う。
あ、あと感想書くために思い出してると「もしかして錦戸くんが一番のサイコなんじゃ・・・」と思えてきたのでそれを確かめるためにも観たい。
これ読んで観に行こう!ってなった腐女子は、私ほとんどネタバレしちゃっているので錦戸くんと松田龍平くんの交流を事細かに見るために行って下さい。多分そうじゃないとネタバレのせいで何の新鮮味もないと思うので・・・。
逆に萌えるシーンについてはネタバレせずに置いているところもあるよ!気遣い!
http://www.club-typhoon.com/archives/21955747.html
なるほどな!って思った。