10年間、ずっとニコ厨を続けてきた。現在もプレミアム会員だ。
しかし、最近のニコニコはあまりにも使いにくい。プレミアム会員なのに動画読み込みがピタリと止まって動かない。再生途中にシークすればシークポイントで固まる。生放送は追い出される。正直言ってプレミアム会員であるメリットがほとんどない。
少しネットで探るだけで、同じような意見をわんさかと見ることができる。みんな我慢ならなくなったのか、ついに今年プレミアム会員数が減少に転じてしまった。
ニコニコ唯一の強みと言ってもいい動画コメント、その数もどんどん下がり続けていると聞く。コメント数は最盛期の25%程度にまで落ち込んでいるという。
このままではニコニコは早ければ来年にも立ち行かなくなるだろう。誰の目にも明らかだ。
こういうニコニコ衰退が見え始めたタイミングでの、新バージョン(く)の発表告知。
ユーザーはみんな「ニコニコは尻に火がついて重い腰を上げざるを得なくなった」と思ったに違いない。そして「画質、重さ、完全解決」という、大風呂敷広げすぎに思えるブチ上げにもある程度の期待を寄せたと思う。「今度のニコニコはもしかして本気なんじゃないか」と。だって、それをしないとニコニコは競合他社に潰されるんだから。
ニコニコ運営はもともと人をバカにしたような態度を取る事を是としてきた感がある。動画投稿者やユーザーに目線を合わせているつもりなのか、ノリが大学サークルなのだ。「俺らすげえ面白いだろ?こっち来いよ」という戦略である。ここ数年まではそのノリが受けた。しかしこれは、ユーザーが許容しなければただの殿様商売にすぎない。
はっきり言って、ニコニコ運営のやることはまったく面白くない。面白かったのは動画投稿者でありエスプリのきいたコメントであり、ニコニコはそれを横取りしてきただけだ。「後押し」じゃない。「横取り」だ。
この「面白いことやってやろう」の危機感のなさが最悪の形で露見したのが11月28日の(く)の発表会だった。まず、自身が定めた10月30日の期限を守らず、期限が過ぎた後で突然の1か月近い発表延期の告知。この時点でかなりのユーザーがニコニコを見限った。我慢して待ったユーザーが見せつけられたのは、うすら寒いゲームやら生放送のエフェクト紹介に終始し、しかもそれを激重の新サービス上で限定公開で行うという、最悪のお遊戯会。新バージョンリリースはさらに延期の2月28日。さんざん延期したにもかかわらず「画質、重さの解決」への答えはなかった。ユーザーの怒りは頂点に達し、圧倒的な数の悪評がネットにあふれ、プレミアム退会者が続出。
ニコニコ運営はこれを予見できなかったのか?たぶんできなかったんだろう。内輪で受ける面白さにしか興味がなかったニコニコには。
さすがにこの状況に危機感を感じたのか、ニコニコ運営は11月30日に謝罪文を掲げた。そこには、画質、重さが解決できなかったお詫びと、来年1月までに画質を向上させる(投稿動画は1080p、生放送は720p)約束などが記載されていた。12月3日に予定されていたニコキャスの発表は当然中止。
この謝罪文を見て、あれっ?と感じた。内容が真実なら、2か月で画質向上できることになる。「新バージョンは2月28日から」という発表はいったい何だったのか?思いがけない批判殺到にビビった運営が、エンジニアを馬車馬のように働かせて強引に画質を向上させることにしたのか?それはドワンゴが今までやってきた行き当たりばったりの機能拡張と何ら変わらない対応なんじゃないのか?モヤモヤだけが残った。そう思った人も多かったようだ。
そんな中、ドワンゴ取締役の栗田穣崇氏が「ユーザーの意見をちゃんと聞く」とツイッターでつぶやき始めた。以後、栗田氏が矢面に立っていく。
この時、ニコニコで面白い動画を見つけた。百花繚乱氏というニコニコでも名の売れたユーザーが発表会放送を見ながら厳しいツッコミを入れるというもの。彼の指摘はかなり的確なもの多かったので、見入った。百花繚乱氏はニコニコ公式イベントなどにも多数参加しているそうで、ニコニコの事情にも詳しいようだった。
栗田氏のもとにはたくさんの意見が行ったらしい。それに感激したからかどうかは知らないが、栗田氏主導で12月12日にユーザーとの意見交換会が開かれることになった。意見交換会はドワンゴ本社オフィスから生放送、エンジニアの鈴木氏とユーザー代表の百花繚乱氏も同席、時間は2、3時間、一般プレミアムともに追い出しなし、コメントを徹底的に拾う方針と、かなりユーザーに配慮したものになった。この放送を生で実際に見たが、最初の栗田氏のお詫び会見はかなり覚悟の見えるものだったと思う。以降、生粋のエンジニアらしく誠実に技術面の説明をする鈴木氏、なるべくユーザー意見を拾おうと努める百花繚乱氏、対話重視を強調する栗田氏、ともにそれなりに好印象を与える放送だった。これを好感して翌日のカドカワの株価も上がったという。
ニコニコ運営は頑張っている。サーバ増強も、システム移行も、着々と進めている。1080p動画対応は12月11日から始まり、画質に関しても、前倒しで進めている。そういう放送だった。
ニコニコ動画は変わったのか?いや、どうだろう。
「やります、やってます、もっと告知します。いつできるかは、また知らせます」と栗田氏は繰り返していた。まあ、要するに、何もかもこれから、ということなんだろう。様子を見るしかない。
それよりも、栗田氏が放送冒頭で驚くべきことを言っていた。「川上は運営責任者を降板、自分が運営責任者となる」と。こんな大事なこと、口頭で一言で発表するようなものなのか?そもそも運営責任者とは何なのか?会長という立場は運営に責任を持つものではないのか?栗田氏が会長の意見をすっ飛ばして何でもできるのか?そのあたりの説明が何もなかった。
あの悪夢の発表会の時、ニコファーレ壇上には3人の登壇者がいた。一人は最悪の発表をした川上会長、二人目は夏野剛取締役、そして三人目は今回「運営責任者」とやらになった栗田氏だ。つまり、栗田氏は川上会長とともに糞みたいな(く)を描いてきた張本人ではないのか?
意見交換会に川上会長の姿はなかった。それは不満だが仕方ない。それより気になったのが、川上会長を悪の独裁者よろしくさんざん叩きまくり「川上が降りたから問題解決」的な空気を演出していたことだ。栗田氏は発表会で川上会長とともにいたのに、意見交換会で川上会長を叩きまくる手のひら返しはあんまりじゃないのか?あまりの露骨な川上叩きに、栗田氏と川上会長が八百長プロレスしてるだけなんじゃないかと勘繰ってしまいたくなる。百花繚乱氏もツッコミに精彩を欠き、川上パージ放送の空気づくりに一役買っていたように思う。途中から百花繚乱氏が率先してコメントに回答していくという、「あんた運営の側なの?」的なおかしな状況になっていた。
自分が思うに、ニコニコの病巣は川上会長だけじゃない。こんな状態でユーザーの意見だけ際限なく吸い上げる態度だけ見せられても、不安が募るばっかりだ。
栗田氏が言うには、これからもどんどんユーザーの意見を聞き、取り入れるらしい。でも、八方美人はユーザーの欲求ハードルをどんどん上げる。エンジニアに無茶なしわ寄せのないようにしてほしい。ユーザーが望んでいるのは「まずやるべき事をやれ」ただ一点なのだから。
意見交換会の翌日、ニコニコ動画を見てみた。重さは相変わらずだ。そして、なんと動画検索結果に強制的に検索とまったく関係ない広告動画が表示されるようになっていた。栗田氏は「ランキングの広告汚染を何とかする」と言っていたが、検索結果は広告汚染してもいいと考えてるのか?