2021-07-23

SSSS.DYNAZENON 怪獣優生思想キャラソンはどうしてドルソンになったのか


ダイゼノンキャラクターソング、出ましたね。アマゾンから来たメガジャケがマジででかくでびっくりした。

ガウマ隊のキャラソン言わずもがなほんとマジ最高で、特に夢芽のキャラソンは既に擦り切れるほど聴いているし、涙腺がガチで緩む。この前なんか「ユメエッしあわぜになっでなぁ!!!」と口走り後輩に「頭大丈夫ですか?」と心配された。大丈夫大丈夫と目元を拭いながらまた泣いた。ヤバいである

しかし今回話題にしたいのは怪獣優生思想の方のキャラクターソングである

4人のデュエット約束」だ。

爽やかで明るいナンバーとなっているが、タイムラインではこの曲の解釈の仕方に納得できない声も多かった。

というのも製作側の話を伺う限り怪獣優生思想一枚岩ではなく絆もガウマ隊ほどではないのだという。

 

「それを絆だなんちゃら歌うのは流石に原作を見てないんじゃないか?」

原作重視のファンからしてみれば不満な気持ちはあるだろう。実際そういう声も多かった。

自分もこれを聞いた時待て待てどうしてこうなった?急にアイドルグループみたいになったぞ!と思いしばらくネタにしていた。

ところでダイゼノンは素晴らしい作品だったと思う。みんな知ってるよね。

俺はもうなんか最終回では涙がボロボロになって画面見えなくなってよもゆめぇ!ちせえ!暦就職したんか!ガウマさんを姫とあわせてやれよ!とかそんな言葉を嗚咽と共に吐き出したことを覚えている。目が冴えて全然眠れず気づけば朝だった。

そして告白すると怪獣優生思想にはそこまで興味がなかった。

よくある倒される敵集団という感じである。ジュウガの告白ネタにしたくらいであとはムジナのグッズたくさん出るといいなあ、くらいの気待ちしかなかった。

怪獣優生思想被害者だ!という意見が流れてくることもあったがまあなんだかんだであいつら好きにやったし良かったんでない?という感じであまり気にしてはなかった。

しかキャラソンを聴いて思うようになったことがある。

怪獣優生思想ファンも、俺たちとおなじように嗚咽と共によもゆめぇ、したかったのではないだろうか?

いや本当によもゆめぇ!なわけではない、俺たちにとっては怪獣優生思想はわりとどうでもいい存在だ。しかファンにとっては違う。

怪獣優生思想は救いを求めていないかもしれないが、ファンには救いが必要なのだ


男女比率3対1。

ムジナが圧倒的人気を誇っているとは言えポジションとしては前作の新世中学生に近いだろう。つまり怪獣優生思想はどちらかといえば女性向けのキャラクター集団だ。

最終回当時のあの展開はわりと怪獣優生思想ファンをやっていたお姉様方にとっちゃショッキング出来事だったようでだいぶタイムラインが荒れていたことも覚えている。回ってくるツイートマジで女って怖えな…と思いながら目を細めて眺めていた。

しか女性特有の閉鎖感のあるファンコミュニティで、顔しか見ていないメンヘラというレッテルを貼られるとなればどうだろうか?

だがそのキャラ設定を今更覆すわけにはいかない。彼らは犯罪者だし、大量殺戮をしているのだから、そこは受け入れるしかない。

そこでつけ入る余地となったのが絆だろう。

犯罪者同士の間にも絆は生まれるし、そういったキャラがウケやすいことも経験上よくわかる。

それさえ否定されてしまったらどうなるだろうか?

言っちゃなんだが怪獣優生思想に悪役としての魅力はあんまりない。

モータジョーのように目的意識はなくジョーカーのようなカリスマ性もない、レクター博士のようにぶっ飛んでもいない。流されるままというキャラの特徴は魅力からはかけ離れている。

から悪役としての格がある、という推し方もできないわけだ。

しかし絆は別だ。

目的意識がなくとも、カリスマ性がなくとも、絆はそれに拮抗しうるくらいに強い属性になりうる。

アカのクソデカ百合感情という奴だ。さらに絆は売れる。六アカがどれほど売り上げに貢献してきただろうか?

女性界隈では布教という文化がある。詳しくは知らないが布教と言うからにはそれにもある程度の説得力がなければ困るのではなかろうか?

男性向けの同人誌実用第一の一方女性向けの同人誌関係性を描くと言われていることはよく知っているが、そうなるとないないづくしの彼ら彼女らを布教するにあたっては絆のようなものがないとかなり難しくなるのではないだろうか?

ただでさえ犯罪者推しているとならば自分人格まで疑われる可能性があるのだ。

ちょうどルックバックが公開されてそう思った。

アニメーション会社が襲撃されたという点もあって統合失調症殺人鬼に対する当たりは強い。もちろん犯罪はあってはならないことだがあの一件で犯罪者というものがよりオタク界隈でリアルな敵となったように思う。

昨今女性の自立が叫ばれる空気感の中、そう言った人格上の弱点と疑われるようなことがあっては、そのコミュニティで不利になるのではないだろうか?

本当に倫理観のある人間ならそんなキャラは好きにならないはずだ、と侮られるかもしれない。

言い過ぎかと思うのならばダイゼノン本編を見て欲しい。イジられキャラであった夢芽の姉は、平気そうに見えただろうか?


これはおそらく怪獣優生思想ファンである人間達に向けたせめてもの慰めなのだと思う。

怪獣優生思想に絆がないにせよサイコパス集団であるにせよ、それが示されたのは終盤も終盤で、それまで彼ら彼女らを追っかけてきた層に取っては彼らは人間的であって欲しいし、絆があって欲しいし、周りの人間にも彼ら自身尊重してもらいたい。

ファン解釈が欲しいのではなくプラス言葉が欲しいのだ。

キャラを、アイドル推している自分たちに対し、でも犯罪者じゃん、でも大して仲良くないじゃん、などという冷めたマジレスを送ってほしくはないのだろう。


「それは現実逃避だろ…女ってそんなんばっかかよ…」と思われる向きはよくわかる。

しかし残念ながらこれはキャラ商売である

既に怪獣優生思想はグッズも多数出ている。製作側としては人気がでないよか人気が出た方が助かるという気持ちはあるだろう。在庫の山を抱えたままでは次回作を作ることもままならない。

キャラソンという媒体を買う人は少ない。ただの歌であるリーズナブルな値段とは言え本編のファンでもない限り、サントラでもあるまいし手を出す人間は多くはない。

ゆえに少なくともキャラに入れ込んでない層はキャラクターソング複数購入などしないだろうし、待ちきれなくて配信で買うなんて真似もしない。

大抵の人はガウマ隊のグッズに手は出すが、という感じだろう。それでは商売上困るのだ。搾り取れるだけ搾り取らなければ社員を食わせていけない。次回作の質も上がらない。

とは言え傷の舐め合いには限界がある。

そしてそれに対して彼らは実はこうなんだよね、と外野が口出しするのも悪手だ。

対岸の火事に対して講釈垂れてるオッサンレッテルを貼られてしまう。ファンたちは現在進行形で辛いのだ。

そしてそのファンたちの心を救う上で大事なのは、やはり公式から言及だろう。

今回のキャラソンはそう言った視聴者に対するいわば手当て、治療薬、心の包帯のような面もあるのではないだろうか。


そんな奴はさっさとファンを辞めろ!という意見もあるにはあるだろう。俺だって一部の強いファンによって公式が歪められるのは本意ではない。

しかしこれは商売だ。

この曲の絆の部分のオーダーがトリガーから来たのかそれとも作曲者側がそう言った視聴者側、というかファン心理を汲み取ったのかはわからないが、下手に解釈を深めるよりいい結果になったのではないかと思う。

というのも大多数の人間はそこまで解釈に興味がないからだ。

字面通りにコンテンツを受け取りがちでそのコンテンツの受け取り方はディープな層から受け売りであることが多い。

多数の意見に流されがちな無垢視聴者は「良い」と言われたものにはそう言ったバイアスをかけがちだし、逆も然りだ。

実際検索をかける限り厳しめな意見が多かった怪獣優生思想へのツイートキャラソンの発売によって曲自体評価とその歌詞の明るさから好意的な方にスライドしたように思う。

こういう誤謬が広がることによって少しでもファンをとどまらせる目的もあったのではないか


商売シビアだ。

から次へとコンテンツが現れるこの時代、都合が悪いことが起こったらやーめよ、と他のコンテンツを楽しめてしまうのがこの世界だ。

そしてその数はSNS上で見るよりも遥かに多い。アカウントを取得したとしても実際に積極的発言する層はそこまで多くはないし、そもそもツイッターをやらずにアニメだけ見る人間も多い。そんな人間でもキャラグッズを買うのは珍しいことではないらしい。

自分立ち位置意識し、攻撃されないように流されるまま生きる。

そんな空気感世界に蓬はいた。

そしてそれに向き合った夢芽は傷つき追い込まれだんだんおかしくなっていった。

そんな彼女傍観者だった蓬が救う世界を、ダイゼノンは描いた。

キャラクターファンの心を救い、作品も汚さない。そう言った狙いがキャラクターソングには託されたのではないのだろうか?


もちろんただの製作側の一発ネタが良いように動いたという可能性も否定できなくはない。

けれど少なくとも作曲者側は売れるように書かないと次の依頼も望めないわけで、視聴者目線については意識するであろう。

どんな曲を顧客は求めているのか、そしてどんな曲ならば視聴者が受け入れ、話題にしてもらえるだろうか。プロである以上そこら辺は当然意識する。この解釈は受け入れられるだろうか?という問題考慮しないはずはない。

彼らはアマチュア集団ではない。モノを売っているのだ。

その結果生み出されたのがこの曲ならば、それにも意味があるはずだ。

作曲家が魂を込めたこの歌を軽んじたくはないと推しの子を読んで思った。GOAさんがんばれ。


もう次回作にはマジでマジで期待している。前作の期待を遥かに上回るダイゼノンがお出しされた今ハードルは上がるばかりである

しか市場至上主義の荒波にいる中、純粋作品を愛しているファンだけに接してはいられないだろう。今回獲得した新規客層がお金を落としてくれるよう、そして次回作がより良いクオリティになるようにその客層の目線に立って考えなければいけない。

そのためにも俺たちにはいくらかそういった媚びをゆるす鷹揚さが必要なのだと思う。

それは間違いなのだ断罪するのではなく、たとえ嘘や誤謬でも受け入れる鷹揚さが。それくらいでダイゼノンという作品の輝きは消えはしない。

監督は人気のために作品を歪めるほど、作品に対して真摯さを欠いていないはずだ。

アカを出せなくてもやってやると言ってくれた監督からこそ、そしてこの素晴らしい物語を作り上げてくれた監督からこそ、信用できる。


怪獣優生思想ファンが離れず、次のグリッドマンユニバースを楽しんでくれるよう、そのためにアニメーターを応援してくれる気持ち萎えないように祈るばかりである

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