2017-08-21

JKハルは異世界娼婦になった 千葉についての雑感

千葉気持ちわからんでもないひとりのクソオタとして、千葉についての雑感を以下に記す。

政治的観点から物言いは極力さける予定だが、そう見えるだろうなというところもあるので注意。

また特にオチはなく、そしてネタバレは一切回避していない。未読者は即ブラバされたし。

 

実はハルにマジ惚れしている千葉

実は、ともったいぶる必要もないのだが、実際のところ千葉ハルにマジ惚れしており、それが千葉というキャラクタに深みを与えている点はけっこう興味深い。

千葉は従前にも説明した通り、異世界転生(転移チートハーレム無双モノの主人公メタったキャラだ。

そういう観点に立てば、キヨリも【千年に一人レベル美少女で、主人公千葉)に強く惹かれており、従順性格でもちろん処女(初登場時はフェラすら知らない)】という異世界転生(転移チートハーレム無双モノのヒロインメタったキャラだというのが見えてくる。

雑に(本当にひどく雑に)ノクタでやる異世界転生(転移チートハーレム無双ネタとしてこれらの要素を考えるなら、前世で陰キャラとして鬱屈した人生を送った千葉は、転生した異世界で成長促進+その他のチートを得ることによって勇者となり、最高の美少女であるキヨリをゲットして男に成り上がる。

ハルも含めた三角関係として見るのであれば、前世象徴するヒロインとしてハルがおり、異世界象徴するヒロインとしてキヨリがいる。そのふたりハーレムの一員としてゲットすることによって千葉前世鬱屈を解消しつつ、異世界でウハウハする――みたいな話になるわけだ。

実際に千葉がそういう見方をしているシーンが4話にあって、

「俺、アイツのことなんて何とも思ってねーから。誤解すんなって」

「誤解って何よ? あたしも知らねーし。断るにしても付き合うにしてもあんたの勝手なんだから、あたしをダシにすんなってムカついてんだよ」

(中略)

「え、いや、なんで怒ってるの? だから俺、ハーレム攻略も順序が大事だと思ってるし、最初の女は元同級生奴隷メイドハルで決まりと思ってるし……」

(チーレム主人公である千葉からは、美少女キヨリの登場に(ツンデレキャラであるハル嫉妬したように見えている(もちろんハルはそんな千葉がただただウザく、そんなこっちの気持ちを解さないことにムカついているだけだが)。

普段はこういうチーレムモノを愛好する)俺は、ある種のお約束を逆手にとる作者一流の諧謔をここに見る。

さて、ここで注目しておきたいのは千葉がキヨリにさほど興味を示さない点だ。彼は明らかにキヨリ<ハル論理で動いており、なんならキヨリがモーションをかけてきたことをネタハルを釣ろうという、キヨリのことをただのエサとしか思ってないフシさえある。そしてそれがまたハルをムカつかせる(ちばはじつにばかだな!(ドラえもんっぽく))。

この傾斜はチーレム主人公メタキャラから明らかに逸脱しており、ある種のご都合主義だと言える(本当にキヨリとくっついてハルの前からいなくなってしまうと話に絡められなくなるという作者の都合)。

ただこれは作内でちゃんとケアされており、それが千葉ハルのことが本当は好き、という点なのだ

もともと千葉ハルがこの異世界にやってきたのは、暴走トラックに揃って轢かれたせいだが、ハル視点から見ると

そのときすぐ教えてくれれば避けれたかもしれないのに、わざわざ私のとこまで走ってきて抱きついてきたせいで、2人とも死んでしまって異世界まで吹っ飛ばされた

となる。

これを千葉視点から見ると、

「俺が、どうして死んでまでおまえを守ったと思うっ。おまえは、もっと俺に感謝しないとおかしいだろっ。(後略)」

となる。

千葉のこの叫びは流れをちゃんと追っていくと中々に壮絶で、初めて読んだ時は、

いやー……。ほんとさー……、千葉さー……、お前さー……、馬鹿だよ。なんでさ、ハルのことを理解しようとして自分のことを理解してもらうようにコミュニケーションとれなかったんだよ、そうしないとわかってもらうなんてできるわけないだろ。でもさー……、俺はお前のその気持ちわかるよ。陰キャだもんなあ、教室の中心で輝いてるようなイケてるJK自分本心なんてなかなか打ち明けられるもんじゃないよなあ、相手自分たちのことキモオタって言ってたんだもんなあ、無理だよなあ、言えないよなあ、ほんとその気持ち、わかるよ。

てなことを思いましたまる

というところで終わらせてもなんなのでもう少し続けると、これは千葉が【俺が生命をかけて守ろうとしたんだからハル感謝すべきだ、そして異世界で成り上がる俺の側にいるべきだ】という子どもじみた欲が破綻した瞬間だ。これによって千葉ハルは決別する。

千葉サイドの論理でこの瞬間を斬るなら、(千葉より圧倒的にコミュニケーション能力に長け、千葉批評するほど状況が見えていた)ハルだって俺(=千葉)の気持ちに気づいてフォローしてくれなかっただろう、となる。

もちろんハルにそんなことをする義理はなく、批判されるいわれはない。けれども千葉がここで暴発してしま論理物語の中にちゃんと担保されており、千葉意味なく怒っているわけではない。千葉理屈感情理解することで共感してやれる余地は残っていて、千葉はただクソミソに叩かれるサンドバッグとしてここに存在するわけではない。

そしてこれは、物語が進むごとに超人になっていくハル(まあもとからそうなんだけど)も聖女でも聖人でもなかった、ただの東京JKにすぎないんだよ、という提示でもある。

JKハル』は、ハルをとにかく称揚し、千葉をとにかく叩くような物語ではないのだ。

 

ルペちゃんに教育調教)されている千葉は救われているか

レベルキャップによってチートに陰りが見え、ハルやキヨリとの関係破綻した千葉はその後、ルペちゃんに教育されるようになる。

「確かに童貞くささはまだ抜けきらないけど、言われたことぐらいはちゃんと出来るようにはなったよ。ハルちゃんもキヨリちゃんも、千葉くんのこと育ててやるつもりなかったからか、自分で工夫するってこと知らなかったんだよね。だから私は、まずは立場から教えてあげたよ。優しくしたり、叱ったり、甘やかしたり。ほんと時々はぶったりもして、それから泣くまで褒めてあげたり。あとセックスの後はだいたい不機嫌になったふりして、自分の何が悪かったのか考えさせたかな。根は真面目だし、一つのことにハマれば熱心になる子なのはわかってたから。今じゃあの子も私のこと『ママ』って呼んで甘えてる。素直にはなったから、最近ちょっと放置無視の期間を設けて、自分もっと工夫して私の気を引けるように様子見してるとこ。お金は持ってるし暇な時間もあるようだから、いろいろ貢いでくれるよ。だけど、私って物よりは愛情が欲しい人だから。お店の前で土下座くらい出来るようになったら、褒めてあげようかなって思ってるんだ。えへ」

土下座のくだりはさすがにどうかと思うが、基本的には泣いてわめく程度のコミュニケーション能力しかない赤ちゃん千葉を、ルペちゃんママ教育してあげている話だと言って良い(「千葉くんのこと育ててやるつもりなかったから」とハルとキヨリが直球で批判されているのも面白い)。

俺はここに救いを見る。

JKハル』は男尊女卑世界で超前向きな東京JKサバイブする話だが、その主要な価値観として、相手コミュニケーションを取ろうとせず自分をおしつけてばかりやつはクソ(男女関係なく)というのがある。コミュニケーションをとって相手のことを思いやりわかり合おうとするのを是とする世界において千葉は圧倒的に弱者であり、それがルペちゃんによって改善されていく。彼は今後、少しずつコミュニケーションが取れるようになって、本当の意味での友人、そして恋人ができるときがくるかもしれない。少なくともその可能性はしっかりと開かれた(番外編ではそんな千葉活躍が描かれた)。

俺はそのことを、【救い】と呼びたいと思う(ただし土下座は勘弁してやってくれマジで)。

  • そしてこれは、物語が進むごとに超人になっていくハル(まあもとからそうなんだけど)も聖女でも聖人ではなかった、ただの東京のJKにすぎないんだよ、という提示でもある。 『JKハ...

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