はてなキーワード: 昨夜未明とは
昨夜未明、ホテルオークラにて落語家でミニマリストで政治家の三家蝶フォッケウルフ氏が、本日の東京都新型コロナウイルス新規感染者についての意気込みを発表しました。
スクール水着の上にメイド服を着た三家蝶氏は、「今日こそ400人超えに期待。毎日に増える増えると不安を煽っている人がSNSなどネット上にはたくさんいる。このままダラダラ200人台を推移しているようでは、彼らすべてが嘘つきになってしまう」と涙ながらに訴えました。
新型コロナウイルスの新規感染者のグラフに詳しい立命館風大学の袋叩教授によると、毎週木曜日は新型コロナウイルスが活発に活動する。グラフを見れば一目瞭然。とのこと。
また袋叩氏は、三家蝶氏の主張は心に刺さった、私も「このままではすぐ1000人になる」と言った手前、新規感染者数が増えてもらわないと困る。と三家蝶氏へエールを送りました。
毎秒144個の檸檬を射出可能な梶井基次郎を沿岸部に配備してビタミンCの不足を補い、御歳暮で貰ったカルピスの原液を燃料にして太平洋の横断を図る。貸したまま返ってこない猫の手に想いを馳せて、ハートのうつわを浴槽に沈める。浦島太郎、浦島太郎、おはようございます。ハートのうつわが浮かんできた。浦島太郎、浦島太郎、おはようございます。さっそく猫の手が片方返ってきた。U字磁石をブラウン管テレビの側面に当てると、2009年のニュースが映し出された。「国連軍は昨夜未明、栽培中のプチトマト4個の奪還に向けてプラトンメールの使用を承認しました」これは大変な事になった。自分も動かざるを得ないかもしれない。
施設のおじさんから、あの女が死刑になると聞かされた。そして、あの女が私に会いたがっていると。もちろん嫌なら行かなくてもいい、けれども、出来れば会いに行って欲しいと。私はそうすることにした。今までずっと、あの女に会って話を聞きたかった。でもその勇気が出なかった。だけど、これが最後ならば。会いに行かなければならない。
私の母は鬼だった。母に殴られなかった日は記憶にはない。包丁で切られた傷は体のあちこちに残っている。私の右足は少し外を向いていて歩きにくい。母に折られた足だ。
私は母に殴られるたび泣き叫んだ。そうすれば母の気が収まるのが少し早くなることを学んでいたからだ。何度か私の声を聞いた人が通報をしたことがあったらしい。役所の人が来たことがあったが、母は全て追い返した。それだけだった。一時期の母は声を上げると怒ったが、役所の人が何もしないことを知るとそんな事で怒らなくなった。
その日も私は泣き叫んでいた。空腹の時に大声を上げるのは辛かったが、そうしなければ地獄は終わらない。私に馬乗りになった母は包丁を首筋に突きつけてきていた。お願いします、やめてください、何度もそう叫んだ。
不意にガラスが割れる音がした。ベランダの窓だ。母ではない。私でもない。そこにはあの女が立っていた。あの女はすでに怒っていたように見えたが、母と私の姿を見ると形相を変えた。初めて、母以外の女の人を怖いと思った。
あの女は母を蹴り飛ばした。そのまま何度も母を蹴って部屋の隅に追いやった。そうして落ちていた包丁を拾い、母の首を切った。真っ赤な血があたりに飛び散り、母は何度も口をパクパクさせて、動かなくなった。
○○県で昨夜未明、マンションに住む無職***子さん(36)が隣室の主婦によって殺害された。近所の人の話によると、***子さん宅は子供の大声で警察に通報されるなどのトラブルがあり、大声に業を煮やした隣家の主婦がベランダを通って侵入し犯行に及んだ模様。***子さんの長女(13)は無事保護された。
施設に引き取られて迎えた初めての夏。夕涼み会で施設のおじさんは私に話をしてくれた。申し訳なかった、僕に勇気がなかったばかりに、君にもあの人にも申し訳ないことになった。本当に済まない。
あの人はここにも警察署にも何度も通報していた。僕もそれを受けて何度か君の家へ行った。けれども何もできなかった。いや、しなかった。君のお母さんが怖かったんだ。本当に申し訳ない。僕が何もしなかったからあの人は君の家へ行ったんだ。そうしてあんなことになってしまった。ニュースでは誤解を招くようなことしか言っていなかったが、あの人は君を救けるためにああしたんだ。本当に、いくらお詫びをしても足りない。
あれから7年が経つ。あの女の死刑は非常に異例、というより日本初のことらしい。ニュースでは、世論が判例に勝ったとか言っている。ただの騒音トラブルで隣人を殺した非道な女に重い裁きを、ということらしい。どうでもいい。
刑務所であったあの女は、記憶にあるよりもずっと優しそうな顔をしていた。会いに来てくれてありがとう、とまずはそう言った。私も会って話をしてみたかったのだから礼なんて言われる筋合いじゃないけど、うまく言えないから黙ってた。
どうして母を殺したの?
ずっと訊きたかったことは、思ったよりもあっさり言葉になった。それを聞いたあの女は、顔を歪めてこう言った。
あなたには本当に申し訳ないことをした。もっと然るべき手段を取るべきだった。けれども私は怖かった。まっとうな手段を選んでいるうちにあなたが死んでしまうことが。もしもあなたが死んでしまえば、私は一生助けられなかったことを許せずに生きていくことになる。それが怖かったから、あんな手段をとってしまった。本当に申し訳ない。
それを聞いて、何だか自分の心が乾いているような気がした。重ねて尋ねる。
どうして私を呼んだの?
次の質問もあっさり出てきた。女は、真剣な面持ちになって言った。
あなたにどうしても伝えたいことがあった。あなたが荒れていることは施設の方から聞いている。だから、どうしても言わなきゃいけないことがある。わかってほしいことがある。
この先の言葉は、何か恐ろしいもののような気がして、体に力が入った。女は続けた。
あなたから奪われたものの重さに、どうか気づいて欲しい。それに気づいてしまったらきっと今以上に辛い思いをすることになるだろうけど、それでも気づいて欲しい。あなたから奪われたものは人が生きる上でどうしても必要な物だから。あなたの中にはまだその欠片が残ってる。あなたが今も生きていることがその証拠。けれどもそれの大切さに気が付かなかったら、あなたはそれを捨ててしまうかもしれない。それだけは絶対にやめてほしい。それは本当に重たく、大切で、欠片しか残っていなかったとしても、それがある限り生きていけるから。その重さに気付けば、少しずつ取り戻していくことも出来る。どうか、それと向き合ってほしい。
そう、今は意味がわからない。それでいいの。そうした時間も大切だから。でも、いつかは分かってほしい。
それだけで、話は終わったようだった。私は事前に施設のおじさんから聞いた話をした。
ずっと前に赤ちゃんが死んだって聞いた。それと母を殺したことに、なにか関係はある?
女は泣き始めた。しゃくりあげるばかりで、何も言葉が出てこないらしい。この傲慢な女の何かを突き崩したことで、私は満足した。
刑務所からの帰り道、女の話を考えた。私から奪われたもの。無理だ。何をなくしたのかもわからないのになくしものを探すことなんて出来やしない。
何をなくしたのかわからない?そうか、確かに何かをなくしたらしい。そうでなければそんな考え自体が出てこないはずだ。
私から奪われたもの。単純に考えれば、あの女が私から母を奪った。でも、あの女の言葉の文脈からすると母ではないだろう。私の中にまだその欠片が残ってるとも言った。そういう意味でも母ではない。
本当に、あの女は何を言っていたのだろう。
自尊心?ふとそんな言葉が頭に浮かんだ。一瞬でその考えは苦笑に消えたけど。