2020-07-15

アンパンマン宗教の話

最近アンパンマンのマーチ仏教的だとかアンパンマン思想釈迦を表してるだとかよく見かけるようになりました。ちょっと前はアンパンマンキリスト教だ!っていう話も上がったりしてました。

分かります。どっちの意見も分かります

分かるけど・・・うーんって言う気持ちもあります。その、うーんっていう気持ち理由を今回はつらつら書きたいと思ってます

※私は仏教に関してはそんなにあかるくないです。どちらかと言うとキリスト教の方にはあかるいのですが、それもその宗教を実際に信仰している方ほど完璧、という訳ではありません。ですので、そのような方がお読みになった際は「これは違うぞ!」と思うところもあるかなと思いますが、どうかお許しください。

1.やなせたかしさんの宗派の話

ちょっと前に、「やなせたかしクリスチャンだった!」という話があがってました。しかし、色々解析すると仏教徒なのでは?という反論があり、結果クリスチャンでは無いのでは?となっていたような気がします。

しかし、宗教本来タブーな話で誰が何を信じてようとそこには踏み込むべき話題ではないので、自身が明言したり、それ以外の人間に分かるほど「熱心な仏教徒」だったり「熱心なキリスト教徒」だったなら話は別ですが、そういう訳では無いのに「作者は仏教徒だから仏教が関連しているんだ!」とか言うのはステレオタイプかなと思います

わかりやすい熱心な仏教徒の話を上げますと、宮沢賢治とかですかね。彼は熱心な仏教徒でありながら、キリスト教にも興味関心を持っていたそうです。なので、作品にもそれが存分に生かされてる、というのは納得のいく話しです。

対して、やなせたかしさん自身は「私は仏教徒の家系に生まれです」とかは言ってないし、周りの人物も「彼は熱心な仏教徒だった」とは言ってないわけです。キリスト教に関しても一緒です。そりゃ、今と違って家系仏教なら仏教の教えを信じるとか、キリスト教ならキリスト教の教えを信じる家系だった可能性もあるので、そうなるとやなせさん自身作品にも生かされてる可能性はあります自身が信じてきたもの作品無意識的に反映されるものですので、有り得なくはないです。でも、断言ができるものでは無い、ということだけは事実です。

2.アンパンマンができた経緯

アンパンマンやなせたかしさんの正義が込められたヒーローです。

やなせさんは戦時中兵隊として敵国と戦っていました。その時に怪我などよりも、飢えが1番苦しいということが分かったそうです。それがアンパンマンの顔がアンパンである理由でもあります

国に帰ってきた時に、今まで正義だと信じてきた「敵国を倒すこと」が間違いであると、叩きつけられます。その時に、やなせさんは「正義と悪なんて、ある日突然、逆転するんだ」と実感したそうです。

戦後アメリカなどから多くのヒーロー達が輸入されてきました。そのヒーロー達は皆、設定された悪役を倒すだけ、当時日本に多くいたような困ってる人やお腹を空かせてる子供達には目もくれず、ただ悪役を倒すだけだ、でもそれは違うのではないかと感じたそうです。

以上の経験から、やなせさんが正義の味方、ヒーローを作ろうと思った時に悪役を倒すだけではなく、困ってる人やお腹を空かせてる人に手を差し伸べるヒーローを描きたいという思いで、アンパンマンが出来たそうです。やなせさんは「逆転しない正義献身と愛だ。それは難しいことに聞こえるようだけど、簡単に言えば、お腹を空かせてる人にパン差し出すこと」と述べてます。(一字一句覚えているとは言いきれませんが、印象的だったので覚えていた言葉です)

この辺りの「献身と愛」がキリスト教的に引っかかるのかなと思いますキリスト教献身大事にしていますから・・・。

その、やなせさんの考える逆転しない正義体現してるのがアンパンマンだというわけです。

ちなみに初めにできたアンパンマンパンを作り、戦争下でお腹を空かせる人々に敵味方関係なく、空を飛んでパンを届けるふくよかで到底イケメンとは言えないおじさんだったそうです。彼はいものようにパンを届けている時に、砲弾に当たり、命を落とすという最期を迎えます。そのようなおじさんの姿から、土台は一緒ですが、アンパンの顔をしてお腹を空かせてる子供アンパンを与えるヒーローに変わり、今のアンパンマンが出来ました。

3.やなせさんの考える正義の味方について

正義の味方はかっこよくないというのがやなせさんの考えです。だからアンパンマンもどこか情けない感じですよね。顔が濡れたり、歪めば力は出ない。彼自身、顔をよく分け与えてますが、それをやってもやはり弱くなります。それはやなせさんが考える正義を行うものは必ず傷つくというのが体現されてるからだそうです。だからアンパンマンは人を助ける時に弱くなる。マントがちぎれて飛べなくなることもあるし、命を落としたこともあります。(明確な死の描写はないものの、映画では2回ほど死んでいると思いますいのちの星のドーリィという映画では確実に命を落としてます)

それでも困ってる人を助けるためには身を投げ出す自己犠牲の考えがどこか仏教を感じるところなのかもしれないですね。

アンパンマンは作中にこんなことを言ってました。

「初めて人を助けた時に心が暖かくなって。その時わかったんだ。なんのために生まれてきたのか。何をして生きていくのか。何が僕の幸せなのかってことも」(いのちの星のドーリィ参照)

自身が困ってる人を助けることが自分幸せだと答えています仏教自己犠牲って他者利益を得るためにやるものだけど、自分幸せまで含んでいたかな・・・という疑問を感じたりしてますキリスト教でも自己犠牲は出てきますね。宗教で、割と自己犠牲は取り上げられているので、そこでアンパンマン生き様に引っかかるのかもしれないな〜と感じました。

4.バイキンマンについて

やなせさんはアンパンマンという物語に本当の悪役はいないと言っています。前述の通り、やなせさんは悪役を倒すヒーロー達に疑問を覚えていました。なので、バイキンマンは悪役という物語に出てくる少しの毒として存在はしていますが、どこか抜けてるというか悪役にしては可愛げがあるのが印象的です。

加えて、バイキンマンアンパンマンは2人が一緒にいることでバランスがとれてる状態で、どちらが欠けてもダメだと言っています

からバイキンマンも何故かアンパンマンにとどめを刺す時にさっさと倒せばいいのに毎回隙を作るし、アンパンマンバイキンマンのことをパンひとつで許します。

それでもバイキンマンは「アンパンマンを倒すこと」が目的なので(もちろん、腹が減れば人からパンを奪うし、ドキンちゃんワガママに付き合わされる時もあります)、アンパンマンを倒すためにメカを作ったり、パン工場自体をどこか変なところに移動しようとしたりと工夫を凝らしています。ちなみにアンパンマンの方はどうかと言うと、アンパンマンはみんなのことが大好き(映画勇気の花がひらくときを参照)で、みんなと仲良くしたいので、バイキンマンとも仲良くしたいし、バイキンマンお腹を空かせていたら普通に顔をあげる男です。なんて言うすれ違いでしょうか・・・。

余談ですが、アニメ1話ではアンパンマンは襲ってきたバイキンマンジャムおじさんバタコさんと共に洗剤の入った水の中に突っ込んでいました。下手したらアニメ1話バイキンマン死す!って状態だったのに、バイキンマンは小さくなりながらもしぶとく生き延びて今に至ります。昔の方が彼は容赦ないです。

4.さいごに

長くなりましたが、つらつらと書きました。

別に仏教と結びつけるな!とかキリスト教と結びつけるな!とは言いません。それは1つの考察だとは思います。ただ、「アンパンマン仏教関係がある!」とか「アンパンマンキリスト教に沿っている!」と断言するのには少し違うのでは?という気持ちでした。

この文章は、「やなせさんの正義の考え方とかは彼自身が生きて得た境地で、それがアンパンマンに生かされてるんだな」と思っている1ファン考察です。これが正しいという訳では無いです。なんせ、考察なんてファン想像の域を出ないですので。

なので、あまり真に受けず、なるほどそうなんだ〜と軽く受け取っていただければ幸いです。

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参考文献的なもの(興味がありましたら見てください)

【本】

わたし正義について語るなら』やなせたかし

映画

勇気の花がひらくとき

いのちの星のドーリィ

※これらはやなせさんがご存命の時で、監修を受けていると思いますので参考にあげさせていただきますいのちの星のドーリィは「なんのために生まれて、何をして生きるのか」がテーマ子供向けにしてはかなり壮大です。

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追記

色々とコメントがついてたりしてましたので、読みました。なるほどと思ったりしてます

一つ、信者様という言葉を訂正し「信仰している方」という風にしました。決して揶揄っていた訳ではなかったのですが、揶揄っているように見えてしまったようでしたので、訂正しました。

(以下、コメントから思ったことなど)

アンパンマンアンパンマンという宗教」というのは納得してしまいました。幼児アンパンマンが目に入るとすぐに見つけまからね・・・。

自己犠牲については、仏教にあかるくなかったのもあって色々と漁っている時に、仏教にもそういう考えがあるというのが分かったので、書きました。でも私もあまり印象はなく、どちらかと言うとキリスト教イメージが強いかな、と思ってます

キリストパンの話が元になってるのでは?という話ですが、やなせさん自身が著書で書いていたのですが、アンパン選択した理由が「アンパンは手軽に手にできて、あんこがぎっしり入っていて甘く、食べるとすぐに元気になれる(おそらく、糖分摂取できるという意味でしょう)」ということらしいのですので、キリスト教の話が元になってると断定は出来ないなと思ってます

アメコミ勧善懲悪の話ではないという件については、私自身、その時代のものがどういうものだったのか分からないのですが、やなせさん自身の目には、ああいうようにうつったそうです。(『わたし正義について語るなら』参照)

バイキンマンアンパンマン関係性に関しては、私もアニメの流れは「勧善懲悪の流れだなあ」と感じたりしてます最近アンパンマンバイキンマンが悪役に回らず誰かを図らずも助ける立場に回ったりもしてますが、やはりアンパンマンアンパンチを食らってバイキン城に戻るのが大半だったり、食らう前に退散したりしてます

この話に関しては、深く入り込めるほどまだ、2人の関係性について飲み込みが足りないので、これ以上書けないです。申し訳ないです。

他、コメントありがとうございます

色々な視点を見ることが出来て良かったです。

  • この考察を読んでアンパンマンって本当に良い話なんだな…と改めて思った。増田、ありがとう ひょっとして殆どの幼児がアンパンマンに対して絶大な好意を持つのも彼から溢れる愛情...

  • イルミナティカードの66がコロナはユダヤの陰謀って示してると言うくらいの想像力だね

記事への反応(ブックマークコメント)

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