2021-12-31

ゼロトラストネットワーク」を見据えた抜本的な刷新「VDI と FAT PC


リクルートにおける VDI の導入、運用コロナ対応、そして今後の ICT 環境を紹介する連載。

最終回は、現在取り組んでいる VDI と FAT PCマルチ環境についてお伝えする。

石光直樹,リクルート(2021 年 06 月 04 日)

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ただし、そうしたユーザーに対して環境が変わることについてきちんと説明しないと、混乱につながってしまいま

す。そこで、「なぜこのような環境に切り替えることに至ったのか」や、目的、狙いについてプロジェクト内で改め

議論しました。ユーザーに対して納得感ある形で社内説明資料などをまとめて、各部署の主要なユーザーに向

けて情報を発信していきました。

 今後の移行時には、さらに分かりやす資料の共有や移行マニュアルの整備などを行い、社内広報体制も整

えていきたいと考えています

VDI と FAT PCマルチ環境の実現に向けた検討

マルチ環境の実現は簡単なことではありません。特に FAT PC環境をどう作るのかについては、時間をかけ

検討しました。まずは、VDI 導入により大幅に解消された “3 つの課題 ”、すなわち「セキュリティの向上」「PC

管理コストの削減」「働き方変革への貢献」の対応策を FAT PC でどのように実現するか。これが次の課題です。

 「セキュリティの向上」については、高セキュリティ業務にはセキュア VDI を提供し続け、FAT PC に対しては従

来よりもセキュリティを強固にすることにして、この課題クリアしました。

 続いて「PC 管理コストの削減」では先述の通り、VDI 化によって大きなメリットを得られた部分でした。例え

ば、夜間にパッチを当てたりできるのは、システム管理担当者からすると非常にメリットになります。ところが、FAT

PC に切り替えると、このメリット享受できなくなってしまうことから、VDI 導入時に刷新した PC 管理システム

FAT PC にも導入することで一定解決を図るのに至りました。VDI の導入前に使っていた “ お手製 ” の PC

管理システムでは、パッチ当てや OS 更新などが大変でしたが、最新の PC 管理システムを導入することで、かな

り容易になっていたからです。とはいえ、VDI の管理性には劣ります。この点は、中長期視点でのより良い環境

目指すために、優先度を下げた部分といえます

そして「働き方変革への貢献」については、先述の通り、昨今の状況を踏まえると、ビデオ会議をより活用

きる FAT PC の方がメリットを引き出せるのではないかと考えました。ただし、FAT PC に切り替えることで、い

ままでとはネットワークの流れ方が変わってきます。VDI では、データセンターと端末の間でやりとりされるのは

VDI 画面のデータが中心でしたが、FAT PC ではさまざまな実データがやりとりされることになります。また、社

外などから社内に VPN 接続をする必要があり、その部分がボトルネックになりがちです。その問題に対しては、

ネットワークを再検討することで解決を図ることにしました。われわれの社内ネットワークは VDI に最適化されて

いたので、FAT PC の増加に合わせて拠点ネットワークを増強したり、VPN を増強したりすることを検討しま

した。これにより、働き方変革で求められていたテレワーク要件に対しても十分応えることができると考えてい

たのです。

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しかしながら、この方針は大きく変更を余儀なくされることになります。その理由は 2 つあります。1 つ目はコ

ロナ禍の影響、2 つ目はネットワーク技術動向の影響です。

 社内ネットワークの再検討コロナ禍の影響を強く受けることになりました。在宅勤務の方針が示されたこ

で、社内から接続が減る一方、リモート接続が増え、社内のネットワークトラフィックの在り方が大きく変わって

しまたからです。コロナ禍が続く中で、そしてアフターコロナでそういった状況がどうなるのかについては予測

難しく悩みました。単純に拠点ネットワーク特に WAN を増強したとして、使われなくなるなら投資無駄

なってしまます。また、ネットワークにおいては今後のトレンドとして「ゼロトラストネットワーク」が注目されて

きています。おそらく、われわれの目指す「クラウドマルチデバイス環境」を支えるネットワークは「ゼロトラス

ネットワーク」になることでしょう。

では、いま「ゼロトラストネットワーク」のようなネットワークを入れるべきなのか。それともいまは暫定構成

して将来的に「ゼロトラストネットワーク」に移行できるようにするのか――。

コロナ禍で勤務の環境が急速に変わってきていることも踏まえて、この点を検討しなければならなくなりました。

いまもまさに検討しているところで、いまだに完全な結論は出ていませんが、現時点では PC 環境と同じく、将来

的には「ゼロトラストネットワーク」に移行できるように、いまのネットワーク構成を考えるべきと思っています

変化に対応して、かつ自ら変化を引き起こす

さらに、FAT PC 導入においては大きな変化があります。それは「SAC」(Semi-Annual Channel、半期チャ

ネル)の導入です。

VDI 環境においても「Windows 10」の導入は完了していましたが、「LTSB」(Long Term Servicing Branch※)

を導入していました。頻繁な更新を望まないユーザー向けに作られた、機能更新がない固定的な Windows 10 のモ

デルです。これに永続ライセンス版の「Microsoft Office」を組み合わせて利用していました。

現在名称は、「LTSC」(Long Term Servicing Channel、長期サービスチャネル

これは、「レガシーアプリ存在するので、機能更新がない OS の方がいい」と思っての選択でした。しかし、機

能が更新されないので、OS Office の最新機能が利用できないなど、将来的には「Microsoft 365」への接続

制限されるような状況でした。

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 他方、SAC なら OS Office が常に最新の状態になります。そのため、半期あるいは 1 年に 1 回程度のペー

スで機能が大きく更新されますIT 部門としては、機能更新時に社内アプリケーションの動作確認などをする必

要があり、PC 管理タスクが増えてしまうことになりますPC 運用コストの増大につながり得るので、VDI から

FAT PC に切り替える際の検討ポイントの一つでもありました。しかし、ここでもわれわれは中長期視点大事

しました。

 今後の「クラウドマルチデバイス環境」においては、環境が常に最新になる世界普通になるでしょう。いま

スマートフォンを見てもそうですが、OS はどんどん更新されて、次々と新たな機能サービスが利用可能にな

るのがむしろ普通であり、その波が PC世界にも到来しているのです。PC 運用コストが上がったとしても、わ

れわれもこの波に乗って、ユーザーに対しても新機能サービスを次々に提供していき、より良く業務を行っても

らえるようになればすてきだなと思いました。

そこで、VDI から FAT PC への切り替えに際して、OSモデルLTSB(LTSC)から SAC に変更すること

しました。PC が最新に変わっていくSAC のような世の中の変化に対応しながら、われわれの環境においても

変化を引き起こし業務を変えることができればと思い、現在、導入を進めています

VDI 基盤の抜本的な刷新

ここまでは大多数のユーザーが利用することになる FAT PC のことを中心に述べてきましたが、セキュア VDI と

特定用途 VDI として利用する VDI 基盤のリプレースも大きな仕事です。

VDI 基盤リプレースにおいてもいままでの構成踏襲せず、一からあるべき姿を検討することにしました。まず

検討したのはクラウドの導入です。将来「クラウドマルチデバイス環境」になれば、VDI 自体クラウドのサー

ビスの一つという位置付けになるだろうと考え、クラウドでの VDI 利用を検討しました。

しかし、残念ながら今回クラウド VDI の採用には至りませんでした。われわれの試算ではオンプレミスに比べて

コストが見合わなかった点と、管理機能がまだまだのように思えた点が見送り理由でした。クラウドますます

発展する領域なので、今後は状況が変わるかもしれません。われわれも引き続き状況を観察し、一部の環境には

クラウドトライアル的に導入してみることも視野に入れて、現在検討しています

 当面の方針としてオンプレミスの VDI を構築することにしましたが、いままでの構成をそのまま踏襲するような

ことはしませんでした。必要としたのは、運用性やコスト拡張性に優れたアーキテクチャでした。

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 議論検討を重ね、さら比較検討した上で、われわれは HCI(Hyper Converged Infrastructure)構成

を選びました。HCI はサーバ中心のアーキテクチャで、SAN(Storage Area Networkスイッチストレージ

を省くことができ、構成シンプルになり、運用性やコストメリットがある他、リソース拡張サーバを追加する

だけでよいので、拡張性にも優れています。われわれが望んでいた点を満たすアーキテクチャ評価しました。

いままでは「サーバネットワークストレージ」のいわゆる「3Tier」構成で安定運用できていたので、これを

変えるのは大きなチャレンジでした。とはいえチャレンジしないことには運用性もコスト拡張性も勝ち取れませ

ん。「新たなことに挑戦するのが、われわれのエンジニアリング方針だ」と考え、HCI 構成を選びました。

 加えて、VDI 基盤のデータセンターネットワークSDNSoftware Defined Network)に切り替える決断

しました。従来の構成比較し、運用性や管理性を鑑みて、より優れているという結論に達したからです。また

中長期視点でも、「ネットワークにおける Software Defined の方向性は変わらない」とみています

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