2020-05-21

https://anond.hatelabo.jp/20200424123040

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あの日、この国のリーダーは、世界が二度ともとに戻らないことを宣言した。緊急事態宣言の解除。それが新しい時代の合図だった。

彼は“新しい生活様式”という言葉を使った。今後も人との適切な距離を取ること、通勤や通学をなるべく控えることを人々に求めた。

サタはその“号令”を聞くまで、この国がまた元の不合理な世界に戻ることを懸念していた。そのせいか彼女はやたらと胸を踊らせてその言葉を聞いていた。私たちはこの国の盛衰を見てきた。サタの懸念も当然だった。

工業分野で一度成功を収めたこの国は、その後、情報通信分野で他国に後れをとっていた。その理由はいくつもある。成功体験を手放せなかったとか、政治家特定産業癒着のせいだとか。権力者たちが発想のバージョンアップを怠ったせいだとか。

しかし本当のところは、工業分野での成功をもとに社会システムが構築されたため、新しい分野を受け入れる余地がなかったためだ。

たとえば子どもたちが義務教育間中に学ぶのは、国語算数だけではない。集団として生きていく術の習得さえ、教室という閉じた空間に一任されていた。彼らはやがて満員電車通勤し、この国の経済に貢献することを期待される。これが古いシステムバックボーンだった。

集団を前提とした教育から労働までの一貫した流れ、それに特化したかたちで社会システムは構築されていた。これまでの経済的な成功には、集団での活動が不可欠だった。

そこにリモートワークやオンライン授業が介入すればどうなるか。このシステムの、“集団での生産活動”という基本理念崩壊することになる。つまり“それ”にとって、その手の技術障害しかなかった。通勤や通学ありきで敷かれた公共交通無駄になってしまう。

本当は、誰もがその集団を前提とした古いシステムに疲れていた。柔軟性のなさに飽き飽きしていた。もっと本質的なところで効果的なやり方があるはずだと、みんなうすうす気づいていた。

しかし(本当の意味で)より合理的システムに作り変えるには、既存のものを一度壊さなければならない。壊すということは、そこ(特定産業など)に深く携わっている人が犠牲になるということを意味する。

安定を好むこの国の人々にとって、その選択は難しかった。誰かに起こる悲劇自分にも起こりうる。明日は我が身。共感性の強い人々のそういった思考習慣が、それを阻んでいた。そしてそれは、最終的には、為政者政治判断に反映される。

政治家特定産業癒着や、国家予算といった表面的な問題のその底に、この国に住む人たちのそのような集合的意識がひっそりと流れてた。ほとんど気づかれることなく。

実は一度、この古いシステムを再構築する試みがあった。しかしそれは犠牲を生んだだけで、何の成果も得ることなく中断された。多くの求職者自殺者を生んだだけだった。

失敗の理由は明白だった。それぞれの人間の思惑が介入しすぎたためだ。古いシステムには当然のことながら、長年のしがらみが複雑に絡みついているが、新しいシステムの構想もまた、一瞬にして誰かの思惑に取り込まれる。

そして中途半端に壊れ、(一部の人意図に沿って)中途半端機能する、中途半端システムが完成した。完成したと言っていいのかすらわからないが。

ともかくこの国の人々は、その生殺しシステムの上で、前にも後ろにも行けずに30年、止まった時を彷徨うことになった。

それに終わりを告げたのがSARS-CoV-2だった。そこに人間の介入はない。ただ、自然の摂理、あるいは不可抗力共存するためのシステムモデル、そして本当の意味での合理性の追求があるだけだ。

それだけが、完全なる破壊遂行できた。特定意図の介入を阻むことができた。

破壊の後の自由の上で、それぞれの技術本来能力を発揮することを許された。呪縛は解かれ、初めてリミッターが外された。為政者たちは、もう古い理念、古い技術による古いシステムに場を提供し続ける必然性がなくなった。逆に言えば、それらを護るために新しい可能性は制約されていた。

場は、新しい技術に明け渡され、ウイルスやその他の脅威から人を護るため、都市全体の空気清浄化するシステムや、生体情報管理調整を担うウェアラブルデバイスの開発が加速した。

変化は、テクノロジーだけではなく、人々の精神においても加速した。今まで科学社会通念の“外”にあるとされていた物事が、“内”に組み込まれることになった。

記事への反応 -
  • 時々思い描いてしまうコロナ終息後の世界をメモ書き程度に残す ・テレワークが加速する  ・独身のテレワーカーは少し広い物件を探すようになる  ・通勤に使用されていた4輪,2...

    • 第1話 最適化されたシステム あの災禍のあと、僕たちの社会は随分変わった。 そう、今あなたたちが渦中にある災いだ。 あれから鉄道は人を運ばなくなった。そのかわり、モノを運...

      • 11話 あの日、この国のリーダーは、世界が二度ともとに戻らないことを宣言した。緊急事態宣言の解除。それが新しい時代の合図だった。 彼は“新しい生活様式”という言葉を使っ...

      • ま、ムリだな。

    • 何も変わらないよ。間違いない。

    • 収束しないよ

      • します

      • しろ

      • コロナが「収束」ってまんまクラスターやんけってね。 ところで俺クラスターっていうといちばん好きなのはR-7なんすよ。 ボストチヌイ行きたかったのに・・・

        • 心配せんでもイーロン・マスクが何度も同じ失敗繰り返してるからまたバイコヌール見に行けるようになるだろ

    • 学生は同じ学年をもう一度繰り返す ただし幼児は留年する必要が無く、普通に小学生になるので 現在の小学1年生と重複して、小学1年生は倍の人数になる 後にコロナ休学によって留年し...

    • ・Basic Incomeが基本になる事で、労働人口が現象し、 新社会主義と呼ばれる ・日本も世界も出生率上昇 ・TPP廃止 というかフェイドアウト ・EU、貧困国とドイツ以外は離脱し、ドイツ連合...

    • 今後は厚生労働省の発言力が高まりそうだよね。 今まで農水省以下の不人気官庁だったけど、予算100兆円規模で経産省並みになる。

    • 都心部の待機児童問題が改善する なんで?

    • 公共交通機関が忌避されて四輪・二輪はむしろ売れるんじゃないか? 都内だと電動折りたたみ自転車が流行りそう。

    • そんな形でコロナが残ることはないよ。他のコロナウィルスのように、風邪の一種になる。 今年中に一定のワクチンと、アビガンなどの治療薬ガイドラインができて一旦収束するが、医...

    • コロナイゼーション(シビライゼーションの奴)の意味が変わってしまう未来がくる!

      • シムシティのコロニーなんかも密すぎるってことで削除されたりして

    • コロナは終息しないよ。 コロナとともに生きるんだよ。

    • 中国とアメリカの立ち位置が逆になる

    • ・海外への渡航に検温とコロナ罹患歴が書かれる ・派遣の条件にテレワーク可能が加わる ・車は都心部で所有が増える(外出用) ・レジカーテン文化は残る ・コロナ絡みが保険に加わ...

    • コロナ終息後の世界(中世ジャップランド以外)

    • 収入が安定している公務員が貴族階級並みに羨望の的に

      • 公務員の待遇に届かない中小企業勤めが公務員を叩くのは自然の摂理。 トリクルダウンはないのだから公務員を叩くのは当然だ。

    • おそらく結婚ラッシュ出産ラッシュが起こると思うんだけど、アビガンの催奇性を考えると障害持った子供が増えそうで心配

      • なんで?障害者が存在すると不都合な差別主義者の方?

      • 飲むの止めて(=治って)暫くすれば催奇性も消えるんじゃなかった?

    • いかにもな単語ちりばめてるけど、全体的に雑すぎない? 多国籍ベンチャー? それベンチャーじゃないし・・・ 社員が多国籍ってんならすでにいっぱいある 鉄道会社が撤退してその...

    • エアカーもないしチューブトンネルもほとんど実用化しなかった。 イルカの代わりにコロナが攻めてきただけ

    • レジ前や受付の透明シート。 お客様や来訪者の酷い口臭を嗅がなくてするので、店員さんや受付嬢に大人気。 感染予防の建て前のもと、終息後も当たり前のように設置されたままとなる...

    • 中国共産党に崩壊してほしい

    • なるほど。 確かにコロナが終息した後にも、様々な問題が生じている可能性がありますね。 コロナの前 コロナの最中 コロナの後 の3期に分けて、それぞれ課題を列挙して、解決策...

      • コロナ後の世界 - 内田樹の研究室 http://blog.tatsuru.com/2020/04/22_1114.html   ■「独裁か、民主主義か」という歴史的分岐点 「コロナ以前」と「コロナ以後」では世界の政治体制や経済体制は...

        • 中国の独裁に憧れるのは政治家だけ? 財界は、中国のサプライチェーンに依存すると損害も大きいことを実感した。 コロナの戦犯として、中国共産党の初動の失敗(告発した医師の処...

        • 日本の首相は、国会議員の中から選ばれる。(与党=自民の総裁) 国民が直接指名できる大統領制に変えた方が良い。 当面は、ネット投票で日本人の一番人気を決めて、バーチャル大統...

          • 直接指名制だったら進次郎が大統領になってたぞ。それでいいのか?

            • それでいい。 安倍も進次郎も世襲の無能。 トップが無能でも、大統領制の方が安全装置が働く。 アメリカの有権者は必ずしも有能な統治者を求めていない。 アレクシス・ド・トクヴ...

              • 大統領制というか変な人気だけある奴にポストだけ与えて何もさせずに飼い殺すポジションでもあったらいいなと思ったりする アベも進次郎も最初からそっちにでもぶち込めばよかった...

              • チャウシェスク「ほーん」 ルカシェンコ「ほうほう」 マドゥロ「へーっ」

              • まずは自公を解党させない事には話が進まん

          • 大統領制にしたほうがいいんじゃないか、っていう妄想、日本の総理大臣制に絶望するとたいてい考えるんだよね。 けど、韓国やアメリカやフランス、あるいは南米や東南アジア諸国と...

            • 日本は「ご先祖様」=日本人は全員○○家の子孫・親戚、という発想の民族なので、共和制と合わないのかも。 将来的には直接民主制に移行した方が良い。過渡期の間接民主制として、...

          • その国会議員は国民が選んでるんじゃが…

            • 日本は教育に失敗した国家。 学校は社畜を量産する牧場。 一部のエリートだけが海外留学して、欧米人並みの知性・教養を備える。 このままでは、時代遅れになって日本は淘汰される...

              • 消極的・間接的含む安倍支持者が未だにこんなにいる時点で日本の教育は終わってる

        • 憲法改正は、東京オリンピックが失敗して、責任転嫁をコロナのせいにして、コロナに対応できる憲法を作る=中国のような独裁国家にする、という流れになるのでしょうか? 国民一人...

        • 残念ながらコロナは、国民の大半が「知的」な行動を取れる水準に満たない知能レベルだというのを明らかにしてしまった 高度な民主主義を運用する能力なんてどこにも存在しないのだ...

    • インフルエンザみたいに周期的に流行して死人を出すクソウィルスとして定着する未来のほうがありそうなんだよなぁ・・・ 風邪って免疫つかないやん? コロナの基本は風邪のウィルス...

    • ・「内職詐欺(在宅ワーク詐欺)」が増える ← まじで嫌だ ・外国人技能実習生は来なくなる ・中国製品の輸入が減り国内生産に回帰 ・その結果人件費が高くついて何でも値上がり ...

    • 抗体のありなしで就ける職が決まる 抗体ありのコーディネーターと抗体なしのナチュラルの二項対立の世界に向かうのか なんか胸熱 種割れがスーパースプレッダー的なwww

    • コロナ就職後の世界 みんなから嫌われる

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